「お疲れ様でしたー!」
部員達の掛け声と共にグラウンドを元通りにする。私は散らばったグローブやらボウルやらを集めてきて籠に入れる。
あれから直人くんとは勿論喋っていなくて。
自主練付き合えって言われてた私は、今からそれを断りに行くわけで。部室のカギを握ったまま、まだ投げ込みしている直人くんの所に近寄った。
「直人くん。今日は用事あるから帰る。カギここに置いとくから!」
「待てよ。隆二と帰んの?」
ズルくない?そーやって引き止めようとするの。私だって傷つくんだから。
「うん、大事な話あるって。だから隆二くんと帰る」
「告られんじゃねぇの?OKするの?」
「…そんな軽々しく告白なんてしないよ隆二くんは、直人くんと違って。もーそーいうの止めて。私が傷つかないと思ってるなら直人くんほんと最低、」
「悪かったな。さっさと行けよ」
何、その言い方。自分を棚に上げて嫌な奴。
もう知らない。もう嫌い、嫌い、大嫌い。くるりと向きを変えて逃げるように部室に戻った。
「なに、喧嘩?」
顔を見るなり黒沢先輩の苦笑い。
直人くん以外はみんな私の顔色読めるのに。
「もういいんです。もう愛想尽きたあんな奴。大嫌い!」
言い切る私にポンッて黒沢先輩の手が頭に触れる。目尻を下げて微笑む瞳は優しくて。
「俺には今の大嫌いが、大好きに聞こえたけどな。せっかくずっと思い続けてきたのに、諦めちまうの勿体ねぇな…」
なによ、急に真面目なこと言って。
いつもいつもからかってるくせに。泣きそうで俯いた顔があげられない。
本当の本当は大好きだって私の心、ちゃんとみんな分かってる。一番わかって欲しい直人くん以外のみんな。
「もう、いいんです本当に…」
出した声は震えていて、泣きそうなのを黒沢先輩に気付かれたくなくて部室の中に入って行く。
「ゆきみ、大丈夫?」
そんな私に声をかけたのは優男ELLYで。
ほら、やっぱり直人くん以外のみんなが分かってる。分かっていないわからず屋は直人くんだけだよ。