二人ぼっちの寮内謹慎



「で、なんで緑谷はエプロン姿なんだ?新婚さんごっこなのか?」
「何言ってんの。違うに決まってるでしょ、峰田くん」
「ほんとだ!なまえちゃん、まだ私服だし、何でエプロン!?学校行く準備しなくていいの!?」
「んーちょっとかっちゃんとケンカしちゃって寮内謹慎中なの」
「爆豪とケンカして・・・」
「謹慎〜〜〜〜〜〜〜!?」

芦戸さんと葉隠さん息ピタッリだなあ。掃除機をかけていたけど、音が大きいから一度電源を切った。麗日さん、瀬呂くん、切島くんもその話を聞いてそばにやってきた。

「爆豪ももっと素直になればケンカになんてならないのに」
「ケンカの原因は何だよ」
「・・・」
「そんなこと聞かなくたっていいでしょ、男子ってほんとデリカシーないよね。これは二人の問題なんだから!首突っ込まなくていいの!」

答えに詰まっていると、鼻息を荒くした芦戸さんが瀬呂くと切島くんを追い払った。

「・・・」
「なまえちゃんそれ仲直りできたの?」
「仲直りっていうものでも・・・うーん・・・言語化がムズい」
「よく謹慎で済んだものだ!!ではこれからの始業式は君ら欠席だな!」

小さく頷くと、麗日さんが背中を撫でてくれた。学舎へと向かう皆を玄関で見送った。

「皆行ってらっしゃい」
「何だこれ!!新婚さんみたいじゃねェかよ!!」
「ハハ、峰田くんきもい!」
「さらっと可愛い顔で言うなよォォォ!オイラでも傷つくんだかんな!!」
「じゃあ爆豪、緑谷掃除よろしくなー!俺らいないからってイチャつくなよ?」
「・・・」
「・・・」

複雑な気持ちになってしまう。授業の遅れを取り戻すのは大変だろうし、寮の外にはゴミ捨て以外は一歩も出られず缶詰めだし、朝と夜は食堂にランチラッシュのご飯が届くけれど、謹慎中の私たちは昼ごはんを自分で作らないといけない。料理作るのは苦痛だし・・・それより何よりかっちゃんと寮に二人っきりだ。
皆が出ていくと一気に静かになってかっちゃんと二人きりなんだってますます意識してしまう。自分の気持ちに気がついてしまったし、昨日別れ際に頬にしたキスのせいでなんだかぎこちない空気感だ。どうしよう。自分でしておきながら、大胆なことをしてしまったと後悔する。流石にかっちゃんも私の気持ちに気付いてるよね?
かっちゃんと目が合って、二人して視線を逸らす。なんだこれ、だめだ。このままじゃ私の心臓がもたない。
寮の共有スペースは割と広いから手分けしてすることになって私は女子の風呂やランドリースペースを掃除し始めた。キッチンや、リビングも全て掃除が終わり、男子のスペースを覗くとかっちゃんも掃除が丁度終わったところだった。自分で覗いておいて逃げるのもヘンだし、どうしていいかわからなくてふにゃりと笑った。その顔を見たかっちゃんが掃除機を片付けてこっちにやってきた。

「あ、終わった?私も終わったところだよ・・・・・・えーと、あの、その、昨日の、シュートスタイルどうだったかなって聞こうかなと思って」
「・・・予備動作がでけぇ。速度アップしてもギリ反応出来た。乱打線にゃ向いてねぇ」
「・・・・・・そっか」
「パンチと合わせんのは腹立った」
「・・・そっか!」
「なァ、昨日の・・・」
「あ!!私洗濯物干さなきゃ!かっちゃんまた後でね!!」
「オイ!なまえ待てや。こっち来い」

そう言ってかっちゃんから遠ざかろうとしていた私の腕を掴んで引き止められた。かっちゃんの顔がまともに見れなくって速くなる鼓動の音がかっちゃんに聞こえちゃうんじゃないかって思って手を引っ込めようとしたけど離してくれなかった。仕方なく、かっちゃんを見るとボンっと顔が赤くなってしまったのが自分でも分かる。いや本当になんてことしたんだろ。昨日の私を恨んだ。かっちゃんは私の様子を見て、ちょっと笑った。その笑顔反則!!
自分の感情に気が付いたらかっちゃんの一挙一動全てに反応しちゃう。

「なまえてめェ昨日自分からしといてその反応はねえだろ」
「だ、だって・・・」
「まあいい。俺は今から自主トレする。なまえは洗濯か?」

頷いて自分の足元をじっと見た。かっちゃんに掴まれてる腕が熱い。意識してるのは私だけなのかな。そう思ってチラリと見ると目が合って、かっちゃんは慌てて腕を掴んだ手を離した。お互いがそっぽを向いて黙ったままでいる。でも、このまま気まずいのは嫌だな。

「なまえ、昼飯一緒に食うか?」
「え!あ、うん!いいの!?」
「俺が作る」
「い、一緒に作りたいな・・・」
「・・・おう」

洗濯物干すからと言って一旦その場を後にした。女子ランドリールームのスツールに座り込んで、深呼吸をした。どうしよう。こんなことなら母とともに料理の練習しとくんだった。かっちゃん、私の料理の下手さは爆豪家にお泊まりしたときや林間合宿で露見してしまってるから、ご飯作るって言ってくれたんだろうな。カゴに洗濯したものを放り込んで、自室のベランダに洗濯物を干した。
かっちゃん自主トレどこでしてるんだろ。部屋かな。一度騒ついた心はちっとも落ち着かなくて、思考回路を遮断するためにも部屋にこもってストレッチと筋トレに励んだ。
スマホが光った。昼飯作るから降りてこいってかっちゃんからのメッセージだ。汗拭きシートで軽く身体を拭いて汗まみれの服を着替えた。
かっちゃんはすでにキッチンに立ってお米を洗って炊飯器にセットしていた。こうして見たら、なんか本当に新婚さんみたいじゃん。峰田くんのせいで、そんな風に見えてきた。

「かっちゃん、何作るの?」
「適当」
「適当?私何したらいい?」
「そうだな・・・なまえはレタス洗って手でちぎってろ」
「うん!わかった!」

洗ってちぎるくらいなら私でもできる!レタスと向かい合って、真剣に一枚一枚剥いでいってザルに入れていく。なんかめっちゃ料理上手くなった気分。

「あ、オイ!てめェそんなにレタス食うのかよ!?二人分だぞ!」
「はっ!ご、ごめん!!レタスちぎるの楽しくつい!」

やばい、完全にうっかりしてた。こないだの林間合宿のノリで大量生産してしまっていた。そうだよ二人分だよ。洗ってちぎったレタスとミニトマトをプレートに載せるよう指示されてその通りにしていく。シェフと見習いコックって感じだな。ここのキッチンの冷蔵庫には新鮮な食材がいつも入っていて誰でも使っていいことになっている。かっちゃんは冷蔵庫から玉ねぎを取り出すと器用にみじん切りにしていく。目痛くないのかな?そばにいる私は痛くて涙目なんだけど。
ボウルに挽肉やパン粉切った玉ねぎ、卵や調味料を入れたかっちゃんは私に捏ねろと言った。うん、またしても包丁を使わない仕事を任されたな。でも、お任せください!包丁を使わないことに関しては私割と器用にできるんです。楕円形に成形したタネをかっちゃんはフライパンで焼いていった。いい香りがあたりに漂っている。

「かっちゃん、ほんと器用だよね。なんでもできるのすごいな。私なんて包丁もろくに使えない不器用さだから料理できないし・・・かっちゃんが羨ましいよ」
「なまえが料理できなくても俺ができるからいいだろ別に」
「・・・・・・」
「勘違いすんなよ!!謹慎期間中の話だからな!!クソなまえ!!」

私が照れて下を向いたのが分かったのか、かっちゃんが慌てて弁明している。そんなこと言われたら普通の女の子なら勘違いしちゃうよ。
完成したハンバーグプレートはおしゃれなカフェとかのランチメニューにありそうだ。向かい合って食べるのが恥ずかしくて、隣に並んでもいい?って聞いたけど、結局隣は隣で、近すぎて緊張することに座ってから気が付いた。
食べ終わってからかっちゃんが一緒に皿洗いしようとしてくれてたけど、料理のほとんどをしてくれたので後片付けは任せてと言ってかっちゃんをリビングのソファに無理矢理座らせた。

昼からはかっちゃんと寮の共有玄関や廊下の掃除をした。疲れて、かっちゃんとソファに座って一休みしてたらだんだん眠くなってきた。微睡んでたら部屋で寝ろって怒られた。

「なまえ、寝てる暇あるなら勉強するか自主トレしろ」
「うん・・・勉強教えてほしいとこあるの。かっちゃんの部屋行ってもいい?」
「いいけど早くしろよ。じゃねえと教えねえからな」

その言葉に慌てて自分の部屋に駆け込んで、鏡を見た。よし、髪の毛もセットしてあるし服はご飯前に着替えてるしこれでいいだろう。勉強道具持って、部屋を出た。
かっちゃんの部屋の前で深呼吸をした。

「お邪魔します」

コンコンとノックしてから部屋に入ると、かっちゃんが筋トレをすでに始めていた。私は邪魔にならないように、机のところで勉強を始めた。わからない問題に手を止めて悩んでいたら、それに気がついたかっちゃんが後ろからノートを覗き込んできた。かっちゃんが私の手からシャーペンを奪い取ってノートの隅に計算式を書いていく。

「ほらよ」

そう言って返されたシャーペンを握りしめて固まっていたら「なんだ分からねぇのか?どこだ」って言ってすぐ横に来るもんだから、問題も答えもちっとも頭に入ってこない。

「おい、聞いてんのかなまえ。こっち向け」
「ひゃっ!!??」

そう言ってかっちゃんに顔を掴まれて方向転換させられた。顔近いって!ヘンな声出ちゃったじゃん。

「なまえ・・・」
「か、かっちゃん私、私、トイレに行ってきます!!!!」
「・・・・・・早よ行けや」

かっちゃんが時々醸し出す大人みたいな雰囲気に耐えきれなくて席を立った。
戻ったらかっちゃんが筋トレをやめてこっちに向かって来た。え、何?後退りするけど背中はドアに当たってこれ以上動けない。
腕の中に閉じ込められた。

「か、かっちゃん?」
「俺のこと好きか?」
「え・・・す、好き・・・」
「んなら、目ェ閉じろ」
「へ?」

私を抱きしめる力が強くなった。目を閉じたら、頬に何かが当たって目を開けたらかっちゃんの顔がすぐそこにあった。かっちゃんと目があった。何度も啄むように頬に唇がくっついては離れる。

「〜〜〜〜〜〜っ!!??」
「昨日の仕返し」

そう言ってニヤリと笑ったかっちゃんに目を奪われた。私はかっちゃんのことが異性として好きなんだ。無自覚だったけどずっと初恋の相手を好きでい続けていたんだ。胸の奥が熱くて、ギュッと苦しくなった。今の状況に恥ずかしくなって手で顔を覆った。今の私はきっと今までにないくらい真っ赤だと思う。

「なまえ手ェどけろや」
「や、やだ」
「は?なんでだよ」
「今かっちゃんのこと見たら私死んじゃうと思う」
「何言ってんだアホか」

しばらく直視できなくて、足元ばかり見てたら、呆れてたかっちゃんにデコピンされた。何気なく時計をみたらもう夕方になっていた。いつまでもかっちゃんのキスの余韻に浸っているわけにもいかない。
夕方になると皆が帰ってくるので慌ててかっちゃんの部屋から飛び出した。各自の部屋のゴミを回収するためドア前に出しておいてもらったのをすっかり忘れてた。慌てて回収して一階に降りたら、皆帰ってきて授業の内容について話していた。英文法がどうとか、インターンがどうって聞こえてきて、たった一日ですごい置いていかれてる。焦って近くにいた飯田くんに、インターンって何?って聞いたけど相澤先生に伝達を禁じられてるらしくて教えてくれなかった。
ヤキモキしながら、かっちゃんが集めてきた男子の分のゴミと女子の分をまとめて、ゴミ捨て場に運んでいく。
普通の授業もそうだし、冷静になったらこの三日の謹慎はかなりの痛手だ。明日はヒーロー基礎学もあるし・・・皆と差が開いてしまう。
ブツブツ呟きながら歩いてたら、壁に人の顔が浮かんでた。目が合うとニコッと笑って話しかけてきた。

「ゴミね。食品トレイとかも可燃で出しちゃって大丈夫だからね」
「・・・・・・・・・きゃぁぁぁあ!!心霊的なアレじゃん!!!!!無理っ!!!」

叫んで壁に浮かぶ顔に蹴りを入れようとしたら消えていって、今度は地面から顔が現れた。またもや悲鳴をあげる羽目になった。

「元気な1年生って君だよね!?」
「オバケがしゃ、喋ってるっ!!??」
「ビックリしたよね!!??あ、ちょ!蹴ろうとしないでよ!!悪いことをしたぁーーーー!!ビックリすると思ってやってるんだけどね!!」
「た、タチ悪っ!!何なんですかあなたは!?オバケ!?優しい顔のオバケなんですかぁ!!??う、うわぁぁああ!!怖いーー!」
「ちょ、泣きながら蹴らないで!!大丈夫だから!!オバケではない!!これは誓って言えるよ!!まァ俺のことはじきにわかるんだよね。とにかく元気があって何よりだよね!!なんか噂になってたから気になって見に・・・」
「・・・」

オバケじゃないって言い張る顔だけの何かは、喋ってる途中でスッと地面に消えていった。怖すぎて心臓がバクバクしてるし、持ってたゴミ袋全部落としてしまった。

「何だったの・・・」

どっかで見たことある顔な気もするけど思い出せなかった。
ゴミ捨てがホラーすぎたので寮に戻ってかっちゃんに引っ付いたら、皆の前だったからキレられて引き剥がされてしまった。

こうして謹慎一日目は終了した。



-42-







×
「#総受け」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -