「保科ちゃん彼氏いんの?」
「…いないけど。」
「紹介して欲しいって奴いるんだけど、今夜空いてる?」
脳内で手帳の中身を思い描くものの今日って日に予定は何も入っていないのが浮かんだ。はぁ、なんていうか…寂しい。目の前にいるイケメンは同期の田崎くんで。うちの社きってのエースを背負って立つ男だ。人当りがよくて、老若男女誰からも好かれている人だった。もちろん私の周りでも田崎くんに憧れている田崎女子達は多い。本人は若い子好きで、年下ばっかに手だしているみたいだけど。そんな田崎くんにいきなりランチに誘われて何かと思ったら…。
「え、誰?うちの会社の人?」
「まぁ言っちゃえばそう。つーか保科ちゃんもよく知ってる奴だけど。」
「なにそれ、気になりすぎる。顔見知りってことだよね?なんか怖い…。」
「いやいやそんな変な奴じゃないし、直人くん!うわ、やべ、言っちゃったよ。」
苦笑いをするものの「まぁいーか。」なんてケロっと笑った。って、待って待って、直人くん!?それこそ吃驚なんだけど。
「…え、片岡くん?」
「そうそう、保科ちゃんと仲良くなりたいらしいよ。悪くないでしょ?」
ニッコリ微笑む田崎くんだけど、悪くないけど、なんだか変な感じだった。だって片岡くんは確かに同じ部署とかになったことはないけど、会社で会えば挨拶ぐらいはするし。確かに一緒に飲みに行ったことはないけど…。
「そーいうの人に頼んだりするようなタイプじゃないと思ってた。そもそも彼女いると思ってたんだけど。」
「地味にピュアだから分かってやって?」
確かにちゃんと喋ってみないと中身なんて分からない。もしかしたら清木場さんみたいに、違う一面が見えるのかもしれないし。光一と別れて早2週間、私は田崎くんの誘いにのった。