「俊ちゃん悪い、ちょっとトラブルあって何人か貸して貰えないかな?」
定時間際、営業部長の眞木さんが清木場さんのデスクに顔を出した。どうやら明日納品予定の品が手配ミスで来なくて、急遽別のものを作るとかで、空いてる人何人でもいいから手を貸して欲しいというお願いだった。眞木さんの後ろ、担当者なのか片岡くんの姿もあって…。
「私、やります!」
咄嗟に手を挙げていた。自分の仕事は終わっているし、今日はわりと暇で今からでも手伝える。清木場さんは一瞬だけ困った顔をしたもののすぐに「じゃあ保科頼む。」そう言って私を眞木さんに差し出す。
「他にも手伝える奴いたら行ってやって!」
清木場さんの言葉に数人が集まる。片岡くんも少しホッとしたような表情で頭を下げた。そのまま眞木さん達に続いて別室に入るとそこには色とりどりの風船やら折り紙やらがあって。イベントコンサルタントをしている我が社はクライアントの要望に合わせて色んなイベントを企画する。どうやら明日は誰かのお誕生日のようだった。
「ゆかちゃん助かる、ありがとう。」
片岡くんが私の隣に来て小さくそう言った。みんなに頭を下げているのは新人の山下くんだった。
「うううん。ちょうど仕事終わった所だったから。作り方私にも教えて?」
「うん。」
片岡くんの丁寧な教え方に私達はひたすらそれを作り続けた。時間も押して夜も深まってくる。だんだんみんなの集中力もかけてきて。
「眞木さん、コンビニで飯買ってきますね、自分。」
片岡くんの言葉に眞木さんは財布から一万円を渡す。
「経費で落とすから、これで。」
「すいません。」
そう言うとくるりと私を振り返った。ニッコリ微笑むと「ゆかちゃん一緒に荷物持ちお願いできる?」これっていわゆる口実って奴だよね?
「うん、もちろん。」
「んじゃ行こ。」
このフロアを抜け出した瞬間、片岡くんが私の指をキュっと握りしめた。