二台の車
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公園、デパート、カフェ、朝海ちゃんの行きそうな場所ってどこだろ?
考えても考えてもさっぱり分からなくて、一度みんなで劇場に戻った。
オフィスに顔を出すとマネージャーの姿もなくて。
「ハルカ、直人さんは?」
「それが、トラブルっていうかリザーブ機が故障して発券できなくて、その対応でまだ。混雑具合もすごいので、私もヘルプばっかで週報もまだできてなくて。」
確かにロビーはすごい人だった。
できるならわたし達も手伝いたいぐらいに。
「着券だけ合わせといてくれたら最悪週報は明日でも大丈夫だから。頑張って。」
「はい。あの、なんかあったんですか?」
「…なに、も。直人さん戻ってきたらこっちは大丈夫って伝えてあげて?」
「はい。」
心配顔のハルカの頭をポコってするとふわりと笑った。
「ハルカ、ボックス!」
「あ、はい!」
ヘルプに入ったハルカと入れ替わり、えみがオフィスに入ってくる。
「ゆきみ、剛典車出せるって!」
「え、ほんと?助かる!」
「うん、後5分ぐらいでつくって。」
どこまで行ったのか分からない。でも遠くまで行っていたら車のが、「登坂さん、俺らも一緒に探します!」え?見ると壱馬くんと、後ろに樹。
「なんで?」
「朝海さんですよね?シフト入ってないし気になってました。」
さすが壱馬くん。目ざとい。でも…
「いっちゃんはシフト入ってるでしょ?」
わたしが言うと「北人さんに伸びて貰いました。俺はゆきみさんの傍にいます。」…こんな時にずるい台詞。
この場に直人さんがいなくてよかったと思うわたしもずるい女なんだと。
単純に樹の言葉が嬉しいなんて。
「車、もう一台欲しいね、ゆきみさん。」
マイコの言葉にトサカがハッとした顔をする。と、同時に「借りてくる、ちょっと待ってろ。」マイコの頭にポンと手をつくと、オフィスを出て行った。
1分もたたないうちに戻ってくるトサカの後ろには哲也さんがいて。
コンセのヘルプに入っていたんだろう、エプロンと帽子を被ったまま、デスクからキーケースから取り出した鍵をトサカに渡した。
「よしこれで全員乗れる。俺が運転するよ。マイコ隣座れ。」
「え、うん。」
「じゃあわたしはえみと岩ちゃんの後ろに乗せて貰う。 」
チラリと樹を見ると当然のごとく「俺はゆきみさんの隣。」ボソッと一言。
「ほんなら俺と健太さんは登坂さんの後ろ乗ります!」
壱馬くんの言葉に決まり!ってわたし達は駐車場へと急いだ。
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