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連れてこられたのはお洒落なbar。いつもはカウンターで飲むらしい二人。でも今夜は私のせいでテーブル席。清木場さんが当たり前のように隣をポンって叩いて私を誘導してくれたのがなんか嬉しい。今日1日一緒に過ごして、少しは私に慣れてくれたのかもしれない。


「ここの酒全部うまいから好きなの頼みな、保科ちゃん。どーせ俊ちゃんの奢りだし。」


普段煙草なんて社内じゃ手にしている姿を見たことのない篤志さんだけど、その手には清木場さんのとは違う色の箱があって。車も禁煙だって言ってたけど。


「篤志さんも煙草吸われるんですね?」

「飲む時だけね、僕。ほら酒と煙草って何か男の憧れっていうか。俊ちゃんみたいにずーっとは吸わないんだけど、たまに吸いたくなるんだよね。あ、ごめんね、臭うよね?車にファブリーズあるから後でかけて。」

「ふは、大丈夫です。なんか意外ですけど、そんな篤志さんも素敵です。」

「えっ!?ほんと?保科ちゃん僕を褒めても何も出ないよ?」


それでも嬉しそうに微笑む篤志さんはやっぱり可愛らしい。清木場さんの前ではやっぱり恋する乙女だ。


「見返りなんて求めてませんよー。ね?清木場さん。」


私が振り向くと当たり前に目が合った。え、見てた?渋い顔で煙を吐き出す清木場さんにまたざわりと胸が疼く。無言で笑う清木場さんはよく分からない名前のお酒を飲んで上機嫌。今日あったイライラを篤志さんにポンポン吐き出していく。無口で無愛想なイメージとはだいぶかけ離れたなぁ、清木場さん。


「これうまいよ。飲んでみ?」

「え、これ強そう。」

「俊ちゃんやめときなよ。保科ちゃん潰れたらどーすんの?」

「責任もって面倒見てやるよ。」


ニカッて笑う清木場さんにそのお酒を飲んだ私は、その後すぐに記憶を飛ばしたなんて。



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