届かなかった伸ばした手



洸汰くんが必死でしがみついている。森の中でいつ別の敵に遭遇するか分からない。急がないと。私は洸汰くんを背負って森の中を全速力で走っていた。

「もう・・・すぐそこだ」
「おい!あれ!」

洸汰くんが、相澤先生を見つけて声を出した。

「先生!相澤先生っ!」
「緑・・・!!」
「先生!良かった!大変なんです。伝えなきゃいけないことがたくさんあるんです!けど、とりあえず私マンダレイに伝えなきゃいけないことがあって・・・洸汰くんをお願いします。水の"個性"です。絶対に守ってください!」

しゃがんで、洸汰くんを地面に降ろした。怖い思いをした洸汰くんを抱きしめてあげたかったけど、折れた両腕ではできない。相澤先生に託したからもう安心だろう。
私はマンダレイの元へ!

「お願いします!!」
「待て、緑谷!!その怪我またやりやがったな」
「あ・・・いやっでも」
「だから彼女にこう伝えろ」

私は相澤先生の言伝を確かに聞いた。全力でマンダレイと虎さんの元へと走る。
広場ではなんとか二人が敵を抑えているが、決着はついていなかった。ステイン狂いのスピナーがマンダレイに斬りかかろうとしている。
私は空高く跳んでスピナーの武器を両脚で吹き飛ばした。

「マンダレイ!!洸汰くん無事です!」
「君・・・」

私は着地し損ねて転がった。

「いっったあ!!!相澤先生からの伝言です!テレパスで伝えて!!"A組B組総員、プロヒーローイレイザーヘッドの名に於いて戦闘を許可する!!"」

すぐに、マンダレイはテレパスで皆に伝えてくれた。

「伝達ありがと!でも!すぐ戻りな!その怪我尋常じゃない!」
「いやっ!すいません!まだ!もう一つ伝えてください!敵の狙い、少なくともその一つ。かっちゃんが狙われてる!テレパスお願いします!」

走りながら大声でマンダレイに伝えた。そして虎さんと敵が戦っている横を駆け抜ける。

「かっちゃ・・・誰!?待ちなさい!ちょっと!」

私は止まってる暇はない。急いでかっちゃんの所へ行かないと。かっちゃん!!!!

走ってる途中銃声のような音と金属音が鳴り響いた。皆どうなってるの!?かっちゃんたちは肝試しで二番スタートだった。動いていないならそう遠くにいないはず。

木の影から、何か黒い手のようなものが飛び出してきた。突然のことに、避けようとするが両腕の痛みが来て方向転換がうまくできない。手が伸びてきて地面を打ち砕いた。

「っあ・・・!」

気がついたら、障子くんの背中に担がれていた。

「障子くん・・・!?」
「その重傷・・・もはや動いていい体じゃないな。友を救けたい一心か。呆れた奴だ・・・」
「しょ、障子くん、今のって・・・」
「ああ。敵に奇襲をかけられ俺が庇った。しかしそれが奴が必死で抑えていた"個性"のトリガーとなってしまった。ここを通りたいならまずコレをどうにかせねばならん」

と、常闇くん。体育祭のとき教えてくれた彼の"個性"。それは闇が深いほど攻撃力は増すが、獰猛になり制御が難しくなるということ。

「俺からっ離れろ!!死ぬぞ!!」
「常闇くんっ!!!ど、どういうことなの障子くん」
「しっ!静かに・・・マンダレイのテレパスを受けてすぐに警戒体制をとった。直後背後から敵に襲われた。変幻自在の素早い刀だ。俺は常闇を庇い腕をかっ切られつつも草陰に身を隠した」

障子くんは私を背負い直して、右腕全体で包み込んでくれた。私が障子くんに掴まれないからだ。そして声を潜めて、常闇くんから距離をとった。

「え、腕!?大丈夫なの?」
「なに傷は浅くないが失ったわけじゃない。斬られたのは複製の腕だ。しかしそれでも奴には堪えられなかったのか抑えていた"黒影"が暴走を始めてしまった・・・」

常闇くんは黒影に全身を覆われているが必死にもがいているのが時折見える。抗ってるんだ。

「俺のことは・・・いい!ぐっ・・・!他と合流し、他を救け出せ!!静まれ、黒・・・影!!」

もがき苦しむ常闇くんを置いてはいけない。それは障子くんも私も同じ思いだった。どちらか選ばなきゃいけないなら、私は常闇くんもかっちゃんも両方救けたい!!
複製腕を囮にして、黒影を誘導してかっちゃん、轟くんの元へいく。二人もしくはどちらかの炎で黒影を抑えてもらうのが今考えられる最善の策だ。
障子くんに伝えて、行動に移す。

肝試しのルートを黒影を誘導しつつ進んでいく。ルートの途中で、敵と交戦しているかっちゃんと轟くんを見つけた。

「かっちゃん!!!!!」
「なまえっ!?」
「障子と緑谷と・・・・・・常闇!?」

障子くんの複製した口が叫んだ。

「早く"光"を!!常闇が暴走した!!」

黒影は、動く敵に反応し一瞬で撃破した。あまりの速さと威力に慄いてしまう。かっちゃんと轟くんの炎で黒影は悲鳴をあげて小さくなり常闇くんの体の中へと逃げていった。
そして、かっちゃんが狙われていることを説明した。プロヒーローのいる施設が最も安全だろう。だから私たちはかっちゃんを護衛しながら施設に戻る。それがミッションだ。

かっちゃんは障子くんの背中にいる私を見て顔が険しくなった。あと、周りを囲まれて護衛されてるのが不本意なのか「守るな!」と叫んでいる。
それからかっちゃんが、障子くんの代わりに私のことを背負うと言ったのだが「爆豪が狙われてる以上、背負っていると緑谷まで狙われる可能性がある」と皆に説き伏せられていた。
それには納得したようで、小さく舌打ちをしていた。

「かっちゃん、ありがとう。大丈夫だよ」
「どこが大丈夫なんだよ、バカかてめェは。そんなボロボロにのくせに・・・」

かっちゃんが苛立っているのがわかる。かっちゃんの命が危ないかもしれないってときに私の心配をしてくれている。

走って施設に向かう途中、麗日さんと梅雨ちゃんに出会った。女の敵がこちらを見て逃げて行ったのだが、私と目が合って恍惚の表情を浮かべていたのが気になる。なんなんだ。
それに麗日さんは怪我を負っていた。命に別状はなさそうだが心配なことに変わりはない。

「麗日さんケガを・・・!!」
「大丈夫!全然歩けるし。ってゆうか、なまえちゃんの方が」
「立ち止まってる場合か。早く行こう」
「とりあえず無事で良かった・・・そうだ一緒にきて!私たち今かっちゃんの護衛をしつつ施設に向かってるの」

その言葉に麗日さんと梅雨ちゃんが不思議そうな顔をする。

「ん?」
「爆豪ちゃんを護衛?その爆豪ちゃんはどこにいるの?」
「え?何言ってるの。かっちゃんなら後ろに・・・」

振り返ったけどそこに居るはずのかっちゃんの姿はなかった。
そして木の上から声が降ってきた。

「彼なら俺のマジックで貰っちゃったよ」
「!!」
「こいつぁそちらにいるべき人材じゃねえ。もっと輝ける舞台へ俺たちが連れて行くよ」
「ーーー!?っ返せ!!」
「返せ?妙な話だぜ。爆豪くんは誰のモノでもねぇ。彼は彼自身のモノだぞ!エゴイストめ!それともなんだお前、爆豪くんの恋人かなんかなのか?」
「ちがう!けど、返せ!!」

轟くんが、凍らせようとするが飛び上がり回避された。

「・・・!!爆豪だけじゃない常闇もいないぞ!」
「常闇くんはアドリブで貰っちゃったよ」
「この野郎!貰うなよ!!」
「緑谷落ち着け!」

轟くんが追撃するがひらりと交わされる。

「開闢行動隊!目標回収達成だ!短い間だったがこれにて幕引き!!予定通りこの通信後5分以内に"回収地点"へ向かえ!」
「幕引きだと・・・」
「ダメっ!!!かっちゃんと常闇くんを返せ!!」
「絶対逃すな!!」

追いかけるも、逃げ足が速くて追いつけない。
飯田くんがいればと麗日さんが言った。そんなこと言ってる場合じゃない。今やれることを考えるんだ。諦めちゃダメ。

「追いついてかっちゃんと常闇くん取り返さなきゃ」
「しかしこのままでは離される一方だぞ」
「麗日さん!私たちを浮かして!早く!!そして浮いた私たちを梅雨ちゃんの舌で思いっきり投げて!!障子くんは腕で軌道を修正しつつ私たちを牽引して!麗日さんは見えてる範囲でいいから奴との距離を見計らって解除して!」
「待ってよ、なまえちゃん。その怪我でまだ動くの・・・!?」

轟くんに残ってろって言われたけど痛みなんか今知らない。仲間を、かっちゃんと常闇くんをを取り返さないと!

「動けるよ!早くっ!」
「なまえちゃんせめてこれ!」

そういって麗日さんが上着を脱いで着せてくれた。

浮かせて貰って梅雨ちゃんに投げ飛ばしてもらった。空気を切り裂くような滑空だ。奴に追いついたところで麗日さんの個性は解除された。
三人で敵を地面にねじ伏せる。
私たちが降り立った場所は、敵の集合地点だったようで、何人もの敵たちがいた。

「知ってるぜこのガキ共!!誰だ!?」
「Mr.避けろ」

皮膚が継ぎ接ぎされた男が炎を手から放った。私は右腕がその炎によって焼け焦げた。

「うっ、!あつい」
「死柄木の殺せリストにあった顔だ!」
「トガですなまえちゃん!さっき思ったんですけどもっと血が出てた方がもっとかぁいいよなまえちゃん!!」
「はぁ!!?」

トガと名乗る女に飛び道具のようなものを投げつけられ避けるが、飛びかかってきて押さえつけられた。ナイフを振りかぶって突き刺そうとしている。
女を足で突き飛ばして距離をとる。

障子くんが、先ほどの炎の攻撃の最中に、敵から常闇くんとかっちゃんと思われる球のようなものをこっそり回収していた。
そのまま逃げようとするが、目の前に黒いモヤが現れて敵たちが飲み込まれて行く。USJ事件の時の黒いモヤだ。ワープの敵だった。

「悪い癖だよ。マジックの基本でね。モノを見せびらかす時ってのは・・・見せたくないモノがある時だぜ?」

障子くんの手の中の球が爆発した。ダミーだったのだ。圧縮して閉じ込めるような"個性"なのかもしれない。

「くっそ!」

マジシャンみたいな奴がワープゲートに入っていくとき、草むらからレーザーがでて、奴の顔に直撃した。
今しかない!
全員でかっちゃんと常闇くんの球を奪いに走る。手を伸ばすが腕の痛みが強くて球まで届かなかった。
一つは障子くんが回収したが、一つは敵に奪い取られてしまった。

「哀しいなぁ轟焦凍。確認だ"解除"しろ」

私たちのところで元に戻ったのは常闇くんだった。かっちゃんは黒いモヤの中で首を掴まれてる。

「問題、なし」
「かっちゃん!!!かっちゃん!!!」
「来んななまえ」

ズズズと音を立てて、黒いモヤが消えていった。

「あ・・・ーーーっぁぁあああっ!」

かっちゃんを取り返せなかった。救けられなかった。最後にみたかっちゃんの目が忘れられない。悔しい。目の前に居たのに。すぐ手の届く場所に居たのに、腕が痛みのせいで動かせなかった。自分の身体なんかよりずっとかっちゃんのほうが大事なのに。私は無力だ。

完全敗北だった・・・


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