雄英体育祭-前半戦



驚異のスピードで職場復帰した相澤先生により雄英体育祭が挙行されることが伝えられると、教室には歓声が湧き上がった。
敵に侵入されたばかりだが、逆に開催することで雄英の危機管理が盤石だと示すという考えらしい。
それに、私たちにとっては開催されるほうがメリットが多い。今やオリンピックは衰退していて、全国民の注目するイベントになってる雄英体育祭。ここで全国のトップヒーロー達の目に留まれば、ヒーローとしてのチャンスを掴むことができるのだ。高校三年間のうちに三回しかないチャンスこれを逃すわけにはいなかない。

昼休みになって盛り上がっているクラスメイトの中、麗日さんの様子がヘンだった。

「なまえちゃん、飯田くん・・・頑張ろうね体育祭」
「顔がアレだよ麗日さん!!?」

顔つきが麗かではなくなっている。どうしたと言うのだろう。気合が入ってるのは良いことなんだけど、それにしても雰囲気が違いすぎる。
そういや、麗日さんにヒーローを目指す理由を聞いてなかったな。食堂に向かう途中、話を聞いてみた。

「お金欲しいからヒーローに!?」
「究極的に言えば。なんかごめんね不純で・・・!飯田くんとか立派な動機なのに私恥ずかしい」

飯田くんが独特な動きで、麗日さんの話を肯定する。麗日さんはご両親のためにお金を稼いで楽をさせてあげたいという立派な動機だった。憧れだけじゃなく現実も加味した上での動機。何も恥ずべきことじゃない。麗日さん立派だよ。麗日さんが頼もしく見える。

「おお!!緑谷少女が、いた!!」

その時、曲がり角からひょっこりと顔を出したのはオールマイト。オールマイトは女子力高めにランチをお誘いしてきた。身体ゴツいのに、お弁当ちっちゃくてギャップがすごい乙女!と麗日さんがはしゃいでいる。
お弁当が小さいのは、敵に受けた怪我で胃全摘をしてるのから。一度にたくさん食べられないのだ。それを知ってるのは生徒では私だけ。何かあったのかな。

「ぜひ・・・」

オールマイトの活動限界時間は50分になってしまったらしい。私が落ち込んでいると、オールマイトはそれより体育祭のことを話そうと言った。私は未だにワン・フォー・オールの調整ができない。でも一度脳ミソ敵に撃った時、反動がなかった。今までとの違いは・・・初めて人に向かって使おうとしたこと、か。無意識のうちに力をセーブできていたのかもしれない。

「ぶっちゃけ私が平和の象徴として立っていられる時間って実はそんなに長くない」
「そんな・・・」
「悪意を蓄えている奴の中にそれに気づき始めている者がいる。君に力を授けたのは"私"を継いで欲しいからだ!体育祭、全国が注目しているビックイベント!今こうして話しているのは他でもない!!次世代のオールマイトの象徴の卵・・・君が来た!ってことを世の中に知らしめてほしい!!」
「はっ、はいっ!でも、どうやって・・・」

オールマイトは全力で自己アピールできる!と意気込んでいるが、私なんか現状目立ってないし、個性把握テストでは散々な結果だったし。ブツブツと独り言を言っていたら、オールマイトがひっくり返った。わたしはナンセンス界じゃ他の追随を許さないらしい。

「気持ちはわかるし私の都合だ。強制はしない。ただ・・・海浜公園でのあの気持ちをわすれないでくれよな」
「はい」

放課後、外に出ようとすると他学年や他の科の生徒が1-Aに集まっていた。敵情視察ってやつみたい。かっちゃんが他の人たちに喧嘩を売っているようで言い合いになっている。
体育祭の結果次第では、他の科の生徒がヒーロー科に編入することもあればその逆もまた然りらしい。

私は前にも増してトレーニングの時間を増やした。入学する前にしてたトレーニング内容じゃ物足りないと感じるようになっていて、少し成長したと実感する。でもこれに満足してちゃいけない。二週間後に迫った体育祭に真剣に取り組まないと。気の緩みで普通科に編入なんてことになっちゃいけないからね。

体育祭当日、控室で轟くんに呼ばれて席を立った。なんだろう。あんまり話したことないんだけどな。

「緑谷」
「轟くん・・・何?」
「客観的に見ても実力は俺の方が上だと思う」
「へ!?うっ、うん」
「おまえオールマイトに目ぇかけられてるよな。別にそこ詮索するつもりはねぇが、おまえには勝つぞ」

クラスの視線が集まっている中での宣戦布告。
固まってしまいそうになるが、私だって本気なんだから!

「轟くんが、何を思って私に勝つって言ってんのかはわかんないけど。私だって本気だよ!本気で獲りにいく!」

選手入場で1-Aがコールされて、私も前に進む。大歓声の中、テレビカメラも何台もあって緊張してしまう。ドキドキする胸に手を当てていると、かっちゃんがそれを見てハッと鼻で笑った。かっちゃんは余裕綽々といった感じだし、なんならポケットに手を突っ込んでて一見やる気なさげだ。
選手宣誓でかっちゃんが前に出る。ポケットに手を突っ込んだまま、俺が一位になると宣言してブーイングを食らっている。でもこれはかっちゃん自分を追い込んでるんだと思う。それだけ本気ってことだ。私も負けてられない。

障害物競走が始まった。スタジアムの外周4キロに渡ってコースさえ守れば何をしたって良いらしい。オールマイトの期待に答えたい。きっとテレビの向こうでお母さんも観てくれてる。
青のランプが光って一斉にスタートする。スタート地点からもう既にふるいにかけられている。轟くんが凍らせて他の科の人の殆どが動けなくなっている。
でも、私たちA組はわかってたから避けて前に進んでいく。第一関門のロボ、インフェルノが私たちの前に現れた。これは入試の時私がぶっ飛ばした0ポイント仮想敵だ。こんなもんがうじゃうじゃしてたら通れない。周りの妨害も気にしつつロボット攻略しなきゃ。
轟くんが倒した奴の装甲を拾い上げて抱えて走る。こんな序盤にワン・フォー・オールは使わない。ロボにわざと追尾させて、装甲で破壊した。
第二関門はザ・フォール。綱渡りをするのだが、落ちたら多分命はない。私は浮遊系の能力はないから地味に進むしかない。ズボンにロボの装甲を突っ込んだ。これ万が一ずり落ちたら終わるな、人として。そんなことにならないようにジャージのズボンの紐をぎゅっと結び直した。下をできるだけみないようにして縄をつたっていく。
アナウンスで轟くんが第三関門の終わり付近まで到着したことを知った。わたしはまだ第三関門の入り口だ。早く追いつかなきゃ。でも、これなら追いつける!

ロボの装甲をボディボードのようにして、地雷を集めて爆破させた。その爆風に乗って一っ飛び。だけど、轟くんとかっちゃんに足で負けそうになる。そこで最後にもう一発地雷爆発させて、二人をを吹き飛ばしスタジアムの中へと駆け込んだ。
地雷が思ったより爆発がすごくて、怖くなって泣きながらゴールした。泣き顔が全国に流れてしまったけど、オールマイトに向かって手を振った。

第二種目の騎馬戦。第一種目で一位になった私に与えられたポイントは1000万。めちゃくちゃ狙われるやつだ。しかも、自分たちでチームを組むらしい。私1000万の女だからかな、なんか超避けられてる・・・
かっちゃんは絶対一緒に組んでくれないだろうし、できれば個性を把握できてる人と組みたい。

「なまえちゃん!組もっ!」
「麗日さん!!いっ良いの!?多分私1000万ポイント故に超狙われるけど」
「ガン逃げされたらなまえちゃん勝つじゃん」
「過信してる気がするよ麗日さん」
「するさ!何より仲良い人とやった方が良い!」
「麗日さん、ありがとう〜!麗日さんの個性ともう一人である策を考えてたの」

飯田くんを誘いに行ったけど、飯田くんは私に挑戦したいと言って断られた。あと二人なんだけどな。サポート科の発目明さんという人が立場を利用したいからとチームになろうと誘ってきてくれた。

始まった騎馬戦。私たちの前騎馬は常闇くんだ。1000万ポイントのハチマキを額につける。麗日さんと発目さん、常闇くんに乗り出陣する。一斉に狙われるけど、最強の布陣だから私たち。発目さんのサポートアイテムで空へと飛んで、常闇くんの黒影で攻撃を薙ぎ払う。

「調子乗ってんじゃねえぞクソが!」

かっちゃんが騎馬から離れ飛んできて爆破しようとしてる。常闇くんの黒影でなんとか防げたけど、騎馬から離れるのもアリだなんて自由な校風にも程がある。
気がついたらA組の騎馬は殆どがハチマキを奪われて0ポイントになっていた。かっちゃんはブチ切れて「なまえの前にこいつら全員殺そう」と燃えている。
なんとか時間まで逃げ切りたいけど、そう上手くはいかない。轟くんが目の前にやってきた。
轟くんチームにあっという間に1000万ポイントハチマキを奪われてしまった。急いで取り替えそうと向かっていったけどできるか分からない。でも・・・私一人だけじゃなく、皆んなの思いを背負って戦ってるんだからここで敗退するわけにはいかない。
初めて個性を使った攻撃を、轟くんに当てずに空に向かって放つ。勢いに気圧された轟くんに隙が出来た。そこをすかさず手を伸ばしてハチマキを奪い取る。でもそれは1000万ポイントじゃなかった。落ち込む私に常闇くんがハチマキを差し出した。

「警戒の薄くなっていた頭の方のを頂いておいた。緑谷おまえが生み出した轟の隙だ」
「う、うそ・・・!常闇くん!」

『4位緑谷チーム!!』

これで、最終種目へ進出することができる。今日は泣きすぎて頭が痛くなりそうだ。
午後からの最終種目に備えて控室へと移動する。涙を拭いていたら後ろから肩を叩かれた。轟くんだ。

「緑谷、話がある。こっち来い」

腕を掴まれて人気のない通路へと引っ張られる。かっちゃんにしろ、轟くんにしろ、すぐ人を引きずるのやめてほしい。

「あの、話って何・・・?早くしないと食堂すごい混みそうだし、えと・・・」

轟くんが冷たい威圧感を放ち睨みつけてくる。目線だけで凍てつきそうだ。かっちゃんとは違う威圧感。轟くんが私の腕を離し、壁にもたれかかる。え、怖いんですけど、私何かしたっけ・・・

「気圧された。自分の制約を破っちまう程によ。なァ、おまえオールマイトの隠し子か何かか?」
「へっ!?違うよそれは。私はれっきとしたお父さんとお母さんの子だよ!って言ってももし本当に隠し子だったら違うって言うに決まってるから納得しないと思うけど、オールマイトとはそんなんじゃなくて・・・」
「・・・」
「あ、あの轟くん、なんで私なんかにそんなこと」
「そんなんじゃないってことは何かしらの繋がりはあるってことだな」

轟くんがなんで左側を使わないのかを教えてくれた。そして、火傷の理由も。轟くんが抱えてるものの大きさと私の大きさを比べるわけじゃないけど、あまりにも世界の違う話では正直ビビった。
目指す場所は同じでも、こうも違うものか。

「言わねえなら別にいい。お前がオールマイトの娘だろうが恋人だろうが。俺は右だけでおまえの上に行く。時間取らせたな」


「こ、恋人!?そんな訳ないでしょ!違うからね!ちょ、轟くん!それは絶対にないから!ちょっと待ってぇ。ねぇってば。やだ、誤解したまま置いていかないで・・・轟くん、聞いて!私、ずうっと救けられてきたの。さっきだってそう。私は誰かに救けられてここにいる。オールマイトみたいになりたくて雄英に来た。轟くんに比べたら些細な動機かもしれないけど、でも私だって負けらんないよ。私を救けてくれた人たちに応えるためにも」

うう、変な誤解与えるくらいなら隠し子って思われてるほうが良い。オールマイトが私みたいなちんちくりん相手にする訳ないって考えたら普通分かるでしょうが。轟くんの頭の中がどうなってるのかさっぱり分からない。畳みかけるように轟くんに向かって叫んだ。

「さっき受けた宣戦布告。改めて私からも。私も絶対貴方に勝つ!!」

轟くんはこちらを一瞥すると冷たい目のまま去っていった。
はぁぁ。ため息が出る。轟くん、すごい才能の持ち主なのに、なんで私なんかに構うんだろう。
ずりずりと背中を壁に預けて膝を抱えて座っていると、どこからともなくかっちゃんがやってきて無理矢理立たされた。轟くんが掴んでた腕のところをやたらゴシゴシ擦るもんだから痛い。

「か、かっちゃん!?痛いんだけど・・・」
「・・・」
「む、無視!?」

かっちゃんはそのまま無視して私を引きずるように食堂へと歩いて行った。今日はやたらと引きずられている。かっちゃんご飯一緒に食べるのかなと思ったけど麗日さんの元へ連れて行くと、私を置いてどこかへ行ってしまった。一体何だったんだろう。



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