初めての開発工場



寮に引っ越した翌日から授業が始まった。普通の学校なら夏休み真っ最中。でも、私たちはヒーロー科。やらなきゃならないことが山積みだ。夏を満喫してる暇はないのだ。

「ヒーロー免許ってのは人命に直接係わる責任重大な資格だ。当然取得の為の試験はとても厳しい。仮免といえどその合格率は例年5割を切る」
「仮免でそんなキツイのかよ」
「そこで今日から君らには一人最低でも二つ・・・必殺技を作ってもらう!!」
「学校っぽくてそれでいてヒーローっぽいのキタァァ!!!」

教室がその言葉に沸いた。
やっぱり必殺技って大事なんだな。必殺と書くだけあって、必ず勝つための技。そんな技わたしに作り出せるのかな・・・ 
私たちはコスチュームに着替えて体育館γへと向かった。
体育館γ、通称"トレーニングの台所ランド"略してTDL。USJもそうだったけど、TDLはますますマズそうな気がする。この体育館はセメントス先生の考案のトレーニング施設で、生徒一人一人に合わせた地形や物を用意することができる。台所っていうのはそういう意味らしい。なるほどね。

「ヒーローは、事件・事故、天災、人災・・・あらゆるトラブルから人々を救い出すのが仕事だ。取得試験では当然その適性を見られることになる。情報力、判断力、機動力、戦闘力。他にもコミュニケーション能力、魅力、統率力など多くの適性を毎年違う試験内容で試される」

林間合宿で個性伸ばしが中断されてしまったが、あれは必殺技を作り上げる為のプロセスだったらしい。

「つまりこれから後期始業まで、残り十日余りの夏休みは"個性"を伸ばしつつ必殺技を編み出す圧縮訓練となる!」

圧縮、訓練かぁ。すごいネーミング。個性に合わせてコスチュームを変更するように言われて皆頷いた。
どうしよう・・・他の人がどんどん訓練を進めていく中、立ち止まっているとエクトプラズム先生に声をかけられ義足で脚を蹴られた。

「何ヌボーット、シテイル?」
「わっ!!あっ、と・・・その必殺技なんですけど、私腕に爆弾ができてしまってあまり無理ができなくて。正直必殺技のビジョンが全然見えないんです」
「・・・フム確カニ君ノ個性ハ、アル意味安定行動トハ最モ遠イ。スタイルガマダ定マランノデアレバ今日ハ個性伸バシニ専念シヨウ」

その時、かっちゃんが爆破でエクトプラズム先生の分身を破壊した。

「エクトプラズム!!死んだ!!もう一体頼む!!」

すごいなぁかっちゃん。必殺技のビジョンがたくさん見えてるんだと思う。それに比べて私は・・・手に不安があるから技が全然考え出せない。

「ヘイ!」
「あっ!オールマイト!」

いつの間にか体育館γにオールマイトがやって来ていた。全然気が付かなかった。

「アドバイス。君はまだ私に倣おうとしてるぞ」
「へ?それはどういう・・・」

アドバイスの真意を聞こうと思ったけれど、オールマイトはくるりと向きを変えて切島くんの元へと行ってしまった。
言葉の意味を考えていたけど結局わからないまま個性伸ばしだけで授業は終わってしまった。   
腕が動かなくなったらマズイので、腕の動きを補助するサポーターみたいなものがあればいいのではと考えた。コスチュームの改良について相澤先生に尋ねるが、専門外のことはわからないから校舎一階の開発工場へ行き専門の方に話を直接聞くようにと言われた。

初めてやってきた、開発工場。中から様々な機会音が聞こえてくる。ワン・フォー・オールの許容上限の底上げのための体作り、必殺技の考案取得。皆からふり離されないようにじゃなく、トップを目指さないと。開発工場のドアをノックしようとしたとき、麗日さんと飯田くんもやって来て声をかけられた。

「あ!麗日さ・・・」

爆発音とともに私の声はかき消されてしまった。そして大爆発に巻き込まれた私は廊下に吹っ飛んだ。煙幕の中からパワーローダー先生と発目さんが現れたのだが、私の上に発目さんは乗っていた。

「あれ!?あなたはいつぞやの!」

あわわわわ。ちょっと待ってください。何この状況。この豊満な弾力は!?発目さん、胸!ちょっとどころかかなり胸当たってます!退いてもらってからも、ドキドキが続いてた。男の子の気持ちが少しわかった気がするよ。

「突然の爆発失礼いたしました!!お久し振りですね!ヒーロー科の・・・えーー全員お名前忘れました」
「み、緑谷なまえです」
「麗日お茶子です」
「飯田天哉だ!体育祭トーナメントにて君が広告塔に利用した男だ!」
「なる程!!では私ベイビー開発で忙しいので!」

発目さんはそう言い残してさっさと開発工場へと戻って行ってしまった。

「あっちょっ・・・あの、コスチューム改良の件で、パワーローダー先生に相談があるんだけど」
「コスチューム改良!?興味あります」

それまで興味なかったんですね、発目さん。

「イレイザーベッドから聞いてる。必殺技に伴うコス変の件だろ。入りな」

パワーローダー先生が出てきて中に招き入れてくれた。開発工場の中は、見たこともない機械や道具が置いてあって圧倒された。なんだか秘密基地みたいだ。パワーローダー先生はコスチューム変更のライセンスを持っているから、学内で変更、申請ができるのだという。
腕の靭帯への負担を軽減できるものがあればとお願いするとすぐにでも可能との返事をもらえた。良かった。

急にペタペタと誰かに身体を触られて悲鳴をあげた。発目さんだ。胸や腰、太腿などを弄られて、なんだかやらしいことされてるみたいで恥ずかしい。

「ひゃっ!うわぁっ、や、やめてっ!あっ、ちょっと発目さんっ!どこ触ってるの!」
「は、発目さん!?何を??」
「フフフ、体に触れているんですよ。はいはい・・・見た目よりも胸ありますね。それに前に比べて筋肉量も増えている。フフフ良いでしょうそんなあなたにはとっておきのベイビー!!パワードスーツ!!」
「あの、私腕のサポートだけでいいんだけど」

いつの間にか着せられたパワースーツを始動させる発目さんは私の話を全く聞いてくれていない。発目さんの方を向うとすると、勝手に腰回りが動いているのだがどこまでも止まる気配がない。

「あれ、待って・・・止まんない。待っ!いだっ!いたたたた腰が!いたたたた!やばい!」
「どうやら可動域のプログラミングをミスったようです!ごめんなさい!」

腕のサポートを頼んだのに、胴をねじ切られそうになるとは・・・開発工場恐ろしや。
飯田くんは脚のラジエーターの強化をお願いしたはずなのに腕のブースターを勧められていた。

「俺の個性は脚なんだが!?」
「フフフ知ってます。でもですねぇ、私思うんですよ。脚を冷やしたいなら腕で走ればいいじゃないですか!」
「何を言っとるんだ君はもう!!」

その言葉に私は何かを掴めそうな気がした。それにオールマイトの言葉。

"君はまだ私に倣おうとしてるぞ"


なんか、なんか、見えてきたかも!私の必殺技ビジョンが!
飯田くんに脚技のコツを教わる約束を取り付けた。

パワーローダー先生は発目さんの保護者みたいになってる。叱られてもめげない発目さんのその根性に拍手を送りたくなる。発目さんは入学して4ヶ月余りで山ほどサポートアイテムを開発したらしい。プロになったときお世話になるだろうとパワーローダー先生が言った。なんだかんだ発目さんのことは認めているらしい。

翌日、私の腕のサポーターが出来上がったという連絡を受けて開発工場へ行くと先客がいた。かっちゃんだ。発目さんがかっちゃんの体をペタペタ触ってる光景を目にして、私の中で何か騒ついた。でもそれが何かは分からない。なんだかとっても嫌な気持ち。
足が勝手にかっちゃんのところに向かってて、発目さんの手を無理矢理退けてしまった。

「ぁあ!あなたはっ!!腕のサポーターが完成していますよ!今すぐ着けてみてください」

そう言って部屋の奥へとサポーターを取りに走って行ってしまった。かっちゃんは、俺のコスチューム確認の途中だったろと怒ってる。

「ご、ごめん」
「なんだよ、横入りすんなよ。順番くらい待て」
「うん・・・」
「・・・どした?」

モヤモヤした気持ちを抱えて、どんよりとしたトーンで返事をしてしまった。かっちゃんは心配して私の顔を覗き込んできた。

「・・・」
「なんだよ。言わねぇと分かんねぇだろ」
「・・・よく分かんないけど、なんか嫌だったの」
「何がだよ」
「そ、その・・・発目さんがかっちゃんの体触ってるのが・・・なんか嫌だった」
「っ!!それで、横入りかよ」

かっちゃんは怒ってたはずなのに、ほんの少し表情が柔らかくなっている。私はまだモヤモヤの正体がわからなくて俯いた。微妙な空気の中発目さんのが戻ってきて腕にサポーターを取り付けるようにと急かしてくる。ちょっと待って!

試着して、ワン・フォー・オールの試し撃ちをしたのだが、腕にかかる負担がかなり軽減されている。想像を遥かに越える出来だ。すごい!

かっちゃんも、コスチューム確認が終わったらしく、紙にオーダーを細かく記入している。私はそれが終わるまで壁にもたれかかって待っていた。かっちゃんが書き終わるとこっちにやってきた。

「行くぞ」
「発目さん、ありがとう!大事に使うね」
「はーい!可愛いベイビー大事に育ててください!」

外に出るとかっちゃんが、私の手をとって歩き出した。どこに行くのかなと思ってたら、男子更衣室に入っていく。や、私女子なんですけど!!
更衣室の奥の簡易シャワールームに押し込まれた。かっちゃんは後ろ手でカーテンをひいた。私の手をとり、その手を自分の胸に持っていく。何?なんなの?それに誰か入ってきたらどうするのよ。私が男子更衣室に侵入してる変態みたいじゃん。頭から煙がでるくらいパニックになっていると、かっちゃんがニヤリと笑った。

「ちょっ、ちょっと!誰か来たらどうするの!?誰かに見られたら私峰田くん以上の変態のレッテル貼られちゃう」
「大丈夫だろ。シャワールームのカーテン開けるやつなんていねぇよ」
「で、でも」
「ほら・・・あいつに触られたとこお前が触って上書きしろよ。そうすれば嫌な気持ちどっか行くだろ」
「・・・なるほど!そういうこと!?いや、でもこの状況意味が分からん」

ブツブツ言ってると頭を叩かれた。かっちゃんが何か言おうとしたとき、ガチャンと音がして更衣室に誰かが入ってきた。ヤバい。青ざめる私は咄嗟にシャワーの蛇口を捻った。冷たい水が出てきて私もかっちゃんもびしょ濡れになった。
だんだんと温かくなっていく水に打たれながら、じっとしていると足音が近づいてきた。

「誰かシャワー浴びてんな」

このシャールーム、カーテンで仕切られてるだけで足元見えてるタイプなのよ。もし足元見られたら詰む。まだ始まったばかりなのに雄英生活に終わりを告げることになる。そんなの嫌だ。
咄嗟にかっちゃんに抱きついて足元見えないようにとかっちゃんの腰に脚を絡めた。これで足元バレしないはず。
そう思ってかっちゃんをみると、私の胸元に顔が埋もれてた。や、やば・・・のけ反ると、かっちゃんは静かにキレてた。そうですよね、ごめんなさい!
ロッカーをバタンと閉めて、足音が遠くなっていく。更衣室を出ていったようだ。かっちゃんから降りると、かっちゃんは大声出すことなく黙ったままだった。
かっちゃんが私を見つめて近づいてくる。ジワジワと私も後ろに下がるが壁に当たってこれ以上下がれない。かっちゃんは私を抱きしめて耳元で言った。

「コスチューム濡れたじゃねえか、責任取れよ」
「えっ!あっそうだね、ごめん!洗濯します!」
「今すぐ責任とれ」
「へっ!?今すぐ!?無理だよ」

かっちゃんが私の濡れた髪を掴んで、首元に吸い付いてきた。林間合宿のときもされたやつ。

「あっ!かっちゃん、ダメだよっ」
「てめェが悪い」
「ひゃっ、あっ、あぁっ」

首筋に触れる唇とかっちゃんの髪がくすぐったくてヘンな感じだ。唇が近づいては離れてあちこちを吸われた。お互いにびしょ濡れで何してんだろ。かっちゃんの抱きしめる手がだんだんと腰に降りてきている。なんか、これ・・・なんか、これ!!やらしいことじゃない!?って気がついてかっちゃんを突き飛ばしてしまった。

「こ、ここではだめだよ!誰か来たらやばいし」
「ここじゃなかったらいいんだな?」
「ち、ちがっ!」

かっちゃんはロッカーからバスタオル持ってきて、私のリボンとヘアゴムを外して髪の毛をガシガシと拭きはじめた。
ひとしきり私の髪を拭いたらかっちゃんは外に出て、別のバスタオルで身体を拭いて制服に着替えているようだった。
私はどうすればいいか分かんなくて、とりあえず濡れた髪を絞っておいた。
着替え終わったかっちゃんが、カーテンを開けてかっちゃんの体操服を差し出してきた。

「これ、着ろ」
「え、う、うん」

カーテンをひいて中で、濡れたコスチュームと下着全部脱ぎ捨てた。身体を拭いてかっちゃんの体操服に袖を通す。バスタオルで、濡れたコスチュームを包み込むようにして手に持った。
外に出るとベンチに座ってるかっちゃんと目があった。バスタオルを奪われてかっちゃんのバスタオルと一緒に袋に入れられた。

「持って帰っておくから後で俺の部屋にコスチューム取りに来い」
「う、うん」

私はとりあえず女子更衣室に行くため、入り口から顔を少し出して廊下に誰もいないことを確認した。よし、誰もいない!
飯田くん並みの全力疾走で廊下を駆け抜けた。

女子更衣室にはもう誰もいなかった。
かっちゃんにされた、あの行為の意味はよくわからないけど、かっちゃんに触れられたところが熱くて溶けてしまいそうで仕方なかった。発目さんに触れられてるかっちゃんを見た時の嫌な気持ちはもうどこかへ消えてしまった。ドキドキと速くなる鼓動に胸を押さえて、私はしゃがみこんだ。



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