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息が止まるというのか、時が止まるというのか、私は目が離せなくて…
みんなに囲まれてヘラヘラ笑う勇征ちゃんに、初めて胸がトクンと鳴る。
「ゆき乃、荷物持つよ! 」
振り返って私に手を差し出す勇征ちゃんに、健ちゃんを指差すと「あ、先越されたかー!」なんて笑うんだ。
その顔すら目が離せなくて。
なんか、変。立ち止まっていた私の隣、まこっちゃんが顔を覗き込むように勇征ちゃんからの視界を遮った。
「…金髪好き?」
「え?」
「だってなんかゆき乃、勇征のことガン見してない?」
「え?してないよ!」
「ほんとに?」
「うん、ほんとに。」
「じゃあいいや。行こ、」
スルリとまこっちゃんに手を繋がれて私は助手席に座らされる。一番後ろになっちゃんと朝海が座って。朝海の前に健ちゃん。その隣に勇征ちゃんが乗り込んだ。
「一応聞くけど、バレンタインのチョコはちゃんと用意してるんだよね?」
まこっちゃんの言葉に苦笑い。勿論チョコは用意してるけど、みんな同じ義理チョコというか友チョコで。朝海にも同じものを用意してきた。
「まこっちゃんが言うチョコは、いわゆる本命チョコってこと?」
「うん。当然!俺ゆき乃から貰えるって信じて待ってるから!」
ポンポンって頭を優しく撫でると、耳元のピアスを軽く触って満足気に微笑んだ。
平成最後のバレンタイン…何かが起こる予感がしたなんて。
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