酸欠寸前の大人キス
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「それでね、マイコってば第一印象からまこっちゃんがタイプだったんですって!もうこれ決まりじゃないですか?、」
「ゆきみ。」
「はい。」
…直人さんに手を握られて俯く。だってそんな真剣な顔。直人さんのそんな顔、ドキドキする。
会話が途切れたらわたし、どうなっちゃうのか不安で、今自分の抱えている話題全てを直人さんに話してやろうって思っていたなんて。
「別に無理やり押し倒そうなんて思ってないからそんなに警戒すんなよ。出よ、ちょっと外歩こうぜ。」
スマートにわたしの手を取る直人さん。
迷うことなく手を握る直人さんに、握り返すことができないわたしに、気づいてるよねきっと。
直人さんと一緒にいるけど、さっきからずっと樹のことが頭の片隅にある。
ここに来たことを後悔しそうな自分がすごく嫌で。
樹と付き合っていない現実が今更ながら響いているんじゃないかって。
「直人さん。キスしたい?わたしと…。」
「…はい?」
「対等になりますか?」
「煽ってんじゃねぇよ、バカヤロ。」
グイッと直人さんの腕が後頭部を固定する。息をつく暇も与えられない酸欠寸前のキス。
「ンッ、くるしっ」
身体にぐるぐる巻き付く直人さんの腕よりも、絡まり合う舌が熱い。右足浮いてるとか、髪の毛くしゃくしゃとかどうでもよくって。
頬をやんわり甘噛みしてわたしを抱きしめた直人さんに思いっきりギュッと抱きつく。
やばい、大人の男のキスは身体が痺れる。
コテっと直人さんの肩に頭をもたげると、クスって笑い声が聞こえた。
「息上がってんぞ、ゆきみ。そんなによかった?俺のキス。ちょっと本気出しちゃったじゃん!」
ポンポンって頭を撫でる直人さんの首筋に顔を埋めてそこにちゅって、唇をつけた。
「あふっ、お前、続きはここじゃダメ。ちゃんと抱かせろよ。」
こんな台詞直人さんの口から出るなんて。
もうなんか、さっきのキスで樹が頭の片隅から消えそうで。
単純に、直人さんから離れたくないなんて思っていたなんて。
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