窒息する
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【said ゆきみ】
「樹ッ、ンッ、」
トサッとベッドの上、樹に肩を押されてそのまま後ろに倒れた。わたしの上に上半身乗せた樹は、迷うことなくキスを繰り返す。
ここにはもう樹のキスを止めるものなんて何もない。ちゅっ、て唇をハムる樹のキスは可愛くて。なかなか舌を入れてこない樹に思わずわたしからちゅ、と舌を出す。
ほんの一瞬止まってから樹がそっと顔を離す。
真っ直ぐわたしを見つめたまま頬に手を添えて髪を撫でた。
「教えてよ、俺に。ゆきみの全部。」
サラリと落ちる前髪の隙間から、切れ長の大きな目が真っ直ぐにわたしを見下ろしている。
黒いパーカーを片手で脱ぎ捨てる樹は、わたしの頬を優しく撫でていて。コツっとおデコを重ねると「俺のことすき?」甘く囁かれた。
「好き。」
「俺も。」
イケメンすぎる樹がわたしの首に顔を埋めた。
首筋をちゅ、ちゅ、…音を立てて甘くキスを落としていく。
「あちぃ、」
「ン。脱ぐ?」
「うん。俺脱がせたい。」
「うん。」
バンザイって樹に手を伸ばすと、目を丸くしながらもわたしを丁寧に脱がせていく。
あんなに直人さんを素敵だと思ったはずなのに、今わたしの目に映っているのは樹だけで、わたしの心の中にいるのも樹だけだ。
樹の愛を独り占めしてこんな気持ちになるなんて。
「樹、」
「全部脱がしていい?」
「うん、」
苦戦しながらもしっかりと下着を脱がせた樹はまじまじとわたしを見つめる。
白タンクの裾を引っ張って「脱いで。」そう言うと、ガバリと片手でそれを脱ぎ去った。黒いパンツのベルトに視線を移すと樹がカチャっとそれを外してスルスルと足を抜いた。
カルバンクラインのパンツに手をかけた樹を静かに見ていた。さすがに恥ずかしかったのか、後ろ向きで脱いで、そのままわたしに覆いかぶさった。
「…あったかい、ゆきみ。」
「うん。樹もあったかい。」
思いっきり抱きしめられて、ちょっと苦しい。圧迫されてるっていうかなんていうか。樹の胸板を手で押すけどビクともしない。
「樹、ちょっと、」
「え?」
「く、苦しい…、」
「え、ごめん!」
ちょっと慌ててわたしを離す樹の胸を押してそれをじっと見つめる。
「え、ゆきみ?」
「なに!?」
「へ?」
「これ、なにっ!?」
6つに割れた腹筋を指で撫でてそう聞くと、キョトンとした顔で「なにが?」って聞き返す樹。
…思い出しちゃったよ、ここまできて、直人さんのこと。
「こんなの窒息する。」
「…ゆきみ?」
「なんでこんなかっこいいの、樹。」
「…褒めてる?」
「わかんない。でもこれ、わたし以外に見せないで。」
「見せないよ。当たり前だろ。」
「ほんと?」
「ほんと。だって俺、ゆきみ以外興味ないもん。」
ギュっと樹の首に腕を回して抱きつくと、窒息しそうなくらいまた抱きしめ返してくれた。
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