目的地 

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【said ゆきみ】


「岩ちゃんとえみがいてくれてよかった。わたしだけだったらテンパって自分を見失ってたかも…。」

「少しは役に立ててよかった。それにしても、どこ行っちゃったんだろう朝海ちゃん。こーいう時何も浮かばないのって結構辛いね。」

「うん。いつもくだらない話ばっかしてて、今年は特にクリスマス、どうしたいこうしたい…って、」

「それじゃないの、朝海さん。」


不意に樹がキュっとわたしの手を握る。

ジッとわたしを見てボソっと呟く。


「クリスマスに行きたい所、回ってんじゃないんですかね?…それしか考えられないけど、俺。」


樹の言葉に全身が固まった。とほぼ同時、前を走るマイコからの着信に通話ボタンを押した。


【ゆきみさん、朝海ちゃんクリスマスデートの道筋たどってるのかなって思ったんですけど…。】


マイコの言葉にうんうんって頷く。


「そうだよ、絶対にそう!ね、どこって言ってたんだっけ?朝海ちゃん。」


こんな時に限って自分のデートプランが鮮明に浮かんで思わず樹の顔を見つめる。


【えーっと、えーっと…】


マイコも記憶をたどっているようで。でも次の瞬間脳内で朝海ちゃんの声が聞こえた気がした。そして、電話の向こう側、神谷くんの声も一緒に。


【大きなクリスマスツリーの下!!】


―べたに大きなクリスマスツリーの下で待ち合わせして一緒にケーキ買いに行ってそのまま彼の家で過ごしたいです―

―きっと無理でしょうけどあたし…―


哲也さんの家で過ごせないって分かってるからそんなありきたりなデートすら憧れるものだったんだって…。

やっと分かった。


「マイコ…わたし達馬鹿だね。」

【ん。ほんと馬鹿。悔しいぐらい馬鹿。】

「早く迎えに行ってあげよう。」

【うん。あ、でも…大きなツリーってどこだろ。】

「お台場?東京駅?USJ?」

【ゆきみさん、ディズニーランド!って神谷くんが!昨日酔ってそう言ってたみたい!】

「それだ!ディズニーランドね、了解!とりあえずまた後で。」

【うん。】

「岩ちゃん、ディズニーランドでお願いします。」

「了解!久々だなぁ、俺ら。ね?」


ポコってえみの短い髪を撫でる岩ちゃんに、こんな時だけど愛を感じて心がほっこりした。


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