言えない既読スルー 

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「二人は、付き合ってるの? 」


…直人さんとのこと、まだえみに言ってなかったけど、言ってなくてよかったと思ってしまう。

運転しながらもこちらをチラチラ見てる岩ちゃんと、思いっきり興味津々のえみ。

樹を見ると当たり前にこちらを見ていて。

大きな目が真っ直ぐにわたしを捕らえている。


「まだ、です。まだゆきみさんにオッケーは貰ってません。」


ちょっと待って!オッケーってオッケーって、わたし告白なんてされてない!はず。


「いっちゃんわたし、告白された?」

「あ、そうか。ちゃんと言葉にしないとダメたった。そう朝海さんにタコができそうなぐらい言われてた。でもなんか、ゆきみさんに触れるとそーいうの全部飛んじゃって。」


淡々と話していたと思ったらここにきて無駄に照れて顔を逸らす樹。

サラサラの髪の下、耳が赤くなっているなんて。

恥ずかしくて何も言えないわたしの手をキュッと強く握りしめた。


「俺のこと避けてた?」


それからゆっくりと確信に迫る言葉を投げた。

直人さんに抱かれた日、樹から【逢いたい。】とLINEに入っていて、わたしはそれを既読スルーしたんだ。

あの日わたしは樹よりも直人さんを選んだ。

後悔なんてしていないものの、こうしていざ樹と面と向かうとその決心は簡単に揺らぐ。


「理由があるなら聞きます。」

「…いっちゃんあの、」

「うん、」

「…な、ッ…んでもない。連絡できなくてごめんね。」


…言えない。直人さんのことなんて、言えやしない。そんな真っ直ぐにわたしを見つめる樹に至極胸が痛い。

いつかは言わなきゃいけない。

でも今じゃなくてもいい。

そう自分に言い聞かせて樹に微笑みかけた。


「よかった。じゃああの約束二日分たまってるから。」


キュッて樹の手が強く指を絡めた。

迷うことなくわたしを優しい目で見つめる樹に胸が痛いけど、その代償はちゃんと受けるから。

顔を上げるとえみと岩ちゃんが物凄いニヤついた顔でわたし達を見ている。


「なぁに、あの約束って?」


えみの言葉にぶんぶん首を横に振ると樹がほんのり口箸をゆるめて笑う。


「秘密です、俺とゆきみさんの。ね?」


ふわりと繋がっていない方の手を伸ばしてわたしの髪を撫でる。その手を頬に添えてゆっくりとなぞるように唇を通過して樹の太腿に戻っていく。


「なんか、初々しすぎてこっちまで恥ずかしいからゆきみちゃん!」


岩ちゃんが楽しそうに笑うけど、されてるわたしのが恥ずかしいもん!なんて心の中で開き直った。


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