大事な友情 

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【said ゆきみ】


「直人さんを選ぼうと思ってる。」


そう告げたわたしに酷く傷ついた顔をした朝海ちゃん。

そりゃそうだ。樹を選ばせようとわたしに近づけたのは朝海ちゃんだもの。

よりによって、朝海ちゃんの天敵である直人さんを選ぶなんて、きっと煮え切らないよね。


「いっちゃんは?」


何か言いたげな瞳のまま、それでもその一言だけを口にした朝海ちゃん。


「いっちゃんは、若すぎる。ごめんね、せっかく朝海ちゃんが色々してくれたと思うんだけど、わたしはそこまで強くいられない。」


未来の見えない樹よりも、現実話、直人さんは安心できる。

哲也さんが言ってた藤原くんとの未来が、直人さんに寄って消された。


「いっちゃん、可哀想…。」


朝海ちゃんの言葉にシーンとしてしまう。


「ごめんね。わたしの話より、マイコの恋のが、ほら。ね?まこっちゃんに好きって言わないの?」

「…え、あ、うん。なんていうか、長谷川くん自分の気持ち言って満足なのか、私が話す隙がないっていうか。」

「ふふふ。マイコも恋する乙女の顔、だね。可愛い。神谷くんは、朝海ちゃんのどこが好きなの?」


しょんぼりしちゃった朝海ちゃんの頭をずっとポンポンってしてくれてる神谷くんがいてくれてよかったと思う。

こればっかりは気持ちの問題でどーすることもできないから。

朝海ちゃんの言い分も分かるし、樹を裏切って直人さんを選んだのも事実だ。

だけど直人さんって憧れの人から誘われて断ることがわたしの脳内にはなくて。

樹を思うよりも、直人さんの愛で包まれている方を選ぶのは、大人の選択肢だって思う。

恋愛に間違いなんてない。

でもきっと、正解もないものなのかもしれない。

たった数秒で、未来がこれ程までに大きく変わるんだと思うと、一分一秒無駄にできないんだって実感する。

こんな時、直人さんがいてくれたら…なんて甘えの気持ちが出てきそうで、わたしはとりあえず二本目のカクテルを飲み干した。


ちょっと場の悪くなったものの、神谷くんが朝海ちゃんとの馴れ初めを話し出してくれて、空気が和らいだ。


「僕、強い女の人を守ってあげたくて。」

「…あたし、強くなんかない。」


膝を抱えてそこに顔を埋める朝海ちゃん。


「見た目よりも、強くないと思うの、女って。」

「そうでしょうか?強くなきゃ一人でいられなくない、違います?」


神谷くんの柔らかい話し方は多少なりともわたしもマイコも癒しになる気がする。


「強がってるんだよ、みーんな。本当は誰かに甘えたりしたいって。」

「だから直人さんなんですか?ゆきみさんは。」


まだ納得いかないって顔の朝海ちゃん。


「直人さんは、わたしには優しいよ。朝海ちゃんだって、優しくしてくれる人、沢山いるでしょ?」

「…直人さんと付き合ったらゆきみさん、あたしと遊んでくれなくなりそうでやだ。」

「そんなことないよ。変わらないよ。」


ポンって朝海ちゃんの頭を横から撫でた。


「マイコさんも。まこっちゃんと付き合ってもあたしのこと誘ってくれる?」

「当たり前でしょ。朝海ちゃんもゆきみさんも私には無くてはならない存在だもの。そんなの私だって困る。」


マイコの言葉にグズッて朝海ちゃんが涙を呑み込む。

確かに女の友情なんて男が絡むと緩くなることが多い。

誰だって好きな人と過ごす時間は特別なものだ。


「朝海ちゃんのこと、変わらず大好きだよ。」

「あたしもです。」


今日のガールズトークは、いつもよりもセンチなガールズトークだね。

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