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だけど、恋なんてそんな簡単なもんじゃない。
「朝海さん、ごめんね。」
項垂れる金髪坊主の昂秀。インテリチックに見える昂秀だから仕方ないって気にならなくもないけど…
「いいよ。一人飯寂しかったよね?」
「あーまぁ。なにってみんなの声が耳に入るのがキツかったっす。僕、第一印象で選ばれるような奴じゃないですけど、でも遅れをとった分は全力で取り返したいって思ってるんで…。」
「そうだよね。でもあたし、嫌いじゃないよ?」
ポコって昂秀の金髪に触れてニコって微笑む朝海に、昂秀の胸がドクっと脈打ったのは間違いない。
カアーって真っ赤になった昂秀はそのまま俯いて小さく息を吐き出した。
「朝海さんが頼れるような男に、なります!」
顔を上げた昂秀がそう言うと、朝海もニッコリ微笑む。ほのぼのとした空気が2人をまとっていた、その時だったんだ。
「昴秀くん、次幸子と一緒に組もうよ?」
ふんわりショートの幸子が昂秀の腕をツンって突いてやってきたんだ。
「え、あの…はい、僕でよければ!」
「やった!!次は絶対に幸子の為に活躍して?ね?」
小首を傾げて上目使いの幸子に鼻の下伸びてそうな昂秀に、内心大きな溜息をつく朝海。なんだよ、この展開…って呆れた表情で幸子を見ていると、そんな朝海の視線に気づいた幸子はまたニッコリ微笑むんだ。
「壱馬はいいの?」
そう聞こうとしたら、また歓声があがって、今度は長身夏喜のサーブが綺麗に決まったんだ。
接戦を繰り広げる4人。
「やった、夏喜くんうまい!」
「ありがと。次も決めて勝つ!」
「うんっ!」
息の合った美男美女にちょっとおされている健太とマイコ。だけど、肝心な所で今後は健太のサーブが決まる。
「ハイサイ!!」
パンって手を合わせる2人。9−9で同点。次に1点取った方の勝ちだ。夏喜のサーブでラリーが続く。審判の翔吾もゴクリと唾を飲みこんだ。
手前に落ちた球をポンっと打ち返したマイコ。そのまま美桜の脇腹を通り過ぎていく…。
「マイコさん、1本!勝負あり!」
翔吾の掛け声に「キャア―――!」ってジャンプするマイコ。そんなマイコと一緒にジャンプする健太に目の前で美桜と夏喜が落胆している。でも次の瞬間、
「マイコさん、俺と組んで。」
夏喜が跳ねるマイコの腕を掴んでそう言った。途端にドキっとして「あ、うん。」思わず壱馬を忘れそうになったなんて。
「俺、朝海さんとしたい!」
審判翔吾がニッコリ微笑む先、健太待ちだった朝海を誘った。
「俺、次審判やるよ。」
率先してそう言う健太に、「じゃあ美桜さんお願いします。」壱馬が隣に立った。
二戦目が始まる。
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