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1人目の幸子の厚底ブーツがカツっと音を立てる。入口で止まって中を凝視。
「わ、こんな感じなんだ。」
一言ボヤくとキョロキョロとその場でコテージ内を見回す。一番最初に選べる幸子が一番得な訳で。
ゆっくりと歩き出した幸子は、翔吾の前を通過して、奥の夏喜の前も通過、テラス前にいる昂秀の横を通り抜けてテラスに出た。
途端に健太と壱馬に緊張が走る。最も通過された3人は残念ながら苦笑い。
幸子はフゥーっと息を吐くと手前に座っている壱馬の所で荷物を下ろす。
「壱馬くん、お願いします。」
「うわー!ありがとう!めっちゃ嬉しい!!」
満面の笑みで幸子を迎え入れた壱馬に、奥の健太が安心したような、残念そうな複雑な顔を浮かべたなんて。
幸子が壱馬とお弁当を食べ始めると続く2番手のマイコが入口に降り立った。
また王子達に緊張が走る。
「わ、これ、行きずらい…。」
思わず口から本音が飛び出すマイコ。ギュッと胸にお弁当を抱え直していざ出陣。
手前にいる翔吾と目が合うと、遠慮がちに微笑まれる。だけどマイコの行き着く場所は翔吾ではなくって、奥にいる夏喜に視線を向けるも足は前へと進む。テラス前に座っている昂秀の横を苦笑いで通り過ぎてドアを開けたマイコはテラスに出た。
そこで止まる。ハッとした顔して固まったマイコは、既に幸子と楽しそうにお弁当を食べている壱馬を選ぶつもりだったわけで。…今更戻ることもできず、そのままテラスの最奥にいる健太の所で止まると「健太くん、一緒に食べてください!」テーブルにお弁当を置いた。
「すげぇ嬉しい。俺マイコちゃんと食べたかったから!」
ニカって笑う健太にマイコも優しく微笑んだ。
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