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「ゆき乃?」
ハッとして隣を見ると赤信号でこっちを見ているまこっちゃん。
やば、フラッシュバックしてた。勇征ちゃんがあんなキラキラして現れるから。
あのキスの後、再び目覚めた勇征ちゃんは、あの出来事を綺麗さっぱり忘れていた。こっちは眠れなかったっていうのに。
だから私もなかったことにしようって、そう決めたんだ。
「まこっちゃん、スノボーできるの?」
「できるよ。」
「じゃあ教えて。」
「もちろん!」
社内はまこっちゃんが用意したであろう洋楽が大音量で響いていて、窓の外が雪景色に変わる頃、勇征ちゃんから意味不明なLINEが届いたなんて。
【露天風呂、混浴らしいよ、宿。一緒に入る?】
…なんだこりゃ。なんだこりゃ、馬鹿か、勇征ちゃん。危うく金髪に騙される所だったけど、そうはいくか。
実際、あの日から勇征ちゃんの行動を把握しないようにしているものの、時々こうして私に個人的な誘いをしてくるのは一体なんなんだろうか。
当たり前に既読スルーした私は、トイレ休憩で降りたサービスエリアで、勇征ちゃんから離れてまこっちゃんにピッタリとくっついていた。
特段気にすることもなく、勇征ちゃんは健ちゃんと話している。それが何だか無性に腹ただしく思えるけど、グッと我慢してまこっちゃんと一緒に串に刺さったビーフを食べる事にした。
「まこっちゃん、あーん。」
「あーん。」
パクッと串に刺さった肉を食べるまこっちゃんは可愛い。インナーカラーの青が目立っていて、色白の肌によく似合っている。
スケーターファッションなまこっちゃんは、大きな身体を更に大きく見せているのかダボッとした服を着ている事が多く、今日も一段と大きく見える。
「ゆき乃、飲む?」
ホット珈琲を片手に近寄ってくる金髪勇征ちゃんに首を振った。
「肉と珈琲なんて合わない!なっちゃんペプシ1口ちょーだい!」
反対側でペプシを飲んでいるなっちゃんの腕を取ると「はい。」シレっとペットボトルを手渡してくれた。
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