命を賭して



脅かす側先行はB組で、私たちA組は二人一組で三分置きに出発してルートの真ん中に名前の書いたお札があるからそれをとって戻ってくるという内容だった。
え、ちょっと待って。二人一組ってことは・・・クラス20人中5人が補習に行ったので

(20-5)÷2=7あまり1

小学生でも分かるよね。一人余るじゃん。私はクジ運がないのよ。
頼むからビビりじゃないタフな人とペアにしてください!と願いを込めて引いたけど、神様は残酷だ。

「私が余る運命なの・・・?昨日カレーを残した罰なの?」
「くじ引きだから・・・必ず誰かこうなる運命だから・・・」
「うぅぅぅ。ピクシーボブ!もう棄権してもいいですか?私多分道中で死にます」
「ねこねこねこ、棄権するなら補習に行くことになるにゃん。直談判して誰かにもう一回行ってもらってもいいよん」 
「補習は嫌です!か、かっちゃん私と一緒にもう一回肝試し行ってくれませんか?」
「・・・」

顔面蒼白になってる自信がある。指名されたかっちゃんは仏頂面で黙ったままだ。それをみた峰田くんが嬉々として手を挙げて「爆豪、嫌ならオイラが行ってやるよ!」と言ってくれている。峰田くん・・・!ありがとう!と言おうとしたらかっちゃんの手が爆発して峰田くんが吹っ飛んでいった。この光景何度か見てる気がするな。
ピクシーボブが神妙な面持ちで頷いている。

「なるほど、学生時代から相手をみつけておくべきだったのか」
「か、かっちゃん、だめ?」
「・・・しゃーねぇなぁ。行ってやる」

その一言にパァッと明るく笑顔でお礼を伝えたらかっちゃんがそっぽを向いてしまった。
嫌そうだけど一緒に行ってくれるならもはや何でも良い。

いよいよ始まる肝試しが怖すぎてかっちゃんの隣へ行き、Tシャツの裾を掴んでいたら額をペシンと叩かれた。怖い時かっちゃんに掴まってたらたら安心するからつい頼ってしまう。私の震えっぷりをみた麗日さんが「すごい!人間ってこんなに震えられるんだ!」と言って感嘆していた。もう既にこんななのに、驚かされたら間違いなく死ぬ。

かっちゃんは2組目なので私を引き剥がして行ってしまった。掴まる人が居なくなって私は、マンダレイの尻尾にさりげなく掴まっていたのだがすぐにバレた。マンダレイが頭を撫でてくれた。
3組目の耳郎さんと葉隠さんのペアが大絶叫している。5組目の麗日さん梅雨ちゃんペアも行ってしまった。
はやくかっちゃん帰ってきて・・・

なんだか周りが焦げ臭くなってきた。

「何この焦げ臭いの」
「?」
「黒煙・・・」

木の影から何者かが飛び出して、ピクシーボブの顔面を棒状のもので殴り、地面にそのまま叩きつけた。

「何で・・・万全を期したハズじゃあ・・・何で敵がいるんだよォ!!!」
「ピクシーボブ!!」
「やばい!」

敵の突然の登場に慌てる皆。待って、洸汰くんが居ない。きっと、ひみつきちに独りでいるんだ。

「ご機嫌よろしゅう雄英高校!!我ら敵連合、開闢行動隊!!」
「この子の頭潰しちゃおうかしらどうかしら?ねぇどう思う?」
「させぬわ!このっ」

虎さんが戦闘体制に入ろうとするが、敵が諌める。

「待て待て早まるなマグ姉!虎もだ落ち着け。生殺与奪は全てステインの仰る主権に沿うか否か」

ステインの信者のようだ。言われてみれば、ステインのようなマスクをつけている。

「申し遅れた。俺はスピナー。彼の夢を紡ぐ者だ」

スピナーという敵は武器に巻いていた布を外して構えた。刀が何十個も連なって一つになっている。どういう仕掛けなのかわからないから迂闊に近づけない。

「何でもいいがなぁ貴様ら!その倒れてる女・・・ピクシーボブは最近婚期を気にし始めててなぁ。女の幸せ掴もうって、いい歳して頑張ってたんだよ。そんな女の顔キズモノにして男がヘラヘラ語ってんじゃあないよ」

それを聞いたスピナーが嘲笑いながら走り出した。こちらに向かってくる!

「皆行って!!良い!?決して戦闘はしない事!委員長引率!」
「承知致しました!行こう!!」

ダメだ、洸汰くんを探さないと。

「・・・飯田くん先行ってて」
「緑谷くん!?何を言ってる!?」
「緑谷!!」

マンダレイは辺りを伺っている。きっと洸汰くんを探してるんだ。

「マンダレイ!私、知ってます!洸汰くんがいる場所」
「どこなの!?」
「説明してる暇はありません。私が洸汰くんを迎えに行って戻ってきます!必ず連れてきます」

スピナーがマンダレイに向かって走ってくる。

「っ!!ごめんね、お願いできるかしら。こいつらは私と虎二人で抑える!」
「わかりました!」

私は走り出した。ひみつきちは案外近いのだけど、かなり高い場所にある。のんびり道を登ってたら間に合わないかもしれない。
ワン・フォー・オールを使って走り、壁を駆け上った。敵がいる!洸汰くんを狙っている。
間一髪のところで洸汰くんを掴み、攻撃から逃れた。地面を転がるがすぐに立ち上がり洸汰くんの前に立つ。

「何で・・・!?」

洸汰くんは恐怖で私が現れたことにも驚いている。敵はマントをなびかせてニヤリと笑った。

「んん?お前はリストにあったな」
「ゲホッ、ゴホッ!ハッ」

洸汰くんを、適と接触させない為に来たのに、ひみつきちにピンポイントで敵がいるなんて。しかも今のでスマホが壊れた。誰にもこの場所を知らせずに来てしまった。となると前みたいに増援は望めない。
どうする?一人でなんとかこの敵を、洸汰くんを守りつつやれるかどうか・・・
洸汰くんが無事か気になってチラリと後ろを振り返ったら、涙をいっぱいこぼしてる洸汰くんと目があった。
やれるかどうかじゃない、やるんだ。

「だっ、大丈夫だよ洸汰くん」

私一人で!!

「必ず助けるから」

全身にワン・フォー・オールを行き巡らせる。5%だ、5%を意識する。敵がゆっくりと歩いて近づいてくる。私たちの後ろは崖で逃げ場はない。

「必ず助ける・・・って?はぁははは!さすがヒーロー志望者って感じだな。どこにでも現れて正義面しやがる。緑谷なまえってやつだろおまえ?ちょうどいいよ。おまえは率先して殺しとけってお達しだ。なかなか可愛い顔してっから殺すの惜しいけどなぁ。じっくりいたぶって可愛がってやっから、血を見せろ!」

身体を低くして跳躍してきた。筋肉が皮膚から飛び出している。こいつも力の増強型の個性だな。構えるが壁に吹き飛ばされる。

「あ、いけね。そうそう。知ってたら教えてくれよ。爆豪ってガキはどこにいる?一応仕事はしなくちゃあ・・・」

か、かっちゃん?なんで、かっちゃんを狙ってるの?

「よっ!!!!!」

ものすごいパワーで撃ち込まれる。地面まで抉れている。しかも今の衝撃で左腕が折れた。

「答えは"知らない"でいいか?いいな?よし、じゃあ・・・遊ぼう!!」

お腹に蹴りを入れられ、回転しながら壁にぶつかり地面に転がり落ちた。

「はっはは!血だ!いいぜ、これだよ楽しいや!何だっけ!?かならず救けるんだろ!?何で逃げるんだよ。オッカシイぜお前!!さぁ楽しませてくれや。適度にいたぶったら、くたばる前に女としても楽しませてもらうぜ。血まみれの女って最高だろ?」
「ぐっ」

あの筋みたいな"個性"。なんて速さと威力なんだ。今はかっちゃんの心配より目の前の敵のことを考えなきゃ。集中!右手で撃ち込む。

5%デトロイトスマッシュ

「なんだ?それが"個性"か!?いい速さだが、力が足りてねえ!」
「ぐあっ」

起き上がらないと。洸汰くんを守るんだ。
今の衝撃で肋骨いったかも。呼吸するのが苦しい。

「俺の"個性"は筋肉増強。皮下に収まんねぇ程の筋繊維で底上げかれる速さ!!力!!何が言いてぇかって!?自慢だよ!!つまりお前は俺の完全な劣等型だ。わかるか俺の今の気持ちが。笑えて仕方ねぇよ!必ず救ける!?どうやって?実現不可のキレイ事のたまってんじゃねぇよ!自分に正直に生きようぜ!」

敵は左手を振り上げた。もう一発くらったら、肺に折れた肋骨がささって致命傷になるかもしれない。
コツンと石が転がる音がした。

「ウォーターホース・・・パパ、ママもそんな風にいたぶって殺したのか・・・!」
「ーー・・・!!洸汰くんだめ」

敵は洸汰くんを振り返り近づいていく。

「ああ・・・?マジかよヒーローの子どもかよ?運命的じゃねぇの。ウォーターホース。この俺の左眼を義眼にしたあの二人だ」
「おまえのせいで、おまえみたいな奴のせいで!いつもいつもこうなるんだ!!」
「ガキはそうやってすぐ責任転嫁する。悪いのは出来もしねぇことをやりたがってたてめェのパパとママさ!」

敵は洸汰くんに向かって腕を振り上げた。私は起き上がって走った。洸汰くんに手出しはさせない!

「っとなったらそうくるよな!?ボロ雑巾!」
「悪いのおまえだろ!!」

スピードも劣る。ダメージも与えられない。こいつは強い。それにここに救けは来ない。なら、筋繊維に折れた左腕を絡めて、撃つ!!

「これで速さは関係ない!」
「で、何だ!?力不足のその腕で殴るのか!?」
「できるできないじゃないんだっ!ヒーローは!!命を賭してキレイ事実践するお仕事だ!」

ワン・フォー・オール100%!!

撃ち込んだ衝撃で洸汰くんが吹き飛びそうになって慌てて服を噛んで引っ張り上げた。

「うわぁぁあ!?」
「ごめん、吹っ飛ばして。施設に行こうこっからは降るだけだから近・・・」

ガラガラと岩が崩れ落ちる音がして振り返ると筋繊維の繭の中から敵が現れた。
嘘だ・・・100%で撃ったのに。オールマイトの力なのに!私の右腕は折れてもう使えない。

「テレフォンパンチだ。しかしやるなぁ!緑谷なまえ・・・!」

テレフォンパンチ・・・。撃つのが分かって反応したってことか。それでも100%に反応できるなんて、どんだけの反射速度もってんだこいつ。

「くっ来るな!」
「やだよ、行くね俄然。お前気に入ったよ連れて帰りてぇな」
「なっ、な、何がしたいのよ!敵連合は、何が!」
「知るかよ。俺ァただ暴れてぇだけだ。ハネのばして"個性"ぶっ放せれば何でも良いんだ。覚えてるか?さっきまでのは遊びだ。俺言ってたよな!?遊ぼうって!やめるよ。遊びは終いだ。お前強いもん!こっからは、本気の義眼だ」
「洸汰くん、つかまって!!!」
「え!」

洸汰くんが背中につかまったのを確認して足に力を溜めて跳躍する。私たちがいた場所は砕け散ってなくなっていた。さっきまでの速さと力が比べ物にならないくらいで、ゾッとした。
さっきまでは本当に遊びだったんだ。遊び感覚で人を殺そうとしている。

「はは、ガキのくせに発育いいな」

私の服はもうビリビリに破けまくって、服の隙間から下着が見えてる状態になってしまった。けど、そんなこと言ってる場合じゃない。
施設まで戻れば相澤先生がいるハズ。相澤先生に個性を消してもらえれば勝てる。ビビるな私。今ここで戦って、勝つしかない。救けるんだ洸汰くんを。思い出せ私の原点!!!

「下がってて洸汰くん。離れすぎると的になる。うん、7歩くらいで・・・。ぶつかったら全力で施設に走るんだ」
「ぶつかったらって・・・おまえ、まさか!ムリだ逃げよう。おまえの攻撃効かなかったじゃん!それに、両腕折れて・・・」
「大丈夫」

敵は相変わらずニヤニヤと気持ち悪い笑顔を浮かべている。そして私へと覆い被さるように攻撃してきた。

ワン・フォー・オール100%デトロイトスマッシュ

迎え撃つが痛い。痛くてたまらない。けど、大丈、大丈夫だ。洸汰くんは私が絶対守る。

「ここから後ろには絶対行かせない!!から走れっ!!!走れ!!!」
「んのガキが、てめェ!最っ高じゃねえか!!俺のおもちゃになれ」
「うっるせええええええええ!」
「血ィイイ見せろやぁ!!!潰れちまえ!!!」

力で競り負けそうになっているとき、洸汰くんがあれほど嫌っていた"個性"で水を出した。ダメ、はやく逃げて洸汰くん。

「後でな!な!?後で殺してやっから、待っ・・・!?」
「ころさせてええええったまるかぁああああっ!!」

ワン・フォー・オール1000000%
デラウェア・デトロイトスマッシュ!!!

完全に相手の身体を持ち上げてぶっ飛ばした。岩壁に敵がめり込み動かなくなった。ボロボロの腕で撃ったから威力は落ちてただろうけど、それでも相当なダメージを与えれたはず。すぐには起きないだろうし、起きてもまともには動けないだろう。

「何でっ!!何も知らないくせに。何でっそこまで・・・」

だめだ。フラフラする。倒れてたらダメだ。

「まだやることがある」

踏ん張って立ち歩き出すと、洸汰くんが駆け寄ってきた。

「そんなボロボロで何をしなきゃいけねえんだよ!」
「もしこの夜襲に来た敵が全員このレベルならみんなが危ない。その上狙いは私たち生徒かもしんない。そのことを相澤先生やプッシーキャッツに伝えなきゃ。私が動いて救けられるなら動かなきゃいけないでしょ。なによりもまず君を守らなきゃいけない」
「え?」
「洸汰くん、君にしか出来ないことがあるの・・・。森に火をつけられてる。あれじゃどの道閉じ込められちゃう」

しゃがみこんで洸汰くんの目線に合わせる。

「わかる?君のその"個性"が必要なの。私たちを救けてほしい。さっきみたいに。さ、おぶさって!まず洸汰くんを施設に預けなきゃ」
「その怪我で動けるのかよ!?」
「大丈夫。その為に脚を残したから!」

早くしないと。先ほどの敵はかっちゃんを探してた。嫌な予感がする。

かっちゃん・・・どうか無事でいて・・・

洸汰くんがしがみついたのを確認して、両脚に
力を入れて施設に向かって地面を蹴り上げた。



-31-







×
「#寸止め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -