女の影発覚。

「ごめんねっ、本当にごめんねっ、止血、消毒…先生なんでいないのっ、えっと、えっと」


目の前真っ白で止まらない血をギュッと押さえなきゃなのに、どうすればいいのか分からなくて、保健室の先生が喧嘩の方にいっちゃったからここには私と直人くんの2人きり。


「落ち着けよ、ゆきみちゃん。俺大丈夫だから!」


ギュッと直人くんに手首を掴まれて私は視線を直人くんに向ける。つぶらな瞳で真っ直ぐに私を見つめあげる直人くんにその場に膝をついて手をギュッと握りしめる。


「ごめんなさい、私のせいで…マネージャー失格だ、」

「…怪我なくてよかった、ゆきみちゃんに…」


ふわりと反対側の手で私の髪に触れる直人くん。途端にドキンと胸が音を立てた。今日は優しいんだね。なんて。昨日あんなに苦しかったことも一瞬で吹き飛ぶ。嫌いなんて嘘。嫌いになんてなれない。こんなにも私の心を奪えるのは直人くんしかいないんだもの。もうなんでもいい、私が直人くんを好きなんだから。


「直人くん私、直人くんのこ…」


いきなりガラリと保健室のドアが空いて直人くんを見て絶叫する女。


「大丈夫、直ちゃん!」


まるで私の存在を無視して直人くんの手をギュっと握った。吃驚した私はそのまま勢いで押されて直人くんから後ずさった。

誰?同じクラスの女子?見たことあるかも…


「どういうつもり!?あんたマネージャーの癖に、色目ばっかり使ってる癖に、なんなのよ!直人けがさせて、どう責任とってくれんのっ!?」


言われて言葉が出てこなくて。


「幸子よせ、ゆきみちゃんは悪くない」

「酷いよ、直ちゃんこんな目に合わせて、最低だよ」


全く知らなかった直人くんの女の影。だってこの子、ネクタイしめてる、男子の…。そして直人くんのYシャツの前はがら空きでネクタイがついていない…。昨日まではちゃんとしていたのに、今日に限って今に限ってノータイ…


「…付き合ってるの?」

「そうよ!昨日直人に告られたの!邪魔しないでよっ、もう出てって!さっさとあたし達の前から消えて!!」


昨日って…直人くんは気まずいのか目を逸らしていて。私は断ったのに、隆二くん。私はそれでも直人くんが一番好きって、断ったのに…

何も言えずにそのまま保健室を後にした。もう、ダメだ。私の未来、無くなっちゃった…。
ポツリと上履きに涙がこぼれた。



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