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だってほら、清木場さんも、篤志さんもおんなじように目をまん丸くして私を見ている。なんなら清木場さんは手にしていた煙草を落としそう。あの煙草、やっぱり清木場さんの手の中だと美味しそう。片眉さげて私を見つめる清木場さん。バンってテーブルに手をついて大きく息を吐き出した。


「私だって女です!」

「…保科、お前なに言ってんの?落ち着けや。」

「清木場さんって、そういう人じゃないんですか?」

「は?そういうってなんや?勝手なイメージか?」


急に機嫌が悪くなったのは清木場さんで。思いっきり煙草の煙をこちらに向かって吐き出した。うえ、くっさ。ちっとも美味しくない。


「まぁまぁ俊ちゃんも落ち着こうね。」


篤志さんが間に入って宥めようとするってことは、私地雷踏んだのかもしれない。でもわかんない。どれが地雷なのかなんて。清木場さんのことすら何も分からない。無性にイライラする。上司相手にこんなムキになる自分馬鹿みたい!って冷静に思う自分もいるのに。


「めちゃくちゃやなお前。俺がお前相手に手出すわけないやろ?誕生祭誘われたからって自惚れてんなタコ。」


タコ…じゃないもん。悔しい。泣きそうな自分が嫌で、私は立ち上がると「帰ります。」一言そう言う。清木場さんは無言で煙草を吸ってて。


「でも飯食べてからにしなよ?」

「いいです、いいんです。」


心配そうに見ている篤志さんにそう言うと、荷物を持って私はそのまま廊下を逃げるように走った。でも―――「待てよ。」掴まれた腕にドクンっと心が動く。煙草の香りのするこの腕に仕留められて胸がホッとしたなんて。



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