お花見上書き2

「こはる、この書類訂正できる?」


定時間際にユノに言われて苦笑い。たぶんもう会社の外にはジェジンが来ている気がする。でも私のプライベートをここに持ち込むわけにはいかない。


「うん、大丈夫。直しておきます。」


そう言ったんだけどユノは立ち止まって私を凝視する。


「もしかして、この後約束ある?」


ギクリとしながらユノを見上げると、優しい笑みで私を見下ろしている。よく、分かったね、ユノってば。


「私また顔に出てた?」

「そんなことないけど、僕だから分かるんだと思う。いつも見てたから、こはるのこと。具合が悪いとか機嫌が悪いとか、だいたい分かるよ。こはるならね。」


ツンってオデコを指で突っつかれて、その内容に思わず赤面する。ユノってば相変わらずだなぁ。そーいうの考え無しで言っちゃうから普通なら女はみんな勘違いするよね、こんなの。
私のデスクに置いた書類が再びユノの手元に戻っていく。


「これは僕がやるからあがっていいよ。」

「いえやります!」

「いいから。ジェジン待たせてんだろ?」

「そうだけど。」


眉毛を下げる私を見てちょっとだけ微笑んだユノは、次の瞬間とんでもないことをしたんだ。

トンって、長い腕を伸ばして私の背もたれに腕を置く。椅子に座っている私に上から覆いかぶさるように屈むと、耳元で小さく告げた。


「それとも、流行りの不倫、する?」


サラリとセミロングの私の髪を指ですくってそこに口付ける。ドクンと心臓が音を立てたなんて。


「ふ、りんってユノ、そんな言葉どこで?」

「えー?流行ってんだよね?ユチョナが言ってたよ。」


ユチョン、ばかちん!マキにチクッてやる。ろくな大人じゃないわね、全く。それを鵜呑みにするユノもユノだけど。


「それ間違ってる。不倫は結婚した男女が別の相手を好きになることで、私はジェジンと結婚してないから、例えるなら…浮気?」

「なるほど、浮気ね。んじゃこはる、僕と浮気する?」

「もー。軽く言わないで!しませんったら、しません!」

「分かってるよ。ほんの少し悔しいから困らせたくなっちゃっただけ、みあね。ほら、もう時間だよ、早く行かないとこのままキスするよ?」


ずるいんだから。ユノには勝てない。私は小さく息を吐き出すと「お疲れ様です。」ユノに頭を下げてフロアから出て行った。

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