「ねぇ、どう思う?」
「…どうやろなぁ」
「こーたーえーてー!」
「あほ、おまっ、首絞まっとるやんけ」
同じクラスの健ちゃんの首を絞める勢いで昨日の直人くんとのことを話した。健ちゃんはクラスの人気者で、いつも輪の中心にいる人で、みんなに優しい兄貴的存在だった。だから私に限らず色んな相談をみんな健ちゃんに持ちかけては解決して貰っていた。どうにもモヤモヤしていた私は、朝一で健ちゃんに相談を持ちかけたわけで。
「まぁ、好きなんちゃう?直人も、お前んこと」
「…からかうのは好きだから?そんな子供みたいなのかな、直人くんって」
「男なんてみんな子供や。ピーターパンや!」
「女はウェンディ?」
「ま、そんなとこ?」
「健ちゃんの言ってることよく分かんないけど、私直人くんの彼女になれるのかなぁ…」
ぐだーって腕を投げ出して机に伏せる私の頭をポンポンって健ちゃんが優しく撫でた。
「ゆきみからちゅーでもすればすーぐ落ちんで、直人なんて!」
「またそーいうこと。ほんっと男ってそれしか頭にないの?」
「よお、覚えとけ!」
ビシッと顔を作った健ちゃんは、笑顔で「ないわっ!」って答えた。
「ああ、色んなやる気が失せた…」
放課後。
今日はあいにくの雨だった。グラウンドが使えない今日は、体育館で筋トレ。ひたすら筋トレ。
「よう」
ポカって後ろから頭を軽く叩かれる。振り返らなくても分かる。こんなことするのは黒沢先輩しかいない。
「なんですか、先輩…」
「へぇ、声だけで俺ってわかっちゃうの?本当は俺のことが好きなんじゃないの、お前」
「そんなわけないし、雨の日にまでわざわざ来る暇人は黒沢先輩しかいないってことですよ…」
振り返るとやっぱりな黒沢先輩。ニカって眩しいくらいの笑顔を投げる。
「失礼な奴だな〜。雨で筋トレだから来たんだよ。身体作ってなにが悪い?女はやっぱ細マッチョが好きなんだろ?」
ボディビルダー並にポーズをとってる黒沢先輩にプって笑う。思い浮かべる直人くんは確かに細マッチョ。細くもないか、わりとマッチョ?
「ガッチリマッチョがすきです、私は!」
そう言った瞬間、ジャージに着替えた直人くんが顔を出した。思いっきり目があった。