年下王子様 | ナノ


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…テラスから視線を逸らして項垂れる昂秀。1人で食べるご飯がこれ程までに味気ないものだなんて、この日初めて知った。

耳に入ってくる甘ったるいコテージ内の会話を聞くまいと頭を振る。


「夏喜ってどーいう字?」
「え?漢字?」
「うん!」
「夏に喜ぶで、夏喜。なっちゃんって結構呼ばれるかな、友達から。」
「なっちゃん!可愛い!あたしもなっちゃん呼びにする!」
「うん。あのさ、なんで俺の事選んでくれた?…消去法?」


夏喜の質問に内心、こいつ鋭いな、なんて思う朝海。確かに夏喜の言う通り消去法だった。でも、


「顔がタイプだった!じゃ、ダメかな?」


朝海の回答に一瞬止まった夏喜はその後ブッて笑う。目を細めて口を軽く開けて。


「なっちゃん笑った方がいいよ!美形の人って黙ってると冷たく見えるから、もっと笑いなよ!全然いい!」


ふわりと朝海の手が夏喜の腕を掴む。「ね!?」って軽く首を傾げる朝海に、ドキっとしたのは言うまでもなかった。


そんな夏喜と朝海の向かい側。


「はぁー。めっちゃ来てくれて嬉しいです。ほんまに1人やったらどないしよーって思ってて。ほんまにありがとうございます。」


大袈裟に頭を下げる翔吾にシュリンプバー美桜がクスって笑う。


「可愛いね、翔吾くん。選んでよかったかも。」
「え?あ、ほんまは俺ちゃう人やったよね?」


若干苦笑いで美桜を見つめる翔吾だけど、首を横に振る美桜。


「これはこれで運命かもって。今の印象は翔吾くんが1番!ほら、食べよう!今スープ分けるから待ってて。」
「…うん、ありがとう。」
「ちなみに、翔吾くんは誰が来て欲しかった?」


スープをカップに入れ替えながらさらりとそんな質問。さすがは手際がいい。軽く自分の胸に手を当てて考える翔吾は、ヘラっと笑って「正直誰が来てくれても嬉しいと思ってたけど、今この瞬間は美桜さんでよかった、って。」…だから美桜がニッコリ微笑むと「美桜でいいよ。」熱々のスープが翔吾に差し出された。


「あ、うん。俺も翔吾でええ。」
「分かった。ね、ダンスってどんなの?」
「あーどんなやろ、後で見る?」
「うんうん、見たい!」
「ほな、約束。」


スッと小指を美桜の口元に差し出す翔吾に、ゆるりと美桜の細い小指が絡まったんだ。

ドキンっと翔吾の心臓が脈打った。

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