雪乃と一緒に風呂に入って上がってからリビングで2人でドライヤーをやりあいっこしていたらガチャっとドアが開いて疲れた顔の隆二さんが帰ってきた。俺達二人を見て一瞬固まったもののニッコリ微笑む。
「ただいま。」
「お帰り隆二!」
俺の傍から離れて隆二さんに駆け寄る雪乃に小さく舌打ち。思ったより帰りの早かった隆二さんに残念な気持ちになった。
「岩ちゃん明日俺達いないから。」
「…え?」
「雪乃、誕生日なんだ。だからちょっと出てくる。この家、好きに使っていいから。」
誕生日、なの?思わず雪乃を見ると隆二さんの影に隠れていて表情すら見えねぇ。
「別に今のままでいいのに隆二。私はここで、」
「ここで岩ちゃんにも祝って貰いたい?」
まさかの隆二さんの言葉にドキッとした。もしかして、俺達の関係、バレてる?隆二さんの視線がゆっくりと俺を捉えた。その目は知ってそうでもカマかけてそうにも思えて…。
「隆二、何言ってんの?」
雪乃の声に隆二さんがニコリと微笑んだ。ポンッて雪乃の頭に手を乗せて撫でて「冗談。岩ちゃん目当ての女の子もお店によく来てるって聞いたよ、臣に。」なんてそんな話題。隆二さんらしくない。
「隆二さん?」
「んー?」
「あの、」
「風邪ひくよ、早く乾かしなよ髪の毛、岩ちゃんも…雪乃も。俺も風呂入ってくるわ。」
…ヤベェ。二人して濡れた髪見られたのはまずかったかも。無言で立ち尽くしている雪乃に触れようとするとサッと避けられた。俺に背を向ける雪乃に胸がギュッと痛い。
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