廊下ですれ違う時に「おっす!」なんて肩を叩いてくれるようになった岩ちゃん。学校では挨拶程度だからそんなにみんなにバレてないなんて思っていたのに、そんな私の考えは甘かった。
「みょうじなまえってこのクラス?」
名前を呼ばれて顔をあげると、岩ちゃん取り巻きのお姉様方。え、なに、なんで?
「顔、貸しなよ。」
まさかの展開にドキンと心臓が脈打った。有無を言わさず連れていかれたのは裏庭。ドカってまるで漫画みたいに肩を押されてその場に尻もちを着いた。
「目障りなんだけどーあんた最近。剛典と、」
「先輩、なにしてんの?」
「…剛典くん。…別になにもしてないけど。」
そこにいるのは岩ちゃんだけど、いつもみたいに柔らかい印象はなくて、物凄い殺気すら見える。私をゆっくり立たせてくれてそのまま後ろに隠すように前に立ちはだかった岩ちゃんはチッて舌打ちをした。え?嘘でしょ、王子が舌打ち?えええっ!内心吃驚したものの岩ちゃんはまだ先輩達を睨んでいて。
「じゃあ言っておきますけど、なまえのこと影で手出すなら俺、軽蔑しますから。」
「なによ、ちょっとかっこいいからってふざけんなよ、ガキのくせに!」
悔し紛れに走り去る先輩達に圧倒されつつも「大丈夫?」って岩ちゃんの声に顔を上げた。
「なんか、胸キュンスカッとみたい。」
そう言ったものの、胸キュンスカッとだとこの後は岩ちゃんからの告白が待ってるってわけで。慌てて首を横に振る。
「あ、違うの!別に変な意味じゃなくて…」
目の前に降りてくる岩ちゃんの顔に言葉すら止まる。近すぎてドキドキが止まらなくて、苦しい。一歩後ろに下がろうとしたら腕を掴まれた。
「なんで分かんないかな…。あの図書館使ってるのはなまえに会うためだって。いつも応援見に来てくれてた中になまえの姿を見つけた時はめちゃくちゃ嬉しくて。」
なに、なんの話?
「俺ずっとなまえのこと好きだったんだよ?気づいてないでしょ?」
「…知らない。だって名前、聞いたじゃん?」
「いや照れくさいし、」
「…え、混乱。岩ちゃんって」
「ね、付き合おう?」
ギュッて指が絡まる。人気者の岩ちゃんが、まさか私のこと好きだったなんて。本当の本当に待っていた告白に、私は大喜びで岩ちゃんの手を握り返したんだ。
この日から、ギャラリーが半分に減りました。
Thanks LOVE Mai ★
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