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2月13日。朝から快晴だった。
待ち合わせ場所の駅につくとまだ誰も来ていなかった。卒業旅行でスノボーなんてありきたりだけれど、このメンバーならなんでも楽しめるんだろうって思う。
1人待っている私の元に現れたのは朝海と健ちゃん。なっちゃん…ではなく、健ちゃん。
「ゆき乃おはよ!」
ニッコリ微笑む朝海とその後ろで早く一服したそうな顔の健ちゃんが軽く手を振った。
「ピアス順調?」
朝海がふわりと耳元に手をやってそれを確認する。…イヴにまこっちゃんから貰ったピアスのプレゼント。あの日まこっちゃんに開けてもらったピアスが今もこの左耳に入っている。
「うん!」
「あたしも増やそうかなー。ゆき乃の見てたら開けたくなった。」
「俺が開けてやろうか?」
既に咥えタバコの健ちゃんがこのくそ寒いのにサングラスをかけてニンマリ。黒いライダースから伸びた指がふわりと朝海の短い髪を撫でた。
と、ちょうどその時駅の改札に姿を見せた朝海の彼氏のなっちゃん。朝海が肩にかけていたバッグをスッと取ると「はよ。」小さく言った。
「なっちゃんはイケメンなのに優男だなぁ。」
そう言うと健ちゃんが私のバッグを軽々持ち上げた。
「え、いいよ!私は。」
「俺もイケメンで優男だから、」
白い歯を見せて笑う健ちゃんが可笑しくて笑った所でプップー…ロータリーに大きなワゴン車が止まった。
一斉に振り返る私たちの視界に運転席から降りてきたまこっちゃん。相変わらずお洒落な格好と変な帽子を被っていて、私たちに手を振る。
男子は興味津々に車に近づいていって。
「ゆき乃、隣乗ってね!」
免許取り立てのまこっちゃんは常識知らずの新車で登場したから、らしいと思ってしまう。
「うん!勇征ちゃん遅いなぁ、あ、」
プルプル震えるスマホには、LINE通話で勇征ちゃんからの着信。
「もしもーし!」
『ゆき乃!?ごめん寝坊して、今向かってるから後、5分待って!』
走っているのか大きく吐息を漏らしながら勇征ちゃんの美声が耳元に届く。
「分かった。待ってる!気をつけてね!」
『うん、ありがと!』
ピッて通話を終了させて「勇征ちゃん後5分だって!」そうみんなにも伝える。
「勇征の奴、昼飯奢りだな、」
Sななっちゃんがボソッと言うとみんなが賛同した。
だけど、3分過ぎた所でリュック姿の勇征ちゃんが到着して…
「え、髪、どうしたの?」
思わず駆け寄ってそのふわふわの金色に触れた。だって休み前は真っ黒だったのに、目の前の勇征ちゃんの髪は金色に輝いている。
ちょっと赤い顔で「やっちゃった!」った笑う勇征ちゃんに胸がトクンと音を立てる。
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