白熱!ゲーム大会!?
「なまえちゃんも目が覚めたことだし男子の部屋行っちゃおー!!」
「「「おーーー!!!!」」」
芦戸さんが元気よく拳を高く突き上げて叫んだ。みんなもそれに倣って拳を掲げた。私は、かっちゃんに怒られないためにも、Tシャツを上から着た。かっちゃんが林間合宿行く前に無理矢理私の鞄に入れたTシャツ。かっちゃんの家の洗剤の匂いがする。
「おーい!男子ー!入るよー?」
「おっじゃましまーす!!」
みんなに着いて行くと、男子達は大部屋でみんなが枕投げしてた。一番最後に入った私は、モロに顔面に枕を食らって後ろに倒れかけた。瀬呂くんのテープのおかげで倒れなかったけど、心臓に悪い。
「わりぃ、緑谷!大丈夫か?」
「だ、大丈夫」
「もう体調大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫!ご心配をおかけしました」
「おいおい!緑谷ァ!なんでTシャツなんか着てんだよォ!キャミソールで現れるべきだろここは!!空気読めよ!空気を!!」
「え・・・だってかっちゃんがTシャツ着ろって怒るんだもん」
「だってもクソもあるかーーーッ!!!林間合宿での楽しみの一つと言えば女子の部屋着みることだろうがよ!考えたら分かるだろ!考えたら!!頼むからそれ脱いでくれよォォォ」
峰田くんにドン引きしながら、麗日さんの後ろに隠れた。
「あれ、そのTシャツ爆豪とお揃いか?」
「え?」
切島くんが私のTシャツを指差して言った。
「前、爆豪と遊んだ時おんなじTシャツ着てた」
「お揃いじゃないよ、これかっちゃんのだから」
そう言うと皆黙ってかっちゃんを見た。かっちゃんは部屋の隅でスマホをいじってたけど、般若みたいな顔でこっちを見た。怖っ。なんか悪いこと言ったかな。
切島くんと上鳴くんがニヤニヤしながらかっちゃんの肩を両サイドからつついた。
「やるなぁ爆豪!自分の服着せるのが趣味なのかー?おい!」
「おまっ!本当のところ緑谷とどこまで進んでるんだよ!」
「てめェらブッ殺す・・・表出ろや!!」
かっちゃんが掌で小さめの爆発を起こして叫んでる。遠慮がちなのは、プッシーキャッツの皆さんの建物だからかな。
「男子うるさーい」
「よし、女子も来たことだし皆で人狼ゲームでもしようぜ!!」
「いいねぇ!」
皆盛り上がるなか、かっちゃんはパスと言った。私は皆と一緒に参加してみることにした。白熱したゲームを制したのは人狼側だった。
盛り上がったところで、峰田くんが王様ゲームをしようと言い始めた。なんだか嫌な予感がするけど、みんなの前で流石に変態な命令は出さないでしょ。
峰田くんの執念を感じるゲームの火蓋が切って落とされた。
最初はしっぺをするだの、辛いものを食べるとか、膝枕とかそんな感じだったのに、峰田くんが王様になったときに、事件が起こった。
「5番が13番に紙越しにキスをしろ!なんで、オイラが王様じゃないときにこういう命令出してくれないんだよ!許せん!オラオラ!さっさと5番と13番名乗り出ろや!!!」
「5番誰〜!?」
「俺だ」
手を挙げたのは轟くんだった。そして、13番は・・・私だった。
「13番誰だよ!野郎同士のキスなんてみたくねぇぞ!?」
「あ、あの、私、です。13番・・・これ絶対にしないとダメ?」
「王様の言うことは絶対だぞ!!参加したからには拒否権はない!!王様はオイラだぞ!言うこときけよ!緑谷!」
「緑谷ァァァ!?女子キタァァァ!いや、ま、待て、爆殺されっぞ!」
女子は峰田くんへの批難の声をあげていた。
「なまえちゃん、嫌ならやめていいんだよ!ゲームなんだし」
「そうよ!緑谷ちゃん、峰田ちゃんの言うことなんて聞かなくていいのよ!峰田ちゃんだし」
「おい!待てよ、オイラの扱いひどくないか!?」
「今更かよ。爆豪もアレだしよ。峰田、この命令は取り消してやれよ」
アレってなんだ、アレって。切島くんの言ったことが気になるけど、私はそれよりもゲームに参加してないかっちゃんのことが気になってチラリと見た。壁に背中を預けたまま険しい顔をしてこちらを見てるだけだった。
その間に轟くんは迷うことなく私の前にやってきて、肩に手を置いて唇にキスをしようとしてきた。びっくりして、轟くんの顔を手で押し返した。
「ちょ!ちょっと、待って!紙越しなんでしょ!?」
「あ、そうか忘れてた」
「何しれっと普通にキスしようとしてんだよ、轟!油断も隙もあったもんじゃねぇ」
「俺は緑谷となら別に紙無しでしてもいい」
「・・・!?」
「あ゛ぁ?舐めプ野郎何言ってんだ殺すぞ」
轟くんの発言に私も皆も固まった。唯一かっちゃんだけが反応して、轟くんから私を奪い取るように手を掴んで部屋から引きずり出された。廊下に置かれたベンチに座らされる。
「か、かっちゃん」
「てめェ、なにゲームの流れでキスしようとしてんだよ」
私の手を握る手にギリギリと力が入る。
「なんか、嫌がったら空気悪くなるかなと思って・・・轟くんもショック受けるのかなって」
「空気悪くなるから誰とでもキスするのかよ」
「ち、ちがうけど」
「なまえこっち向け」
かっちゃんの瞳に私が映り込む。その瞳が近づいてくる。あ、確かこういうとき目をつぶるんだっけ?ゆっくりと目を閉じた。私の顎を持ち上げるようにして、顔に手を添えられた。なんか、これさっきの轟くんを彷彿させるな。え、キス・・・??・・・キス!?
ハッとして目を開けるとかっちゃんが呆れた顔してこっちを見て、髪の毛につけたリボンを指で弾かれた。
「バーカ」
「だ、だってかっちゃんこういう時目とじろって言ってたから・・・」
「・・・」
「あ、そういえば私を運んでくれたんだよね?ありがとう。かっちゃんがあの時居てくれて本当によかった」
「てめェは本当に世話のかかる奴だわ」
「ご、ごめん」
「俺が一生守り倒したるわ」
「え、そこまでお世話になり続ける訳には・・・。私、もっと強くなってかっちゃんのこと守れるくらいになるよ!」
「・・・・・・」
遠くから大人数のため息が聞こえて振り返った。かっちゃんもそれに気づいたみたいで、爆風でみんなを吹き飛ばした。みんな何してたんだろ。流石に廊下で大騒ぎしすぎたので相澤先生とマンダレイとピクシーボブが出てきて全員怒られ、そのまま廊下で腕立て伏せを1000回させられた。もう、腕が機能しないってくらいにバキバキに筋繊維が断裂している。明日には筋肉痛が襲ってくるかもしれない。
女子部屋に戻ってからは、恋愛トークに花が咲いていた。そして何故か私に質問が集中していた。
「なまえちゃんの初恋は?」
「4歳くらいかなぁ」
「相手は爆豪くんやろ?」
「え、なんで分かるの!」
「そりゃあねぇ」
芦戸さんと葉隠さんが「キャーーー」と叫んで布団でバタバタと足を動かしている。
「じゃあファーストキスはいつ?」
「んー、5歳くらい?」
「相手はもちろん爆豪ちゃんね?」
「うん・・・なんでわかるの?」
「そりゃあねぇ」
さっきからこの返しばかり返ってくる。
「なまえちゃん、爆豪くんのことどう思ってるの?」
「どうって、大事な人・・・かな。家族みたいな」
「なるほどね、異性としてはどうなの?」
「異性として・・・・・・」
顔がボッと真っ赤になってるのが自分でも分かる。改めて聞かれたらなんと言ったらいいかわからなくて枕に顔をうずめた。
かっちゃんは幼馴染でこれからもずっと一緒にいるんだと勝手に思ってたけど、かっちゃんにもし好きな人や恋人ができたら一緒に居られないし、ヒーロー活動も一緒にできないのかもしれない。そう思うと胸が少し痛くなって泣きそうになった。
私はこの胸の痛みの名前をまだ知らない。