ヤキモチ
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【said ゆきみ】
「わたし劇場に一報入れてから行くからみんな先に行ってて?」
久しぶりの夢の国にみんなテンションがあがってる。だけど心配している人は他にもいるから、劇場に電話をかけた。
【お電話ありがとうございます。LDHシネマズです。】
「一ノ瀬です、お疲れ様です。」
【ゆきみ先輩!あの、大丈夫ですか?】
「うん大丈夫。みんな無事。ハルカ、直人さん電話出れそう?」
【あ〜ちょっと待ってくださいね?】
「うん。」
隣を見るとそこには樹がいて。
みんなと一緒に行かないって分かっていたけど、一緒に居てくれるのはやっぱり嬉しい。
しばらく保留音が流れた後、カチャっと音が途切れた。
【ゆきみお疲れ。立花どうだった?】
「直人さんお疲れ様です。朝海ちゃん見つけました。無事です。なんかね、大丈夫そうですよ。PJの神谷くんが、ずーっとマンツーでついててくれてるからわたしも安心してます。」
【そっか、よかった。本当によかった。哲也さんには俺から伝えておくから。】
「お願いします。混んでます?そっち。」
【激混み。ゆきみに戻ってきて欲しいぐらい。】
「あは。でもね朝海ちゃん、ディズニーランドのツリーの前にいたの。だからこれからみんなでちょっと遊んできます!」
【は!?マジで!?…え、ゆきみ待った、藤原もいるの?】
…え?
元々低い直人さんの声。
笑う声は可愛いけど地声は低くて。顔が可愛いだけにそのギャップも好きだったりする。
ほんの少しの不安が入り込んでいるのか、いつもよりも低い声でそう聴いたんだ。
思わず樹に視線を向けると、一語一句逃さないって顔でジーっとわたしを見ているからカアーっと赤くなってしまいそうで目を逸らした。
だけどキュってわたしの手に指を絡める樹。
そのままわたしの後頭部に繋がれていない手を乗せて何故かギュっと抱き寄せた。
触れた耳から樹のドクドクいってる鼓動が伝わる。
見上げるとほんのちょっとだけ口元をすぼめている。
ムスっとした顔の樹に心臓がキュってしまる思いだった。
【ゆきみ?】
「え、ああごめんなさい。あのその、帰ったら連絡します。」
【なるほど。今そこにいるんだな。たく。俺も一緒にって言いたいけど今日は無理そう。とりあえず連絡待ってる。遅くてもいいから電話して?】
「うん。ごめんね。」
【いいって!じゃあ楽しめよ!】
「はい。」
通話終了のボタンを押すと待っていたかのように樹がわたしの頬に手を添えて、覚えたてのキスをした――――…。
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