段階超えな現実 

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【said マイコ】


朝海ちゃんのイラついた声にゆきみさんが顔を背けた。

直人さんと朝海ちゃんには私達には見えない棘があって、二人ともあんまりお互いを良く思っていないような関係で。

だからゆきみさんの相手が直人さんだなんてこと…


「朝海ちゃん落ち着こう!」


思わずそう言うと涙目の朝海ちゃんがポロっと涙を零した。

え、え、え!!!


「「どうしたの、朝海ちゃん!?」」


被った声は私とゆきみさんで。

神谷くんの横でボロボロ泣き出す朝海ちゃんに動揺してしまう。


「だってなんなんですか、二人とも…。まこっちゃんはマイコさん彼氏いるのか聞いてきて、自分がマイコさんのこと好きなだけです!って言い張って何も教えてくれないし、かじゅまはそんなまこっちゃんのことずうっと守ってるし。マイコさんはさっきからずっとまこっちゃんなのか誰なのかずっとLINEしてるし。ゆきみさんなんて…―――いっちゃんとうまくいったのかって嬉しかったのに、心ここにあらずって顔で、直人さんなんかとどうにかなっちゃってたら最悪!!あたしだってクリスマス、男前なイケメンとイチャイチャ過ごしたいって思うけど、二人があたしに興味ないのも寂しいです…。」


ダーって言いきった朝海ちゃんは飲めないビールをガブ飲みしてゲホゲホむせた。

神谷くんがそんな朝海ちゃんの背中を撫でていて…。

ゆきみさんと目を見合わせて苦笑い。


「ごめんね、朝海ちゃん。」

「わたしも、ごめんね。」

「うううう、いいんです。あたしのワガママだから…。」

「ワガママな方が可愛いよ、女の子は。」


神谷くんが慰めて言ったんだろうけど「子ども扱いしないでよ!」怒っていても受け止める神谷くんの愛は相当だって思えるわけで。


「私、長谷川くんのこと気になってるの!でも本当にここ何日かでそう思うようになったから、ちゃんと伝えられてなくてごめんなさい。朝海ちゃんにもゆきみさんにもちゃんと気持ちが固まったら伝えるつもりでいたけど…色々順番が前後しちゃったりで…。」


自分で話していて恥ずかしくてたまらない。

でも、こうして心配してくれる友達がいるのは有難いことだって思う。

だから今の私の気持ちをちゃんと伝えなきゃって思った。


「やっぱりちゅーしてるぅ。」

「そ、そこはその…ご想像にお任せします!」


思わず長谷川くんとのキスを思い浮かべて顔が火照る。


「告白よりもキスが先にきて、戸惑ってるのはマイコもわたしも一緒だろうね…。」


ゆきみさんがボソっと言うんだ。

二杯目のカシスオレンジを缶ごと飲み始めるゆきみさんは既に顔が赤くなっている。


「マイコは特に真面目だから段階踏まずに飛び越えて大丈夫?」

「はい。好きって気持ちがあるから。ゆきみさんは?」

「うん…―――ごめんね朝海ちゃん。」


一つ大きく息を吐き出したゆきみさんは、少しだけ恥ずかしそうに小さく言ったんだ。


「朝まで直人さんと一緒だった。」


朝海ちゃんの顔が思いっきりしかめっ面になった。


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