死んで花実が咲くものか



ここ最近私は絶不調だ。全学科合同授業でも集中を欠いて個性で酔っ払ってしまった。相澤先生にはこのままの状態ならインターン止めさせると言われる始末。このままじゃ良くない。悩んだ挙句行き着いた先は私の原点であるオールマイト。オールマイトと話そう。そう思って、放課後に職員室に行ったのだけどジョギングに行ってるらしくて不在だった。教えてくれたミッドナイト先生にお辞儀して職員室のドアを勢いよく開けて転がるように飛び出した。後ろから「ドアは静かに開け閉めしろ!おい緑谷!」って怒鳴ってる相澤先生の声が背中越しに聞こえてきた。

「ごめんなさーい!!!」

走りながら叫んだ。きっと後でお説教されるだろうな。
遠くに走ってるオールマイトが見えて、フルカウルで加速して追いついた。

「緑谷少女が来た!ゴホッ!何故私がここにいると!!?」
「・・・・・・」

走り続けるオールマイトのペースに合わせて私も着いて行く。

「・・・全部知ってたんですか?ナイトアイがワン・フォー・オールを知っていて、通形先輩が後継の候補だったって・・・。全部知ってたんですよね?何で言ってくれなかったんですか」
「言う必要・・・あったかな」
「あるでしょ!!!新事実ばっかりでなんかよくわかんないまま否定されて!!何よりオールマイトの意図が分からなくて、秘密にする意図が分からないからモヤモヤする!何で教えてくれないんですか!!あなたのファンとしてじゃなくて、後継者として全部知りたい」
「この話は君の為にならないと思った。本当に聞きたいのか?」
「このまま秘密にされるよりはいいです」
「後悔するなよ?」
「・・・はい」

オールマイトの過去、そして未来について聞かされた。オールマイトが6年前にワン・フォー・オールによって受けた傷。その時にナイトアイは個性を使ってオールマイトの未来を見た。敵と対峙し言い表せない程凄惨な死を迎えると言った。だけど彼は戦う事をやめなかった。対立した原因は分かった。だけど・・・

「言いたくなかったんだ。ごめんな。君は私のファンだから」
「オールマイトが・・・死んじゃう・・・オールマイトが・・・死・・・」

確かに人間は生まれてくる限り死んでいく。これは覆すことができない。これまでにも予感は合った。だけどこうやって本人の口からハッキリ言われるのと、感じるのとでは全然違う。現実が突きつけられた。ナイトアイが私を認めない理由も分かった。そして通形先輩を後継者として育てているということも。

「オールマイト待って!ナイトアイの予知はいつの話なんですか!?予知はもう変えられないんですか!?」
「6〜7年後だって。遠い未来程時間に誤差が生じるらしいが予知で見た光景を変えられた事はないそうだ」
「6〜7って・・・じゃあ、今年か来年じゃないですか!嘘でしょ!!何で・・・嫌だよオールマイト生きててよ!体育祭で約束したじゃないですか。私は果たせなかった。果たせるまで生きててよ!“私が来た“っていうところ生きて見ててよオールマイト!」

涙が一筋頬をつたって流れていった。オールマイトは足を止めて私の頭を撫でた。

「緑谷少女、私ね予知を聞いてすんなり受け入れたんだ。ゴールが見えたなのならそこまでひた走ろうって」
「そんな!」
「神野でオール・フォー・ワンと戦った時ここがゴールなんだと思ったんだ・・・でも君がいた。君が・・・小心者で無個性だった君が私に応えてくれる日々が!その日々が私に生きろと囁いてくれた。そして君のお母さんに“生きて守り育てろ“と仰って頂いた!今更足掻くよ!君が変えてくれた!私は生きる!運命などこの腕で好きな形にねじ曲げてやるさ!!」
「ーーー!!」

マッスルフォームで力強く拳を握りしめたオールマイト。すぐに戻ってしまったけれど、その顔は弱々しい物ではなかった。メソメソしてる私を見かねてオールマイトがベンチに座って話そうと言ってくれた。私は、オールマイトがずっとそばで見守ってくれるものだとばかり思っていた。ずっと憧れてたヒーローがこんなに弱った姿になっていたっていうのも最初は驚いたしショックだった。近い将来死ぬかもしれないっていうことは、それを上回る衝撃で私の思考を鈍らせる。

「強くなろうとひた走る君の枷になりたくなかった。まァひょっとしたらもうねじ曲がった後なのかもしれないけどな」
「・・・私っあなたに何が合っても私も一緒にねじ曲げます!!!!」
「手を煩わせないよう頑張るよ」

コツンとグータッチをした。オールマイトの予知が変わってるかもしれないからナイトアイにもう一回見て貰えば良くないか!?そう提案したけど、ダメだって言われてしまった。ナイトアイの気持ちを考えてあげてって。それもそっか。
それから歩いて寮に戻ったのだけど、帰る道すがらオールマイトがジュースを自販機で買って渡してきた。

「ほら、緑谷少女、君は泣きすぎるきらいがある。そんなに泣いてたら干からびてしまうよ。君のことを支えてくれる人は他にもいるだろう?君は決して一人じゃない。それを忘れちゃいけない。ほら、心配して迎えに来たぞ。もう行きなさい。私も戻るから」

背中を押されて、寮の入り口へと歩みを進めた。振り返ったらオールマイトはこちらを見て優しく微笑んでいた。一礼して中に入るとちょうど中から麗日さんと梅雨ちゃんが出てきた。

「なまえちゃん!遅いから心配してたんだよ」
「ごめんね遅くなって」
「緑谷ちゃん、また何かトラブルに巻き込まれたのかと思って探しに行こうと思ってたの」
「そうだったの?ごめんね」
「無事でよかったよ〜」

優しく頼りになる友人がいてくれる。それがどれだけ今の私にとって支えになっているか。話を聞いてからマイナス思考に引っ張られていたので、リビングに集まっている学友たちの顔を見て心底ホッとした。その輪から少し離れたとこに座るかっちゃんを見つけた。放課後もトレーニングしてたのか、傷が増えてる気がする。
みんなそれぞれ頑張ってるんだ。私はオールマイトの未来をも変えられるようにもっと力をつけなくちゃいけない。私も頑張らないと!

麗日さん達に手を引かれてソファに座ってお喋りしてたら、ポケットのスマホが震えた。画面にはかっちゃんからのメッセージの表示。開いてみると『泣いてたんか?』の文字。
何でわかったんだろ。チラリとかっちゃんを見るとこっちを見ていた。こんな近いのにスマホでやり取りするなんてなんか変だけど、皆に聞かれないようにと配慮してくれたんだろう。
もう大丈夫だよと返信したら、またも視線を感じる。顔を上げてニコリと微笑めば、睨みつけられた。心配してくれてたんじゃなかったの?
かっちゃんの隣の席に座ると、かっちゃんがぶっきらぼうに言った。

「あっち居なくていいのかよ」
「皆とはもうたくさん話したし、今はかっちゃんのそばに居たいから」
「・・・そうかよ」
「ねえ、かっちゃん。もし私が敵と戦って死んだらかっちゃんは泣いてくれる?」
「は!!??意味わかんねぇこと言うなよバカ!縁起でもねぇ。てめェが何考えてるかわかんねぇけど、そんなことになったら俺は泣かねえ」

目を釣り上げて怒って私の手を掴んだ。

「そっか・・・」
「なまえがそんな目に遭わないように俺が守ってやる。だからそんなメソメソすんな。カビ生えるって前にも言っただろ。なんだァ?あれか?オールマイトから貰ったチカラにビビっちまったんか?」
「違うよ!ただちょっとナーバスになってただけだもん」
「なら、そんなシケた面すんな。オールマイトみたいになりてぇんだろうが」
「うん!・・・ありがとう、かっちゃん」
「ん」

かっちゃんの肩に寄り掛かったら、かっちゃんがカチコチに固まった。その様子を見てたらしくて、クラスメイトたちが盛り上がってる。話に夢中になってるからこっちの方なんて誰も見てないだろうって思ってたから、私も慌てて離れた。二人して顔が真っ赤になって妙な距離感になった。
かっちゃんがキレて皆を爆破しに走って行ってしまった。それを止めに行ったら、「なまえてめェ後で覚えてろ」って宣戦布告されてしまった。
実際、かっちゃんは部屋に来て、窒息させるつもりなのかってくらいに抱きしめてきた。ギブアップと言ったけどもやめてくれなかった。それに前髪をかきあげて、剥き出しになった額をペチンと叩かれた。 

「死ぬとか言うなよ絶対」
「うん、ごめんね」
「なまえが死ぬなんてこと考えたくねぇ」
「うん・・・」
「てめェは笑ってのほほんと生きてろ」
「う、うん?」

かっちゃんはそれから全然離してくれなかった。そろそろお風呂に行くって言ったらようやく離してくれたけどその頃には1時間以上経っていた。そんなに抱きしめられてたの!?


後日、インターン組の活躍がニュースに載っていると話題になっていた。私はあれからナイトアイの事務所からお呼びがかからないからずっと学校の授業を受けている。
オールマイトのこと、ナイトアイのこと、通形先輩のこと腑に落ちない点は多々あるが、話は分かった。しかし、あの女の子、"エリちゃん"のことが気になり日に日に私の中で大きくなっている。はやく手がかりがみつかりますように。



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