08

「俊ちゃんがデザート食べてきていいってさぁ。保科ちゃん何がいい?」


高級デザートTAKANOフルーツパーラーのレジ前で篤志さんがニコニコ笑顔を振りまいてくる。顔に似合わずスイーツ男子なの?篤志さんって。ちょっと可愛いんだけど。


「私マンゴーがいいです!」

「いいねぇ、んじゃ僕は桃にする。半分こする?」


篤志さんの誘惑にヘラっと笑った。桃も食べたいと思ってたんだよー!なんて内心ガッツポーズで元気よく「はいっ!」なんて頷いた。


「あ、お金。」

「いらない。言ったでしょ、俊ちゃん持ちって。」

「あのでも…。」

「分かりずらいよね、俊ちゃん。わざわざ買いに行かせるからって、食べてきていいなんて。」


なんとなく分かる気がした。清木場さんの不器用な?優しさが。篤志さんはすごく清木場さんを信用しているのが分かる。清木場さんの話をする篤志さんは、まるで恋する乙女みたいに。


「大好きなんですね、清木場さんのこと。」

「え、なにそれ?言っとくけど僕そっちじゃないからね?」

「ふふふ。分かってますよ。」

「何だかなぁ、保科ちゃん。あーそういやさ、保科ちゃんもう大丈夫?」


早速運ばれてきた桃を頬張ると篤志さんがわりと真面目な顔で私を見た。え、なに?なんの大丈夫?私なんかしたっけ?


「あの、なんの大丈夫ですか?」

「いや俊ちゃんが言ってたから。保科ちゃんほら元カレと…。落ち込んでないか?って心配してた。」


篤志さんの言葉にドクンと胸の奥が脈打った、気がした。



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