もうやだ、もうやだ、絶対やだ。
なんでそこまでされなきゃなの?
私が直人くんのこと本気で好きじゃなければこんなの、また言ってるよ、で済まされる問題?
てゆーか、ほんと最低。
大好きな人ながら最低、なんなのっ!!
西陽が落ちかけているグラウンドはセピア色で完全に日が落ちたら真っ暗になる。
今日はこれ以上直人くんの顔、見たくない。
夕陽に照らされた直人くんの顔を見るのは大好きなはずなのに、胸がギュッと痛い。
私が悪いの?
なんでそんなに意地悪なんだろう。
作って置いた麦茶の変えを部室に取りに行こうとグラウンドを歩きだしたら、陸部の外周を走っている隆二くんと目が合った。うわぶっちぎり、かっこいい!手を振る隆二くんに振り返すと近寄ってきた。
「もう帰るの?」
「うううん、まだ。麦茶の変え取りに行くだけだよ。隆二くんはもう終わり?」
「俺もまだかなぁー。後3周は走りたいから。浮かない顔してる、なんかあった?」
「…気づく、んだ、そーいうの…」
「そりゃ可愛いゆきみちゃんのことちゃんと見てるからねぇ。俺でよければいつでも聞くよ?」
…見てろよ、バカ直人。
私は隆二くんの腕をギュッと掴んだ。
「わお、密着!ついでに直人、こっちめっちゃ見てるから!」
笑顔で私の肩に腕をかける隆二くんに、内心ドキッとしつつ直人くんが見ているなら尚更だ!って、もう1歩距離を埋めた。
「一緒に帰ろ?」
「そー来ると思った。こんな可愛いゆきみちゃんのこと傷つけるなんて俺は許さないから。部活終わったら迎えに行くから、もしそっちが先に終わっちゃったらちょっとだけ待っててくれる?」
「うん。ありがと、隆二くん」
「いや逆に嬉しい。俺今彼女いないし、」
「明日には出来てそうだけどね」
「ゆきみちゃんなる?俺は大歓迎だよ?」
「あはは、ならない!でも今日だけ一緒に帰りたい。ワガママ?」
「全然。むしろ今日で落としたいぐらい!」
本気で隆二くんに落とされたら、落ちるんだろうか?直人くんより好きになれる人なんて、存在するの?
「そしたら、隆二くんと付き合う!」
「んじゃ半分本気でいくね!覚悟しといて?」
よく分からないけどドキドキしたのは確かだ。私だって、直人くん以外のオトコいるんだから。馬鹿みたいなヤキモチとか、駆け引きとか、後から思うとほんと馬鹿みたいで、高校生の大人になりきれていない私達には、そんなものは不必要なんだと、気づいた時には遅い―――。