てっきり篤志さんも一緒なもんかと思ってたら、ご飯を食べてすぐに帰って行った。なんか言いたそうな顔を残して。
「清木場さん何がすき?」
「なんでも食う。特にないな〜好き嫌いは。それなのにあんま背伸びなかった…。」
「ふは。気にしてるんですか?」
「別に気にしとらんわ。お前よりがでかいし。」
カクって頭の上に顎を乗せて口をパクパクするから痛いのに、なんでか嬉しくて。
「もー暴力反対!」
そう言って猫パンチならぬゆかパンチをしようとしたらその手を簡単に掴まれた。そのまま手首を掴んで歩く清木場さん…。え、またそれ?昨日もそうやって私のこと掴んで歩いたけど…そこに意味とかあるの?ないの?いやあってくれよ…。
「あ、それ買って。」
「え?どれ?」
「それ。」
「佐藤錦?」
「そ。それ好き。お前にも食わせてやるから。」
「ほんと?」
「おー。」
「じゃあ買います。」
出始めの佐藤錦の一番大きい箱を籠に入れると満足気に清木場さんが笑った。子供みたいに。
「いっぱい調味料買ってもいいですか?」
「構わんけど、お前が使えよ?俺やらんし。」
「ふふ、毎日ご飯作りに来てあげましょうか?」
「面倒くせえ、住めばええわ。居候、いや家政婦?雇ってやろうか?」
顔ごと逸らしてる清木場さんの掴まれた腕を止めるように足も止めた。なに?って顔でやっとこっちを向くけど至って変わらぬ表情で。ちょっとは動揺したりして欲しいとか思ってしまう。
「一緒に住みたいの?清木場さん。」
「馬鹿言うな。」
「素直じゃないんですね?清木場さん。」
悔し紛れに言ったらスッと手を離された。あ、逃げた。大人げないなぁ。まぁいいか。今日はこのぐらいにしてあげる。鼻歌を歌って弾むように歩く清木場さんの後を追いかけて私はこの日、沢山の食材を買い占めたんだ。