慰め会? 

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【said 朝海】


「樹、朝海からシーバー取り上げといて!」


無言でいっちゃんにシーバーを取られたけど、取られたけど「なんでよおおおお!」臣ちゃんをジロっと睨むと、口角をクっとあげて「お前真似しそうじゃん。健太愛してる、とか言いそう!」


「そんな恥ずかしいことしないもん!いっちゃんのが危ないよ、臣ちゃん。」

「いや、今直人さんに喧嘩ふったら返り討ちにあうから、しねぇよ樹は。な?」

「…まぁ、はい。」


ブって。だけど…、「あ、あの。」最近いっちゃんは垢抜けてきたせいかやたら女にモテる。

その全部がゆきみさんの為のものだけど、元々の素材がいいいっちゃんのモテっぷりは半端ない。


「はい?」

「あの、彼女いますか?」

「います。」

「…そうですか、すみません。」

「………。」


溜息をついて視線を逸らすいっちゃんはあの直人さんに打ち勝った男で、この男をゆきみさんの相手に選んだあたしってば、見る目があるってもんだよね。

それにしても、マイコさんのまこっちゃんへの言い訳なる告白にテンションがあがりまくってるあたし達を横に、かじゅまは寂しそうな顔をしていて。


「かじゅま。今夜飲みに行こ!」


かじゅまの頭を撫でるといつもなら「髪が崩れる」って痛がるのに、今にも泣きだしそうな顔で小さく頷いたんだ。

かじゅまの失恋慰め会と題してこの日、大勢引き連れて和民へといざなった。


「…え、彼女いるの、やましょー!」

「はい、まぁ。」

「…なんかショック。」


髪を緑っぽく染めたやましょーは健太の親友で、あたしとのことも喜んでくれた。

別にいいんだけど、あたしには健太がいるし。

気づくと飲めないお酒を手にそれをごくごく飲み干していた。


「え、朝海ちゃん?ショック、なの?」


ケチャップたっぷりのポテトを一本ずつゆっくりあたしの口に運ぶ健太の細くて綺麗な指を見つめていた。


「やましょー好き。」

「...え!」


苦笑いされた。ちょっと困った顔された。なんでか無性に腹が立って、だからあたしは健太を見て言ってやったんだ。


「哲也さんとサヨナラのキスした。」


健太なら笑って許してくれるんだろうって。ジット見つめる先、健太の顔が思いっきり歪んた。眉間にシワを寄せて「は?」って。


「なんだよ、それ。」


あ、あれ?怒ったの?


「サヨナラのキスとか、いらねぇだろ。」


イラついて煙草に火をつけた健太は沖縄の泡盛をグビっと飲み干した。


「健太?」

「...消毒!」


反対側の手であたしの首に腕をかけてそのまま恥も遠慮もなくキスをされた。いつも以上に激しいキスに体温があがる。

チュッてリップ音の後、「今ので全部上書き。」小さく吐息を漏らす健太にクスっと笑う。


「まだ続きがあったのに。」

「え?続き?」

「そうだよ。健太のキスのが断然気持ちがいいって、そう言ったの。」


大きな目を真ん丸く開いた後、ふにゃーっていつもみたいな柔らかい顔になった。

この健太が安心するけど、ちょっと怒った健太もかっこいい!


「な、なんだぁ。でももうキスはダメだよ?ね?」

「うん!」


...健太と見つめ合って微笑むと、「あのー。」って遠慮がちな声。

見るとかじゅまがシラケた顔で見ていて。


「俺、必要?」


鼻の頭を指さして苦笑いするかじゅまにヘラっと笑った。


「お姉さんが慰めてあげる!」

「ええよ、もー。健さんとイチャイチャしとけよ、朝海さん!」


投げやりなかじゅまを慰めたのは他の誰でもないやましょーだった。

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