認めないけど… 

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「朝海ちゃん?」


空気のはずの健太があたしを覗き込んで目の下を指でなぞった。

それからギュって頭を抱えるように抱きしめて「大丈夫、朝海ちゃんには俺がいる。」なんて言葉。

ポンポンって何事もなかったかのように健太はそっとあたしを離すとまた鍋奉行に戻っていく。

ちきしょう、かっこいい。

だけど。


「神谷くんは朝海ちゃんの彼氏?」


ゆきみさんの言葉にぶんぶん首を横に振る。でも隣の健太はヘラって笑って「候補っす!」挨拶みたいにそう言うなんて。

超見てる、ゆきみさんもマイコさんも。

あたしの気持ちを確認したいのかめっちゃ見てる。


「認めてないっす。」


だからそう返すと、二人ともちょっとだけ笑ったんだ。

それからなんだか温かいものを見るような目であたしと健太を見る二人がなんだか大人に見えてやっぱり寂しい。


「そんなことよりゆきみさん、いっちゃんと何があったんですか?今日こそ白状して貰いますよ!」


サイドメニューのポテトにケチャップをたんとつけて口に含むと思わず頬が緩んだ。

だけど当のゆきみさんはというと、「え、いっちゃん?」なんてキョトンとしていて。


「そうですよ、藤原樹とキス、したんですよね?」

「あーうん。」


いとも簡単にあっさりとその口を割ったんだ。

むしろこっちが拍子抜けしちゃって。でもマイコさんも同じような顔でゆきみさんを見ているからあたしは間違ってないよね?


「え、ゆきみさん?キスしたんですよね?」

「いっちゃんと、だよね?」

「…他に誰かいるんですか?」


不意に返した言葉に思いっきり頬を真っ赤に染めたんだ。

は、誰よ!?まさかとは思うけど…――――「直人さんとなんかありました、ゆきみさんっ!」ちょっと怒り気味に聞くと泣きそうな顔で視線を逸らされた。


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