「彼氏?」
「いやそんなんじゃないです。ただの幼馴染っていうか。」
「あっちはそーは思ってないんじゃないの?」
「…そんなことないです。」
「好きじゃないの?なまえは。」
「え、あの…。」
「素直になった方がいいんじゃない?」
………。
登坂さんの前でもブーブー音が聞こえてしまうぐらいにナオはLINEと電話を繰り返していて。私が勝手に電話切ったからその仕返しなんだって思ってた。
「別に私はナオのことなんて。」
「じゃあ俺と付き合わない?」
…は?突然テーブルの上の手をきゅっと握る登坂さんにドキッとする。突然の出来事に白目向きそうになるぐらいビビった。慌てて首を横に振る。
「私なんか釣り合わないです。」
「なんで?そんなの俺が決めるよ。」
「…いきなり言われてもその、」
「困るって?」
「はい。」
恥ずかしくて俯く私の手を登坂さんはそっと離した。くくくくくって笑う登坂さんに思わず顔を上げた。右眉をぴくりとあげて「ごめんごめん。」って。え、なに?
「つい可愛くてちょっとからかいたくなっちゃった。ごめん。いきなり言われてビビったろ?予想外の相手から付き合おうなんて言われてさ。」
「…あの、はい。」
「まぁそーいうことだよ。お前の頭ん中、その電話の相手しかねぇって事だろ。さっさと食って連絡してやれよな。」
ポンポンって登坂さんの大きな手に頭を撫でられてナオを思い浮かべた。別に登坂さんに言われたからって訳じゃない。でも確かに私の中で、ナオ以外の男の人は…―――受け付けないのかもしれない。
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