電話越しの君よりも



私がグループトークに一括送信で位置情報を送ったことでみんな心配していたようで、みんなメッセージを送ってくれていた。返事しなくちゃね。

『皆心配かけてごめんね。もう聞いてるかもしれないけど、ピンチだったから咄嗟に位置情報送ったの。でも、もう大丈夫!無事です!』

送信するとすぐさま何人か既読になった。麗日さんから着信が来たので、松葉杖をついてロビーへと移動した。

『なまえちゃん、大丈夫!?今どこいるの?』
「麗日さん、ありがとう!大丈夫だよ心配かけてごめんね。今は保須総合病院ってとこに入院してるんだけど、もうちょっとしたら退院できるよ」
『大丈夫なら良かったよー。なまえちゃんも飯田くんも。アドレスだけ来たとき何かすごくドキドキしちゃったよ・・・』
「そうだよね、ほんとごめん。次は無茶しないから」
『うん、安静にね!また色々聞かせてね』
「また学校で!」

電話の向こうで、ガンヘッドの声が聞こえた。きっと麗日さんも忙しいはずなのに、こうやって電話してくれるなんて良い友達を持ったな。
ロビーのソファに腰掛けて、背伸びをしているとまたスマホが震えた。
誰だろ。画面にはかっちゃんと表示されている。

「も、もしもし?」
『おい、なまえてめェなんで電話繋がらねんだよ!!』
「ひっ!ごめん、さっきまで麗日さんと電話してたからかな」
『チッ!なまえ、無事なのかよ』

出た瞬間かっちゃんの声がキーンと響いて耳が痛くなった。かっちゃん電話越しでもすごい爆風出してそうなのが伝わってくる。

「うん、大丈夫だよ、ありがとう」
『救けにいけなくて、悪かったな・・・』
「へっ!?か、かっちゃん?本当にかっちゃん?」
『お前、頭も検査してもらえよ』
「いえ、確かにかっちゃんデス・・・そういや、かっちゃんはベストジーニストのとこ行ってるんだよね。どんな感じ?」
『その話はすんな』
「え、あ、うん・・・なんか、あった?』
『なんもねぇわ!』
「そ、そう?・・・あと少しで職場体験終わるね。はやく会いたいなぁ」
『・・・・・・』

え、なにこの沈黙。電波悪くなったのかな。

「あ、そう言えば、かっちゃんと電話するの初めてだね。すぐそこにかっちゃんの声が聞こえてきて、くすぐったいね」
『はぁ?何言ってんだよ』
「え、だからかっちゃんが耳元で喋ってるみたいだと思って」
『わーっとるわ。二回も言わなくていんだよ、バカ』
「かっちゃん怒ってる?」
『・・・怒ってねぇよ。まあ、なまえが無事ならいい。じゃあな』

そう言ってかっちゃんは電話を切った。かっちゃんですら電話してくるくらいだ。クラスのみんなにかなり心配かけちゃったなと反省した。

病室に戻ろうと思ったのだが、飯田くんにも麗日さんと通話して心配していたことを伝えようと思い、飯田くんと轟くんの病室を訪れた。

「あ、飯田くんさっきね、麗日さんがね!」
「緑谷」

轟くんに話しかけるのを静止された。黙って飯田くんをみると、飯田くんは浮かない顔をしている。何かあったのかな。

「飯田、今診察終わったところなんだが・・・」
「・・・??」

飯田くんが重たい空気を打ち破るように静かに話し始めた。

「左手後遺症が残るそうだ」

ヒーロー殺しにやられたところは腕神経叢という部位だったそうだ。手指の動かし辛さと多少の痺れで済んだのは不幸中の幸いだ。もう少しで完全に手が動かせなくなっていたかもしれない。しかも手術で治る可能性もあるらしい。
飯田くんは戒めとして、本当のヒーローになれるまで左手は残すと言った。
あの時もっと強く言っていればよかったのか。いや、飯田くんはもう受け入れている。私が謝るのは違う気がする。失礼なことかもしれない。

「一緒に強くなろうね」

飯田くんは何も言わなかったけど一度頷いた。
そのあと、轟くんが自分がハンドクラッシャーなのではないかと不安がっていた。体育祭のときの怪我は綺麗に治ったよと伝えても「呪いか?」と焦っている。もしかして、轟くんって少し天然なところがあるのかも。意外な一面を発見してしまった。麗日さんに次会ったら教えてあげよう。

こうして私の職場体験はヒーロー殺しとエンカウントして入院して終わってしまった訳だが、一つ収穫があった。常時5%ワン・フォー・オールを意識するってこと。
これが習得できれば私もかっちゃんに追いつけるかもしれない。

「短い間でしたがお世話になりました」
「何も世話してねぇ気がするぜ。"職場体験"もあれだったしな」
「いえ!発想のご教授と組手ぶっ続けのおかげでヒーロー殺し相手にも何とか動けました!」

コスチュームバックを両手に抱えてお礼を伝えるが、グラントリノの杖で右足を叩かれた。

「痛!!!」
「本気じゃないヒーロー殺し相手にだ。まァ・・・100%の一撃必殺を狙って外しちまう、なんてことにならず良かったとは言うべきかな」

でも右腕の骨にはヒビが入っていたのは、まだ焦りで力む、油断で力のコントロールがブレている証拠だと指摘された。まだまだ学ばなければ。
最後にグラントリノについて聞いたけど、お茶を濁す感じで肝心なことはオールマイトから聞けと言われてしまった。

「じゃあ以上!達者でな」
「あっ、はい!ありがとうございました!グラントリノ、お野菜も食べてくださいね!」

お辞儀をして、くるりと方向転換した。歩き出そうと足を踏み出したとき、グラントリノに声をかけられた。

「小娘!誰だ君は!?」
「え、えええ、ここにきて!?えっと、だから緑谷なまえ・・・」
「違うだろ」
「・・・???あ、"ヒーロー名"です!!」

グラントリノはニヤリとして事務所の中に入って行った。

最寄り駅に着いた時見慣れた後ろ姿を見つけた。かっちゃんだと思うんだけど、髪の毛が・・・どうしたんだろ。

「か、かっちゃん?」
「ぁあ゛!?」
「雰囲気違うけどやっぱかっちゃんだ。久しぶり?」
「こっちみんな」

かっちゃんに顔を掴まれて明後日の方向に無理矢理むけられる。

「えええええ!?な、なんで!?」
「髪、クセついちまって直んねえんだ」
「え、そのかっちゃんもかっこいいけど?」
「〜っ!帰るぞ」

先に歩いて行くかっちゃんを追いかける。ベストジーニストのところで髪の毛をピッタリタイトな感じにされちゃったらしいけどそれはそれで似合ってると思うんだけどな。
信号待ちでかっちゃんの髪の毛にそっと触れると、爆発音とともに元の髪に戻った。というか逆立ったと言った方がいいのか。触られるのそんな嫌だったのかな。

「も、戻ったね」
「・・・」

反応に少し困って笑うと、かっちゃんに髪の毛をぐしゃぐしゃにされた。
電話で話すより会って話すほうがいいな。顔が見れるしこうして触れることができるから。



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