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ニュルリと舌を絡めると、健太のあたしを抱く腕に力がこもった。「ンッ、」ほんのり薄目を開けると、ちょうど健太も薄目を開けたのか、パチっと目が合う。フッて鼻で笑いながらもキスが止まる事はなくて…
健太の細い着痩せする身体に腕と足を絡めると、奥まで舌を吸い込まれて厭らしいリップ音がこの階段に響いた。
ほんのり開いた口から垂れる涎を健太の長めの舌がジュルリと吸い込む。そのまま濡れた唇でちゅ、っと小さなキス。
「…授業行く?それともこのままけんたに抱かれる?選ばせてあげる。」
ニヤリと口角をあげてそんな一択をあたしに選ばせる健太はずるい。いつの間にかこの階段にはもう誰もいない。既に授業は始まっていて、いったいあたし達はこの場所でどれ程キスをしていたのかすら分からない。
「けんたに抱かれる。」
「朝海ぃ〜。だいちゅき。」
ギュッてあたしを抱きしめた健太は、そのままデコピタで緩く腰を引っつけた。
「けんた可愛い。」
「朝海のが、可愛い。よし、んじゃ行こ。」
名残惜しくおデコを離すと健太は迷うことなくあたしの手を握る。それからおもむろに指を絡め直すと、それをぶんぶん振りながら2人で誰もいない教室に戻った。
いざ始めようって、健太の手がゆっくりと制服のボタンにかかった時だった、遠くから聞こえる足音。てゆうか煩いくらいバタバタ鳴らして走ってくるのなんて一人しか思い浮かばない。
「…最悪。」
あたしの声に被さるように、教室の後ろのドアがガラリと開けられた。
「立花おるか!!?ついでに健太も、…お前ら何回言わせんねんっ!学校はラブホちゃうでえええ!!!はよ、授業でんかいっ!」
唾が飛びそうなくらい大口開けた級長坂本陣が馬面でこっちを見ている。途端に胡坐をかいて健太が溜息をつく。
「陣くん、めっちゃテンション下がった。どうしてくれんだよぉ。けんたもう帰ろっかなぁ〜。」
「あたしも一緒に帰る。」
「ね、帰ろ!」
ちゅ、ってわざと見せつけるようにキスをした健太に、ニッコリ微笑んだ。
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