文化祭準備と学内ツアー



文化祭まで1ヶ月をきった。だんだんと寒い日が増えてきたがこの日は、久しぶりにぽかぽか陽気だ。暖かな日差しが降り注ぐ午後。私はオールマイトの仮眠室で出された緑茶を飲んでいた。あったかくてホッとする。お茶を淹れてくれたオールマイトも目を細めてお茶を一口飲んだ。

「A組、ダンスホール的ライブ的出しものなんだって?楽しそうじゃないか」
「はい。忙しくなりそうです。それも楽しみというか・・・」
「で、そんな時に相談とは?こうして二人きりで話すのは随分久しぶりな気がするよ」

湯呑みをテーブルに置いて、両手を膝の上に乗せた。

「先のインターンで無理矢理ならば20%まで自力で引き出せました。負荷が大きくて少しの間しか出せなかったけど、それでも勝てなかった。動きを予測されて。それどころかエリちゃんがいてくれなかったらすぐに動けなくなってやられてた。遠距離攻撃に対して何もできませんでした・・・考えてみたけれど・・・100%を使いこなせない現状でどう戦えば良かったのか・・・答えが見つからないんです」
「どん詰まりか。私から言えるのは一つ。君も遠距離攻撃すればいい」
「くうっ!オールマイトみたいな天候変えちゃうような力早く引き出したいですよ私だって・・・!!」
「私も色々省みて、考えている君の為に。ちょっと場所を移そうか」
「・・・??」
「体操服に着替えてしゅーごー!!」
「は、はいっ!」

オールマイトに連れてこられたのは、学校敷地内の緑化地区。

「ここで20%を?」
「ああ!レッツフルカウル!!」
「で、でもさっきも言ったように20%で動くと体が軋んですぐ動けなくなるので・・・だから今は体作りに努めている状態で」
「ええい!君は相変わらずナンセンス界のプリンセスなのかい!しのごの言わずにフルカウル!!」

ナンセンス界のプリンセスという言葉に少し力が抜けてしまった。
だけど気を取り直して足を踏ん張り、ワン・フォー・オールの力を巡らせて足に集中させる。身体がミシミシと音をたてている。指先までギシギシ言い始めた。よし、20%!

「その状態でその場で攻撃を繰り出すんだ」

その場から空に向かってフルカウルシュートスタイルを放つ。風圧で、木の枝が吹き飛んでいった。

「君が許容限度15%を超える日が来たら教えようと思っていた。先の戦いで気づかなかったということは・・・余程防戦一方になっていたか。君はもう体を壊さずとも風圧を繰り出せる!」

だけど反動で体が軋んでやはり動けなくなってしまう。

「っ・・・でもどのみち体が」
「そこで君の遍歴を振り返ってみる」

これまでの私のワン・フォー・オールの遍歴をオールマイトと一つずつ確かめた。そこで分かったことがある。オールマイトは・・・

「常に100%を出力してたワケじゃない・・・ですね!」

よく考えればわかることだ。オールマイトが一挙一動100%で動いていたら周囲は暴風だ。台風が発生してもおかしくないよ、きっと。20%は“長くは“動けないから瞬間的に、インパクトの瞬間だけに・・・!つまり力の%のコントロールと、無茶をすれば20%の力を放出できる。これらを組み合わせればいいってことか。

「言うは易し。瞬間的に上限オーバーギリギリを引き出す。これまで以上に微細なコントロールが必要だ」
「人体で最も繊細に動かせる場所。そこで練習すればいい」

私は自分の指先を見つめた。更に向こうのステージへ!!
その後も練習にオールマイトは付き合ってくれた。初めてだからか上手くいかなくて半ベソかいてたら、何度も励ましてくれた。
ちょっと休憩しようと言われて木陰に並んで座ったら疲れがドッとやってきて、疲れを通り越してなんだか眠くなってきた。両手を上にあげて伸びを一つしたら、オールマイトに体力がまだまだだなって笑われてしまった。
今日が金曜日で良かった。明日は学校休みだから寝坊しても大丈夫だもん。ダンス練習は午前中からあるけどそれまでには起きれると思う。
練習を終えて帰るときにオールマイトがチョコレートをくれた。そして背中を叩いて、「頑張れ緑谷少女!」とエールを送ってくれた。優しい師匠がいてくれて有難い。

翌日、土曜日自分の部屋で寝ていたらドアを激しく叩かれて目が覚めた。驚きのあまりベッドから落ちたし、頭を打った。バクバクと激しく鼓動を打つ胸をギュッと抑えながらドアを開けると鬼の形相の芦戸さんが立っていた。

「こら!なまえちゃん!約束の時間とっくに過ぎてるよ!練習!練習!」
「は、はいっ!」

パジャマのまま出ようとして芦戸さんに部屋に押し戻され、流石にパジャマのまま出てこないでと怒られた。Tシャツとショートパンツに着替えて寮の外に出たら、もう皆集まって練習に励んでいた。

「皆さんお待たせしました!」
「緑谷ちゃん、待ってたわよ」

起きがけに何も食べずに激しいダンスをしたせいか、動きが鈍くなる。

「なまえちゃん違ーう。もっとこうムキッと!!ロックダンスのロックはLOCKだよ!!」
「え、こう?」
「んー・・・惜しい!」

起きたのが遅かったので、あっという間にランチタイムになった。そして午後からも各々で練習をしていたのだが、草陰に通形先輩の姿を見つけた。

「あ!通形先輩!・・・って・・・エッ!エリちゃん!!」

先輩が草陰からお尻を突き出して何か言っていたけど、皆エリちゃんに意識が集中してしまって誰も突っ込まずスルーしていた。

「ヒーロー名さん」
「え!!?何なに先輩の子ども・・・!?」

エリちゃんはよそ行きの可愛らしい服を着ている。私と麗日さんと梅雨ちゃんは思わずエリちゃんの元に駆け寄った。

「素敵なおべべね」
「かっかっ可愛〜」
「エリちゃん!!可愛い服だね、似合ってる」

どう返事したらいいのか分からないみたいで視線を泳がせるエリちゃんは、草陰から出てきてうずくまっている通形先輩の後ろに隠れてしまった。更に後ろから相澤先生がやってきて、エリちゃんをいきなり文化祭に連れて行ってパニックになるなんてことが無いように、事前に学校に連れてきて雰囲気になれさせるという意味で今日連れてきたらしい。
飯田くんと峰田くんがエリちゃんに話しかけると、通形先輩の服の裾を掴んで後ろに隠れてしまった。可愛いなぁ。

「というわけで、これから俺エリちゃんと雄英内を回ろうと思ってんだけど緑谷さんもどうだい!?」
「あ、はい!」
「おーいダンス隊!!ちょっと話が・・・ってエリちゃん!!?」

切島くんと口田くん、轟くんの演出隊が出てきて芦戸さんに何か相談しようとしていた。芦戸さんが一旦休憩しようと言ったので、私は通形先輩とエリちゃんと共に学校内ツアーにお供することにした。
エリちゃんの両サイドに立ち、エリちゃんと手を繋いで歩いていたら前からきた経営科の3年生に話しかけられた。

「通形じゃん」
「子ども・・・とヒーロー科一年A組の緑谷さんじゃん。休学ってお前・・・!まさかそういう・・・」
「・・・」

先輩は何も言わずにニコッと微笑んだ。

「いや何か言えよ。ガチっぽいな!とまあ、冗談はおいといて、今年のI組はすげェから。おめーも絶対来いよ!緑谷さんも是非来てね」
「あ、ありがとうございます!」

手渡されたフライヤーはとても手が混んでいて立派なものだった。すごいクオリティだ。
通形先輩と一緒に居たら知らない人にまで名前を呼ばれるからびっくりしたけど、体育祭の後に知らない人に電車の中でフルネームで呼ばれて話しかけられたのを思い出した。思ってるよりもヒーローってプライバシーがないのかも。

土曜日だというのに活気に溢れた校内にエリちゃんは圧倒されているのか繋いだ手を強く握ってきた。大丈夫だよと頭を撫でたとき、かなりリアルなドラゴンの顔が私とエリちゃんの真横を通って驚いて悲鳴をあげてしまった。

「すンません・・・ってA組の緑谷じゃねェか!!」
「アレアレアレー!?緑谷ァ!!こんなところで油売ってるなんて余裕ですかァア!?」
「ひっ!物間くん・・・エリちゃん平気!!?」
「降ってきた人かと思った」

降ってきた人・・・ああ、リューキュウのことか。確かに龍だもんね。

「オヤオヤ無視かい!?いいのかい!?ライヴ的なことをするんだってね!?いいのかなァ!?今回はっきり言って君たちより僕らB組の方がすごいんだが!?“ロミオとジュリエットとアズカバンの囚人〜王の帰還〜“B組の完全オリジナル脚本超スペクタクルファンタジー演劇!!準備しといた方がいいよ!B組に喰われて涙するその時の為のハンカチをね!泣き崩れる緑谷の姿が目に浮かぶよ!アハハハハ!!!!」

泡瀬くんが持っていた角材で物間くんの後頭部を殴った。バタンと地面に倒れて物間くんは微動だにしなくなった。怖っ!生きてる・・・??

「いつにも増してめっちゃ言ってくる・・・!」
「ごめんよA組。拳藤がいねーからハドメがきかねー」
「手刀の達人、拳藤さんは物間くんとセットのイメージだったけど・・・」
「今回は別!あいつはミスコン出るのよ。無理矢理エントリーさせられて。物間じゃねーけどお互い気張っていこーぜ!!じゃ!!」

ミスコン?そんな話相澤先生から一言も聞いてないけど。そんなのあるんだ!拳藤さん可愛いし優勝狙えそうだなとボンヤリ考えてたら、通形先輩が大声を出した。

「ミスコンといえばそうだ!あの人も今年は気合い入ってるよ!」
「あの人って・・・?」
「緑谷さんも知ってる人だよ。見に行ってみるかい?エリちゃんも気になるだろ?」
「うん」

連れてこられたのは校内の備品室。ここでミスコンの準備が行われているという。可憐なドレスを身にまとった波動先輩がいた。宣材写真みたいなのを撮影してるみたいで、天喰先輩もいた。

「去年の準グランプリ波動ねじれさんだよね!!」
「ねェねェなんでエリちゃんいるの?フシギ!何で何で!?楽しいねー」

波動先輩がふわりと宙に浮かんだまま、私たちのところに降りてきた。

「“個性“も派手だし、その・・・お顔も可愛くって、ププププロポプロ・・・」
「プロポーション」
「そ、それです。そんな先輩でも準なんですね」
「そー聞いて!!聞いてる!?毎年ねェ勝てないんだよー。すごい子がいるの!ミスコンの覇者、三年G組サポート科絢爛崎美々美さん」

写真を見せてもらったけど、何というか・・・。とにかく凄い。まつ毛の長さどうなっちゃってんの。こんなの瞬きじゃなくて羽ばたきじゃん。

「最初は有弓に言われるまま出てみただけなんだけど・・・何だかんだ楽しいし悔しいよ。だから今年は絶対優勝するの!最後だもん」
「できるさ!!」

エリちゃんはそんな先輩の様子を見て不思議そうにしていた。
その後はサポート科の発目さんのところに行ったのだけど、私のサポートアイテムのお願いをしていたら部屋で爆発が怒ったのでエリちゃんを連れて逃げるようにその場を後にした。
学内の食堂でジュースを買ってエリちゃんにあげたら両手でコップを持ってストローを咥えて飲み始めた。

「まーこんなもんかなァ」
「慣れ・・・っていうかどうだった?」
「・・・よく・・・わからない・・・けど、たくさんいろんな人ががんばってるから、どんなふうになるのかなって・・・」
「「!!」」
「それを人はワクワクさんと呼ぶのさ」

少し離れた席に座っていた校長先生とミッドナイト先生がこちらを見て話しかけてきた。校長先生はチーズを一心不乱に齧っている。青山くんと食の好みが合いそうだな。

「文化祭、私もワクワクするのさ!多くの生徒が最高の催しになるよう励み、楽しみ・・・楽しませようとしている!」
「ケーサツからも色々ありましたからねェ」
「ちょっと香山くん。じゃ!私は先に行ってるよ。君たち!文化祭存分に楽しんでくれたまえ」

校長先生は、ピョンと椅子から飛び降りてゆっくり闊歩しながら行ってしまった。その後を追うようにミッドナイト先生も立ち上がった。

「詳しくは言わないけど、校長頑張ったみたいよ。上と揉めてその結果、セキュリティの更なる強化。そして万一警報が鳴った場合それが誤報だろうとも即座の中止と避難が開催条件になったの」
「厳しいですね」
「もちろんそうならない為にこちらも警備はしっかりするわ!学校近辺にハウンドドッグを放つし」
「放つ!!」
「そうそう!A組の出し物職員室でも話題になってたよ。青春頑張ってね」
「ヒーロー名さんは何するの?」
「私たちはダンスと音楽!踊るんだよ!エリちゃんにも楽しんでもらえるよう頑張るから必ず見に来てね!あっ!すみませんそろそろ休憩終わるので行ってきます!」
「ああ!言っとくけど俺も楽しみにしてっからね!」
「ありがとうございます!エリちゃんまたね!」

頭を撫でたらエリちゃんの表情がほんの少し柔らかくなった気がした。

それから一週間練習が続いて私も上達してきたと思う。これも鬼コーチ芦戸さんのおかげだ。名前を呼ばれて振り返るとお通夜みたいな顔をしているダンス隊と演出隊が並んでいた。静まりかえった教室の中私は芦戸さんに肩に手を乗せられ、クビを言い渡された。

「ええええええええ!?何でっ!?私が下手くそだから!?芦戸さんの足を何回か踏んづけたから??それとも、冷蔵庫に入ってた砂藤くんの手作りスイーツつまみ食いしたのバレた!?」
「おい、緑谷それは初耳だぞ」
「ごめん、あまりにも美味しそうでつい・・・出来心でつまみ食いしちゃいました。ていうか芦戸さん!何で!?」
「クビっていうか厳密には演出隊からの引き抜きです!人手が足らんのだと!」
「何故・・・?私に・・・エリちゃんに踊るって言っちゃったよ・・・」
「フロア全体に青山が行き渡るようにしたいんだけど」
「青山くんが行き渡るって何!?」
「そんな大掛かりな装置もないし、人力で人を動かせるパワー担当が欲しいんだって」

なるほど、ワン・フォー・オールのおかげで私馬鹿力だって思われてるのね。あれは個性発動してる時だけであって、普段は全然力ないんだよね。だけど個性使えば青山くんをフロア全体に行き渡らせることくらい容易いことだ。

「僕、序盤でダンサーからミラーボールに変身するんだ!新技・ネビルビュッフェ、飛距離も抑えられるんだ。僕のためにある職!同じタイミングで離脱して協力してほしい」
「なるほど、つまりクビとは出番が削れるってことね・・・」
「ワリィ!おめーの練習を無駄にしちまうが・・・どうか頼まれてくれねェか!?更にいいもんにしてェんだ!」
「・・・んん。出番あるならエリちゃんに嘘ついたことにはならないし。良いものにする為なら断れないなぁ。わかった!良いよ!私頑張る!」
「メルスィ!」
「ありがとう漢だおめェは!!!」
「なまえちゃん、最近青山と仲良いしきっと良いものになるよ!」

授業後や放課後は、文化祭に向けての練習やミーティングで忙しくて本番までは自由な時間があまりない。そうなると必然的に私の修業は早朝に行うことなる。
AM6 :30。オールマイトの指導の元、指先でのワン・フォー・オールのコントロールの練習を行っていた。立ち止まって集中すれば何とか20%まで引き出すことができるけど、連続や動きながらとなると途端にできなくなってしまう。

「いたっ」
「内出血してるな。これで冷やしときなさい」
「すみません」

オールマイトが準備していたアイスノンで指を冷やす。

「基本的にはこれまでやってきた事なんで出来るんですけど・・・これまで以上にギリギリを攻めるコントロールとなると・・・何かコツみたいなものってあるんでしょうか」
「わからん」

あっけらかんと言うオールマイト。私は言葉を失くして笑うしかなかった。

「私は何となくすぐ100%扱えたからなァ。言えることは最初期に言った“イメージ“を作ること。それだけだ!!イメージを固めて肌で覚える。繰り返しあるのみってことかな」

同じ“無個性“スタートでもえらい違いだ。オールマイトはやっぱり天才的な勘を持っていたんだ。どこまでも“ナチュラルボーンヒーロー“なんだ。
突然後ろから球体が飛んできて、オールマイトが受け止めた。何だ!?
木陰から人が出てきた。発目さんだ。こんな朝っぱらから何してるんだろ。

「すみません!おケガは!?」
「発目さん!こんな朝から何でこんなところに」

っていうかこの状況見られたらマズイんじゃないかな。発目さんは私たちのことを詮索する素振りもなくて、自分の研究のことしか頭にないようだ。この前エリちゃんと学内ツアーをしたときに頼んだサポートアイテム、早速カスタマイズして申請してくれてるという。文化祭の後でも良いって言ったのに、なんて迅速な対応何だ。すごい・・・
話を聞いていたオールマイトにアイテムに頼りすぎないようにとアドバイスされた。そして衝撃の事実を聞かされた。オールマイト、過去にアイテムを装着して戦ったことがあるらしい。知らなかった。これは帰って検索しないと。私のオールマイト知識の浅さに嘆いた。そんな重要なこと知らなかったなんて、オールマイトファンを名乗ることは許されないな。

「よし!じゃあイメージをつくろうか!」
「なんか・・・とても懐かしいです、今。入試前の特訓を思い出します」
「ハハハ!懐かしいな。さ、練習の続きだ」
「はいっ!」

学校を終えて寮に帰ってきて、リビングで血眼になってアイテム付きオールマイトの画像や映像をスマホで探していた。

「アイテム付きオールマイト・・・アイテム付きオールマイト・・・私としたことがそんなレアマイトを知らなかったなんて。不覚も不覚。グッズは?画像・・・ない。動画では残っていないの?」

ブツブツ独り言を言いながら動画サイトで検索していたら、間違えて変な動画をタップしてしまった。

『諸君はいつ・どんな紅茶を飲む?』

「紅茶の動画?タイムリー!ヤオモモちゃんが幻の紅茶、えーとゴールドディップスインペリアルやったっけな。それ淹れてくれたんやけど、なまえちゃんも飲まへん?」
「わ!麗日さん気がつかなかった。ありがと」

その間も間違えてタップした動画が流れ続けている。

「この人・・・」
「有名な人?評価の割合、低評価の方が圧倒的だ。えぐいね」
「私も何となくしか知らないけど、迷惑行為で一部じゃ有名な敵だよ。なんかこうやって自分の犯行を動画サイトにアップロードしてるみたい。なんだかんだ動画まで出して捕まってないのは凄いんだけど・・・次は何する気なんだろ・・・」
「なまえちゃん!早く飲もっ!」
「うん!」
「幻の紅茶なんやって!」
「幻!?八百万さんいただきます」

麗日さんとソファに並んで座って、動画を見ながら紅茶を飲んだ。紅茶の香りが鼻先をくすぐる。なんか良い匂いだ。幻の紅茶なだけあるな。
紅茶を飲んだらカフェインのせいか目が冴えて眠れなくて、リビングに残って動画のオールマイトを探していた。みんな自室に戻り始めてどんどん人数が減っていく。ソファに寝転んでスマホを見てるうちに私とかっちゃんだけが取り残された。
誰もいないし、かっちゃんの隣に座ろうと移動したらかっちゃんが不機嫌そうな顔でこちらを見てきた。このかっちゃんの表情、昔は怖いって思ってたけど好きだって自覚したら全部がかっこよく見えてくるから不思議なもんだ。

「かっちゃん、ギュッてしてほしいな」
「はァ!?誰かに見られたらどうすんだよバカ」
「もうみんな寝ちゃったよ?」
「・・・俺らも帰るぞ」

キレ気味のかっちゃんに引きずられながら男子寮のエレベーターに乗り込んだ。密室に二人きり。かっちゃんはぶっきらぼうに引き寄せた。その割に、ガラス細工に触れるかのように優しく抱きしめてくれる。好きって気持ちが爆発しそうになって、かっちゃんの頬にキスしたら、顔を掴まれて唇に噛みつかれた。今日のかっちゃん凶暴すぎる。

翌日、相澤先生にかっちゃんと私は呼び出されて管理人室で正座していた。あれ、これ前にも似たようなことあったな。何で正座させられてるのかわからなくて疑問符が頭上にたくさん浮かんでいる。溜息をつきながら相澤先生に、エレベーターには監視カメラついてるから管理人室から見えていると教えられた。イチャつくなら部屋でしろと言われて私は顔から火が出るほど赤面して、手で顔を覆った。
ま、まさか見られていたなんて・・・!
穴があったら入りたいし、なんならその穴を埋めてほしい。かっちゃんの横顔をチラリと盗み見ると、ほんのり顔を赤くして勝手にみんじゃねェ!って、逆ギレしていた。



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