全学科合同訓練
今日の授業は全ての学科総動員での訓練だ。普通科も参加ってことは心操くんにも久しぶりに会えるかもーなんて、ぼんやりしてたら麗日さんに頬を突かれた。ここ最近、授業に集中できていなくて相澤先生や13号先生に注意を受けたばかりだ。どうしてこんなことになったかというと、初めてのヒーローインターンで救けられなかったエリちゃんのことを消化できずにモヤモヤしているからだ。
麗日さんだけじゃなくて、チームアップのメンバーにも迷惑をかけている。このままじゃダメだって分かってるけど、すぐに気持ちを切り替えられない。泣き虫でノロマで愚図ななまえはいまだ健在なのだ。
全学科合同の訓練って何するんだろう・・・
校長先生が壇上に上がって説明を始めた。
「やぁ!諸君に集まってもらったのは他でもない。今水面下では敵の動きが活発になってきているからさ。いつぞやの雄英高校襲撃された、USJ事件を覚えているかな?そんなことになった時、自分の身は自分で守れるようになってほしい。ヒーロー科だけでなく、サポート科、経営科、普通科。分け隔てなくこの訓練はしていきたいと思っている。自分を護れるだけの力は持っていて損はないからね。さあ手元にプリントが行き渡ったら各自指定されたグラウンドへ行くこと」
なるほどね。そういう意図があるのか。それぞれ指定されたグラウンドへ行くことになった。私は青山くん、尾白くん、障子くん、二郎さんと一緒の場所みたいだ。
ヒーロー科だけコスチューム着用なので、目立つし他の科の人たちの視線が痛い。
「さぁ、ヒーロー科の皆!!この訓練では貴方達は敵よ!サポート科、経営科、普通科の合同チーム!!貴方達は皆で力を合わせて敵を倒す訓練となるわ。ヒーロー科は敵の心理を学ぶ良い機会よ。しっかり学びなさい!!ルールは簡単。敵が合同チームの陣地を攻める。合同チームの陣地の旗を奪って敵側の旗を建てたら敵側の勝利。合同チームが自分の旗を守り切れば合同チームの勝利となるわ。普段ヒーロー科が行ってる訓練を貴方達もすることでいざというときの身の運びを学べるという上のお考えよ。この訓練は今後もするから覚えておきなさい。まずは15分のシンキングタイム。合同科30名は作戦会議をしなさい。ヒーロー科も敵同士で連携をとる作戦会議ね」
ミッドナイト先生が鞭をしならせながら叫んだ。突如始まった合同訓練。
いつもなら頭フル回転で勝つための策を練るけれど、今日な全然ダメだった。障子くんと耳郎さんが偵察して・・・青山くんが遠距離で守り、私と尾白くんが接近戦に持ち込み畳みかける。ダメだありきたりだし、きっと合同チームに読まれる。意表をつかないと。敵ならきっとこうするって考えないと。
15分の作戦会議を終えて始まった訓練。結局私が特攻して合同チームの注意を引きその隙に私以外の四人で旗を取りに行く策でいくことになった。
私が陣地のビルに侵入して正面突破していく。上から横から個性で攻撃されるが、避けては反撃していく。もちろん直接攻撃を当てたりはしていない。ワンフロアずつ制覇していって上に上がって行く。旗は屋上に設置されている。そこを目指すことになる。
あともう少しで屋上だって時に、合同チームの女の子と目があった途端に身体が熱くなって足元がフラつきはじめた。その子の目を見れば見るほどに息も上がって、千鳥足になっていく。
「ぅう、何これふわふわする・・・」
「ごめんなさい、私の"個性"ヘンなんです」
そう言って女の子が私の顔を掴んでまたジッと目を合わせてきた。私はもう自分一人では立っていられなくて床にぺたりと座り込んだ。どんな個性なのこれ。
結局ヒーロー科が旗をあっさり獲って終わったのだが、私は合同科に捕縛テープでぐるぐる巻にされてしまっていた。ぼんやりしていたとはいえ、捕まるなんて本当にダメダメだ。
私は保健室に運ばれたけれど、あの女の子の個性は一日持続するらしくて、リカバリーガールでも相澤先生でもその個性は消すことはできなかった。かっちゃんが迎えに来たけど、かっちゃんのことをみた途端にドクンと鼓動が激しくなって身体がより熱くなった。かっちゃんに飛びついて、胸に頬を擦り寄せた。
「かっちゃん、かっちゃん」
「かっちゃかっちゃ、うるせぇんだよ!なんだよなまえ」
「好き・・・」
「!!!???」
かっちゃんは固まってるけど、そんなことお構いなしにくっついていた。首に腕を回して額をかっちゃんの額へとくっつけたらキレられた。
だけど、身体の熱は冷めるどころかさらに燃え上がり、かっちゃんにしがみついて耐えていた。業を煮やしたかっちゃんに肩を支えられて引きずられるように寮へと帰った。
寮に着いて皆に心配されるがそれどころじゃない。かっちゃんしか目に入らないし、もうくっつきたくてたまらない。涙が出るほどに。
「かっちゃん・・・」
「なまえ!!俺の部屋行くぞ」
くっついているとさらに身体は火照ってきて、もう耐えられない。自分のものじゃないみたいに、熱くて辛い。意を決してこの火照りをどうにかしてほしいって伝えたら、固まってたけどぎこちなく私の頬をなでてくれた。
でもそれだけじゃ満足できなくてかっちゃんを押し倒して馬乗りになった。かっちゃんがいつも私にするように首に噛み付いて噛んだところをペロッと舐めた。
「おい!何してんだなまえ!離れろやバカ!」
「ふふ、いつもの仕返しだよ」
「っ!!」
かっちゃんの瞳が揺れている。愛しさが爆発して、何度もかっちゃんの頬にキスをしたら顔を真っ赤にして睨みつけていた。それすらも私には愛おしくって微笑んでたら、急に眠気に襲われてかっちゃんの上に倒れた。
そんなことがあったような、なかったような。なんとなく覚えてるけれど、夢なのかもしれない。私の意識がぼんやりと上昇していき、目がしっかりと覚めた時にはかっちゃんが烈火の如く怒り狂っていた。怖っ。
「おはよ、う?」
「おはようじゃねぇわ!このクソなまえ!早く退けや。重たくて圧死するわ」
「は!ご、ごめん!!」
かっちゃんの上でぐーぐー寝てたなんて信じられない。あれは夢じゃなかったの??
慌てて退いたら、かっちゃんに首根っこを掴まれて引き戻された。
「次こんなことなったら覚悟しとけよなまえ」
「ん??覚悟??」
「はぁ・・・もういいわ、もう身体は大丈夫なのかよ」
「うーん、熱いのは治ったけど、頭ガンガンしてなんか吐きそう・・・ぅっ」
かっちゃんの部屋のトイレに走って胃の中のもの全部出した。けど、何も食べてないから胃液が出ていくだけだった。かっちゃんが背中さすってくれて、水を飲ませてくれた。醜態を晒してしまったけど、なんだかんだかっちゃんは優しいな。
翌日、普通科の女の子が謝りに来た。今回は眼鏡をかけていた。
裸眼で目が合ったら、べろんべろんに酔っ払うという類稀な個性の持ち主だという。
「私のせいでしんどい思いをさせてしまって本当にごめんなさい」
「何で謝るの!私は敵役だったんだから個性で攻撃するのは当然だよ」
「でも・・・」
「すごい良い個性だね!その個性なら敵を瞬時に捉えることができそう!ヒーロー向きの個性だと思うよ」
「・・・っ!」
その子が涙ぐんでしまったので、慌てて背中をさすった。可愛い女の子泣かせてしまってどうすればいいか分からなくてワタワタとしてたら通りすがりの瀬呂くんに「おい緑谷、泣かせるなよ」って怒られてしまった。泣かないで。今まで個性で辛い思いしてきたのかな。瀬呂くんがその子を泣き止ませていてすごいと思った。やるなぁ、瀬呂くん。涙を拭ってはにかんだ笑顔で手を振って帰っていく女の子の名前を聞き忘れてしまった。
合同訓練これからもするってことは、色んな個性と出会うんだろうな。これはいい勉強になる。あの女の子の個性もメモしておこう。
かっちゃんに「てめェは大人になっても俺が居ないところでは絶対に酒を飲むな」って強く言われてしまった。何でだろ。