お花見上書き3

正面玄関を出ようとしたら「ヌナ!」不意に声をかけられた。振り返るとチャミがスッと片手を挙げる。うわ、ほんと絵になるなぁ、チャミは。背高いしスラッとしてて、なーんて内心思いながらも笑顔で近づくとブスッとした顔を私に見せた。あら、ご機嫌ななめ?


「どしたの?」

「ジュンスに怒ってくださいよ。ヌナにフラれて他の女に走ってからのジュンスは僕、あまり好きじゃありません。」

「…ジュンちゃんまた仕事しないの?」

「ええ、全く。四六時中ニヤニヤして帰るだけです。こんなんならヌナとくっつけておくべきでした。…俺としたことが。」


フンッて鼻息荒く息を吐き出すチャミは困った顔で私を見下ろす。そう言われても今更どうにもできないけどねぇ。


「明日ジュンスに説教してください。僕が言っても聞かないんで。」

「ユノに言ってもらった方がいいんじゃないの?」

「ユノヒョンは忙しいので。ヌナの役目です。」

「う、うん。分かった。明日ジュンちゃんに言ってみる。」


苦笑いで私はチャミの後ろにあった掛時計に視線を移す。その視線を見たチャミは片眉あげて軽くニヤリと笑った。


「ジェジンですか?」

「あーうん。」

「お花見のやり直しですか?去年は最悪でしたもんね、ジェジンにとっては。僕達もジュンスとユノヒョンの告白にヌナが泣いちゃってー。」


あの日を思い出すようにクシャってチャミが顔を崩して笑った。えーえーその節はお世話になりました。チャミがいなかったから素直になれてなかったって思うよ。


「チャミー。今度奢るからもう許して?」

「別にヌナに奢ってもらおうなんて思ってませんよ。うまくいってるならそれでいいです。ほら早く行ってください!じゃあね。」


軽く私の背中を押すチャミに手を振ると今度こそ私は正面玄関を出た。

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