「やっぱ無理っすよね、こんなの。受け取れませんよね?俺の気持ちなんて。」
自嘲的に笑った俺は「冗談です、忘れてください。」そう言うとくるりと背中を向けて自分の部屋に向かって歩き出した。だけどトンって背中に温もりが重なる。…え?なに?どーなってる?
「酷い。私だってずっと気になってたのに。言うなんてずるい。隆二になんて言ったらいいの。」
嘘だろ。思わずくるりと半転して俺の背中に顔を埋めていた彼女の肩に手を置いて覗き込む。なんともいえない高揚した雪乃さんに心拍数が激しく上昇する。
「え、嬉しいよ、すげぇ嬉しい。だって俺たち両想い、なんだよね?」
「…うん。私も好き、岩ちゃんのこと。」
戸惑う雪乃さんの腕を引いてふわりと抱きしめた。俺の肩に顔を埋める雪乃さんを更に強く抱きしめる。
「でも隆二、どうしよう。」
「俺から言うから。」
「ダメ。あんな優しい人、傷つけられない。」
それは、そうだけど。
「けど、いつまでも黙ってられなくない?」
「大丈夫、できる。ね、お願い?隆二がいない時だけ、それじゃダメ?私ここ追い出されたら生きていけない。」
思いっきり懇願する雪乃さんに押されて俺は仕方なく頷いた。とりあえずは隆二さんに内緒でってことで。なにより雪乃さんを今ここで手放すなんてできなくて。それなら彼女の気持ちに従うしかないなんて、そんなことを思っていたんだ。
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