絶対に逃がさないんだから。今日こそ本気で「好き」って言わせてやる。
「今よ、今!」
「ちょ、ゆきみちゃん?」
ずっとずっとずぅーっと好きだったんだから。
「ずるいよ、直人くん。いつもいつも私にばっかり言わせて自分は”ウソ”って誤魔化して逃げるじゃん」
もう泣いちゃいそうで、色々ぐちゃぐちゃで出した声は震えてて恥ずかしい。でも諦めないでここまでこれた。それが全てだと思うから。
「男らしくないよ、キャプテン!」
「そうだ、そうだ、マネージャー悲しませるな!」
私を庇うように変なヤジまで飛び始めて直人くんは苦笑い。だけど次の瞬間クッと真面目な顔になる。真剣な直人くんはその場で片膝ついて私に手を差し出した。
「ゆきみちゃん。ずっと好きでした!僕の彼女になってくださいっ!」
まさかの告白に、最高潮の盛り上がりを見せた。吃驚して動けない私に「ゆきみ、返事返事!」ELLYがコソッとそう言う。スッと直人くんの痛々しい手を握って私は「はい、よろしくお願いします」そう言った瞬間、繋がれた手が引き寄せられてふわりと抱きしめられた。
すぐに湧くキスコールに直人くんが耳元で「チューしちゃう?」なんて言う。
ずるい、ずるい、ずるい!!
「しない、絶対しない!」
「そんな否定しなくてもいいじゃん?傷つくー」
直人くんがシュンとした時だった。
「お前らあぁぁぁぁ!!いい加減にしろっ!」
コーチが般若のお面並に鬼の形相で怒鳴り散らした。
「お前は、ここで何してるっ?謹慎中に来るなんて前代未聞!校長先生に報告するからな!」
「まぁまぁ、今日はよしましょうよ。今は授業の時間じゃないですし、せっかく恋も実ったんだし、大目に見てあげませんか?」
助け舟を出したのは横山先生だった。頬についてる絆創膏を見て「先生…」思わず声が漏れた。
「お前達の今は、今しかないからな。大人の言葉で縛り付けるなんて勿体ねぇ…」
横山先生の右頬の絆創膏は土田くんに殴られた後で、二人の間に何があったのかは分からないけど、生徒に寄り添ってくれる横山先生に頭を下げて私はベンチに戻ったんだ。
「あーあ。ゆきみが直人のもんになっちゃった」
…え?隆二くん?ドカッと大股開いてだるそうにそう言うと「煙草吸いてぇ」なんか態度違くない?臣くんが「俺も。帰る?」なんて言うんだ。
「ほんなら俺も。ゆきみ、今日の今日えっちはすんなや?軽く見られんで?」
そんな言葉を私に浴びせて3人は私の前からいなくなった。3人とも一応進学コースだよね?普通科さんに見えたんだけど。
グラウンドでは、残った1アウトが大きくあがったボールをキャッチして終わった。挨拶の終わった直人くんが私に手を振る。胸の奥がキュンとして痛い。やっと実った私の片想い。嬉しさで頬が緩んでいたんだ。