爆豪ファンとの遭遇



【個性事故】
個性の発動条件が重なり偶然に予期せぬ影響を受けてしまうこと。また、個性を使った攻撃を受け、相手の個性の影響を受けること。


学内でも様々な個性の持ち主がいるのでそのような事が起きるのは致し方が無いとは思う。だが今回起きた個性事故体験は仕方のないことだとはいえ、私にとってはかっちゃんへの想いが濃く強くなる出来事だった。

まず始まりは全学科合同訓練にまで遡る。私が割り当てられたグラウンドにはA組は飯田くん、常闇くん、峰田くん、八百万さん、そしてかっちゃんがいた。
そして、以前と同様に我々ヒーロー科は敵役として行動していた。もちろん合同チームの個性は多種多様で攻撃も意表をつくものだった。そして初めて私はかっちゃんのファンに遭遇することになる。

「あんた、いつも爆豪様の近くでチョロチョロしてる女よね?」
「・・・爆豪様??」
「悪いけど、あんたは爆豪様には相応しくないわ」

驚いて目が点になってしまった。髪の毛が長くて、吊り目の女の子が私を鋭い眼光を携えて睨みつけていた。言葉も出なくてただその子をじっと見つめていたら、返す言葉もないようねと鼻で笑って、私を品定めするような目つきで頭の先から足の先までをジロジロと見てきた。嫌な目つきだ。
相応しくないって言われても幼馴染はやめることはできないし、気づいてしまった恋心に蓋をすることなんてできない。ちょっとムッとしたけど、相手してたら向こうの思う壺。返事をせずにその場を去ろうとしたらその子が後ろから瓦礫を投げつけてきて叫んだ。

「あんたより私の方が爆豪様の隣に相応しいわ!あんたは爆豪様の人生からとっとと退場しちゃってよ!」

振り返って足で瓦礫を弾いた。

「・・・そう思うならかっちゃんに直接言えばいいのに」
「はぁ!?ほんとウザイ!!目障りなのよ!いつも爆豪様の隣で呑気に笑ってるあんたが!!合同訓練であんたと戦えるって分かって嬉しくてたまらないわ。ここでどっちが爆豪様に相応しいのか分からせてやる!くらえっ!!」

単純な直線的な攻撃。それにパワーも全然ない。こんなの避けれる。グラントリノのように跳ねて避けたのだが、避けた先に急に男子が現れた。もう軌道修正できずに盛大にぶつかってしまうだろう。傷つけるわけにはいかなくて、腕を掴んでその子と地面の間に自分の身体を滑り込ませた。土埃が巻き上がった。受け身も取らずに背中で衝撃を受け止めたせいで、かなり背中が痛い。だけど私がクッション代わりになったおかげで男子は無事だった。良かった。その子は顔を真っ赤にして私を見下ろしている。まるでその男子に押し倒されてるみたいな体勢になってしまっているのではやく退いてほしいのに中々動いてくれない。そんな時にかっちゃんが現れた。かっちゃんファンの女の子が、一生懸命話しかけてかっちゃんの腕を掴んだけど、手を振り解かれて盛大に無視されていた。女の子は半泣きで走ってどこかへ行ってしまった。あれだけ私に啖呵切ってたのに意外と諦めが早い。嵐みたいな子だったな。

「なまえ!」
「かっちゃん!」
「オイこらてめェなまえから離れろや!殺されてェのかよ」

その言葉にハッとして男子が退いてくれた。そして私を起こそうと手を掴んでくれたのだけど、かっちゃんがキレてその男子の腕を掴んだ。
つまり、私の手を男子が握り反対の腕をかっちゃんが握っていることになる。すると、身体から力が抜けていき、気がついたら私の目線はいつもより高くなってかっちゃんの服を着ている。どういうことか分からなくて焦ってワタワタしていたら、男子が謝ってきた。

「ごめんなさい。僕の個性発動しちゃいました。二人の精神が入れ替わってしまいました」
「はい・・・??」
「あ゛ぁ!?」

私が発した声は、かっちゃんの声そのもの。かっちゃんが発した声は私の声。えーと、つまり私とかっちゃんの心が入れ替わって今現在私はかっちゃんの体になってるってこと・・・?目の前には自分がいる。嘘でしょ。誰か嘘だって言って欲しい。

「あの、どうやったら戻れるの?」
「一度入れ替えたらインターバルで1日個性使えなくなるんです。すみせん。それに6時間くらい待つか、キッカケがあれば元に戻れます」
「インターバル短くする方法練習しとけや!!クソが!!!」
「かっちゃん、仕方ないよ。経営科の人みたいだし、個性の訓練なんてしてないもん。相澤先生に個性消してもらえるか頼んでみよ?」
「すみません。僕の個性は、両腕のどこかで触れてる二人の人間の精神をスイッチしてしまうんです。実は前にも学内で個性発動しちゃって相澤先生に見て頂いたのですが、個性消せなくて・・・その、6時間くらい待つか、キッカケを・・・」
「さっきから言ってるキッカケって何?」

経営科男子は、顔を赤くして言いにくそうに下を向いた。かっちゃんは「さっさと教えろ」って私の姿でキレてる。自分の姿を客観的にみるのって不思議だな。男子は私の姿をしたかっちゃんにだけコソコソと耳打ちしてた。それを聞いたかっちゃんも顔がほんのり赤くなってる。私にも教えてと言ったけど、かっちゃんは教えてくれなかった。それで経営科男子に聞こうとしたら、横からかっちゃんが睨みつけてきて、とても教えてくれそうな雰囲気ではなかった。

授業の後リカバリーガールの元に二人で行ったけれどやはり元に戻るには時間かキッカケが必要だと言われてしまった。がっかりしていたらリカバリーガールに保健室で着替えるように指示された。よく考えたら、かっちゃんの体になってしまってるので私は男子更衣室に入らないといけないことになる。そんなの絶対嫌だし、かっちゃんが女子更衣室に入るのはもっと嫌だ。お互い顔を見合わせて何も言わなかったけど、多分同じこと考えてたんじゃないかと思う。とりあえず保健室に置いてある貸出用の体操服を借りることにした。着替え終えてとぼとぼと寮に戻った。リビングへ行くと皆が心配してくれていた。私の姿のかっちゃんに麗日さんが声をかけている。

「なまえちゃん遅かったね。大丈夫?」
「あ゛ぁ!?俺はなまえじゃねえ!!」
「!!??」
「ちょっと、かっちゃん!!私の体でそんな怒らないでよ」
「!!??」
「待て待て!これどういう事だよ!どうなってんだ?爆豪と緑谷キャラ変えてきたのか??」

麗日さんと上鳴くんが私たちが入れ替わってるのをまだ知らないからびっくりしている。そりゃそうだよね。私もびっくりしてるもん。だけど私の姿でそんなにキレないで欲しい。、慌てて事の経緯を話して皆に弁明した。

「えーと、つまりなまえちゃんが爆豪くんになってしまって、爆豪くんがなまえちゃんになってしまったんやね?」
「そうそう」
「ややこしいね!元に戻してもらえなかったん??」
「うん。リカバリーガールでも相澤先生でも無理みたい。6時間くらい経ったら自然に戻るんだって。それかキッカケがあればすぐにでも戻れるみたいなんだけど・・・」
「キッカケ?」
「そのキッカケっていうのをかっちゃんは個性を発動させた子から聞いてるんだけど私には教えてくれないの」
「てかさ、お前らトイレとか風呂とかどうすんだよ」
「「・・・・・・」」

やばい。そこまで頭回ってなかったけど、そりゃ生きてたらトイレも行きたくなるし、合同訓練で身体は埃まみれになってるしお風呂には入りたい。時計を見たら入れ替わってからはまだ1時間しか経っていない。かっちゃんに私の体見られて洗われるのも恥ずかしいし、私がかっちゃんの体洗うのも恥ずかしすぎる。どうしよう。

「爆豪ォォォ羨ましいな!!!オイラも女の子と入れ替わって身体堪能してぇよォォォ!!なんで緑谷オイラと替わってくれなかったんだよ!!くっそぉ」

それを聞いて、自然と掌から爆破が起こって峰田くんを吹っ飛ばしていた。すごい!かっちゃんの個性オートマなの?
かっちゃんの方を見たら、般若みたいな顔をこれでもかってくらい赤くしてた。普段の私ってこんな感じなの・・・?心配と好奇が入り混じった表情をするクラスメイト達の視線に耐えきれなくなったのか、かっちゃんが私を引っ張って部屋へと逃げ込んだ。部屋へ行く途中で私は名案が浮かんだ。

「・・・わかった!かっちゃんが目を瞑ってるうちに私が自分の体洗って、それが終わったら私が目を瞑ってかっちゃんが自分の体を洗うっていうのはどう?」
「・・・は!?それにトイレはどうすんだよ」
「それはもう、やり方教えあって各自で頑張るしかないよ!!」
「はぁ!?」
「そ、それかキッカケってやつで早く元に戻るか・・・」
「無理だ。それはできねェ」
「じゃあ、さっきの作戦で行くしかないんじゃない?」
「そうだな」
「・・・かっちゃん私の体見ないでね?」
「うっせぇ!わーっとるわ!!バカ」

女子が全員入浴終えたら、女子風呂で入ることになったけど、よくよく考えたら二人でお風呂ってやばくない?いや、自分の体を客観的に洗うだけなんだから別にどうってことないはず。大丈夫。女子にはグループトークでメッセージを送ってもう了承を得てる。最後の人が入り終わったので、私たちは二人で着替えを持って風呂にやってきた。

私の姿のかっちゃんの服を脱がせていく。何も状況を知らない人がこの現場を見たら、かっちゃんが私の服を脱がせてるみたい。脱衣所の鏡にその光景が映ってて恥ずかしい。全部脱がせてバスタオルを巻いた。

「できたよ。次かっちゃんの番だよ」
「ん」

私は目をつぶって、されるがままにジッとしていた。腰にタオルを巻いたら、目を開けてもいいぞって言われた。目線を合わせず、ぎこちなく二人で風呂場に入って椅子に腰掛ける。なんか、やましいことしてるみたいで緊張する。
なんとなく流れで顔を洗ってシャンプーを二人同時にし始めた。かっちゃんが、長い髪に苦戦していて、ゴシゴシ洗うので髪の毛がどんどん絡まっていた。

「ちょ、ちょっと!かっちゃん!そんな乱暴に洗ったら絡まっちゃうよ。こうやって優しく洗って?」
「長い髪の洗い方なんて知らねえよ。てめェがやれや」
「それもそうだね。じゃあ洗うよ?」

泡立てて洗って、シャワーで流していく。トリートメントを手に取って絡まりをほぐしながらつけていく。するんと指通りが良くなった。かっちゃんは鏡越しに真剣に洗い方を見ていた。
そんな真剣に見られると恥ずかしい。このまま体も洗ってしまおう。

「かっちゃん目閉じてて。体も洗っちゃうから」
「・・・」

バスタオルを取って洗い始めたのだけど、触れるたびにかっちゃんがビクッと動く。かなり険しい表情になってる。
大丈夫かな。上半身洗い終えたところで、かっちゃんが目を開けた。

「なまえ」
「なに?」
「わりぃ、もう無理だ」

かっちゃんが私を制止して、両手で顔を掴んできた。一気に距離が近くなって、唇と唇がぶつかった。私の姿のかっちゃんにキスされてる・・・
固まっていたら、何度も角度を変えて口付けて、口の端から舌が入ってきた。侵入してきた舌から逃げようとしたけど捕まって絡み合う。力が抜けて、気がついたら私は元の身体に戻っていた。もしかして、キッカケってこれのことだったの?
元に戻ったのにかっちゃんは、未だに私の口の中に舌をつっこんだままで口の中を蠢いていた。ようやく離れたころには私は息があがって涙がでそうになっていた。慣れ親しんだ身体に戻れて良かったのだけど、まだ湯船にも浸かってないのにどういう訳だか身体が熱い。首を吸われるときよりも遥かに熱くてどうしたらいいかわからない。
バスタオルで急いで身体を隠した。かっちゃんは私を見ないようにしてくれてた。

「悪かったな、こんなことして。元に戻ったし、向こうの風呂で入るわ」

全然目を合わせてくれない。そのまま、かっちゃんが出て行こうとするので、腕を引っ張った。

「ま、待って!かっちゃん行かないで」
「今なまえと居たらダメだ」
「え、なんで?」
「我慢できなくなるだろうがよ」
「我慢?かっちゃん、やだよ離れたくない・・・行かないで」
「はァ・・・てめェ何言ってんのか分かってんのか?とにかく、風呂入ってから話すからよ。さっさと身体洗え。俺は向こうで風呂入ってくるから。上がったら俺の部屋行って待ってろ」
「・・・うん」

かっちゃんが頭をポンと触って風呂場から出て行った。火照る身体を覚ますために少し冷たい水で身体を流した。
入浴を終えても冷めやらぬ熱に身体を侵されている。一足先にかっちゃんの部屋に来た私はベッドの上に転がって先ほどのキスを思い出しては悶えて足をバタバタ動かした。
かっちゃんが部屋に戻って来て目が合えば二人して顔を真っ赤にしている。

「かっちゃんおかえり」
「・・・おう」
「かっちゃん、こっち来て」
「・・・」

かっちゃんがベッドに来たので起き上がったけど、妙に距離がある。私は引っ付きたくて仕方ないのに。ボソリと小さな声で呟いた。

「悪かったな・・・いきなりあんなことして」
「大丈夫だよ。元の体に戻れて良かったね」

しばらく無言が続いた。かっちゃんの手を握ったら、握り返してくれたけど、こっちを見ようとはしてくれない。顔を覗き込んだら、背けられた。なんでだろ。

「かっちゃん?怒ってる?」
「怒ってねェよ」

耳が赤くなってるのを見つけた。もしかして照れてる?お風呂に一緒に入ったから?それともキスしたから?

「かっちゃん、もっかいしてほしいな・・・」
「は??」
「だから、もっかい」
「聞こえとるわ」

そう言ってかっちゃんが振り返って、そっと触れるようなキスを頬に贈ってくれた。唇にじゃなかったけど、キスしてくれたのが嬉しくって恥ずかしくって照れ隠しでふにゃりと笑ったら、かっちゃんにこっち見んなって手で顔を押された。その手すらも私には愛おしく感じる。合同訓練でかっちゃんのファンの子に相応しくないって言われて嫌な感情が燻っていたけど、もうそんなものはとっくに無くなっていた。

かっちゃん、好きだ・・・



-48-







×
「#寸止め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -