お花見上書き5

特にシートは用意していない。ただ桜の木の下を二人手を繋いでゆっくりと歩く。それだけでこんなにも幸せな気持ちになる。


「あーそういやミナンとこ、もう産まれそうみたいよ。」

「え、ももちゃん?この前臨月ってお腹かなり大きかったもんなぁ、そうだよね。ミナンもパパかぁ。」

「そう。なんかめちゃくちゃ色々買い揃えてて。」

「はは想像できない。そういやももちゃんつわり相当辛そうだったよね…。」

「あーうん、なんか。こはるは軽いといいなぁ。ミナン見てらんないって言ってたし。あでも俺はちゃんとずっと傍にいるからね?」


ヒヨコみたいに唇を尖らせて喋るけど、私妊娠してないから。サラリとすごい事言うなぁジェジン。やっぱりこの直球は私の心に真っ直ぐ届く。今はそんな気はないけど、私もいつかは…そう思ってはいるし。


「ふふ、もーちょっと先ね?」

「俺欲しい。こはるの赤ちゃん。早く欲しい!」

「…だってジェジンまだ学生だし。」

「来年就職するし。そしたらいつでも産めるよ?」

「待って、ストップ!それすごい嬉しいし、私もいつかはって思ってる。でも今はまだジェジンとの二人の時間を楽しみたい、ダメ?」


私の言葉にあからさまに表情を明るくさせる。パアーッてまるで言葉に出そうなくらい。そんなジェジンがやっぱりどう見ても可愛くて、繋がれてる指にキュッと力を込めた。同時にジェジンの視線が降りてくる。その瞳は熱をもっていて…


「あ、あそこ。」

「え?」

「いいから、ほら。」


手を引かれてジェジンが私を強引に連れ出す。そこは桜の道で、メイン通りから一本逸れているせいか人通りもなくまさかの隠れスポットみたいになっている。誰もこの空間に気づいていなくて、ここにはジェジンと私の二人きり。


「ここならキスしていいでしょ?」

「ん。」


私の返事を聞くか聞かないかで、ジェジンの唇が重なった。風に揺れて桜の花びらが舞い落ちる中、間近で聞こえるジェジンの甘い声と遠慮がちなリップ音。黒いジェジンの髪に指を差し込むとジェジンの私を抱く腕に力が込められた。おかしいな、桜見に来たはずなのに、私にはジェジンしか見えないや。


「俺も、こはるのこともうちょっと独り占めしてたい。」

「…え?」

「赤ちゃんはもう少し先でいいよ。」


ニコッと微笑むとまたおもむろにジェジンが近づいた。私も、もうちょっとこの関係でいたいよ。


Thanks LOVE potemomo ★

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