自分の本音を見せられる相手はどれ程いるのだろうか…?
「荒れてる?」
「………。」
ふはって笑って私の頭をクシャリと撫でる相手、レストランのオーナー哲也さん。滅多に現場に現れないものの、たまに顔を出すとこうして私の心を読むんだった。ジロリと哲也さんを睨むと「おーこわ。」サッと私から一歩下がった。でも、この人にだけは私は我儘でいられる、唯一の人だった。隆二に言えない愚痴をここで吐き出すことで自分の理性を保っているのかもしれない。
「じつは、同居人がいて。なんてゆうか…足りない。隆二が足りないんです。」
「同居人!?ちょっと会わないうちにすごい展開だねぇ。」
超他人事な哲也さんだけど、これでも心配してくれているのは分かっている。いや、半分以上楽しんでるけど!
「でも言えない、出て行けなんて。」
項垂れる私の頭を一つポンと撫でると、哲也さんが耳元で囁いだんだ。
「好きになってみれば?」
「はっ!?」
突拍子のない哲也さんの言葉に思わず眉間に皺を寄せた。だって今、好きになってみれば?そう言ったよね?え、なんで?素っ頓狂な声をあげた私を見てクスって余裕たっぷりに微笑む哲也さん。
「そしたら楽しくなるんじゃない?」
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