第一印象
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【said ゆきみ】
目の前でゴクっと音を立ててマイコが生唾を飲み込んだのが分かった。
「マイコだってそんな顔、久々だよ。」
わたしの言葉にマイコが涙目になる。
恋愛ご無沙汰のわたし達は中学生並みの初心者マークをつけているのかもしれない。
セクションが違うからまこっちゃんがどんな人なのか今だ全く分かっていないけど、目の前のマイコを女にしてくれるのはきっと、まこっちゃんなんだと思う。
「ゆきみさん、ずるーい。優しく聞くなんて。答えなきゃだめじゃないですかぁ!」
「強制強制、ほらまこっちゃんとなんでキスしたか吐け!」
ケラケラって笑うとムッとした顔で「さっきまでのしおらしいゆきみさんどこいったのー?」なんて眉毛を下げた。
メニューをとって「ぜんざい食べる?奢ってあげるよ!」「え、ほんとに?」ニッコリ微笑んで店員さんにぜんざい二つ頼んでからもう1度おもむろにマイコを見た。
「よし、食うからには話してもらうよ!」
「だ、騙された!」
真っ赤になるマイコがようやく口を割る。
「花束!って、まこっちゃんやるなぁ!しかも、律義に御礼しようとするマイコにつけ込んでる!」
「つけ込んでないですよぉ。」
「いいなぁー花束!わたしも欲しい!」
頬杖をついてボソッと言うと、途端に今度はマイコがニヤリとした。
ちょっとだけ身を乗り出して顔を寄せる。
「どっちに貰いたいの?ゆきみさん。直人さん?それとも、藤原くん?」
…まぁ、そうくるよね。
脳内にパッと浮かんだのは樹で。
「直人さんに花束貰うところは、さすがに想像できなくない?」
「確かに!花束といえば、隆二くん辺りが似合うなぁ!」
「あー絶対隆二だ!似合うー。サングラスと赤い薔薇!」
二人で想像してブッて笑う。
「それにしても、そのビルとか写真とかマイコのそーいうとこ、分かってくれる人がいてよかったねぇ。結構な奇跡、じゃない?」
「今まで出会ったことないですもん。でもね、ゆきみさん。実を言うと私、あの新人くん達の中で、パッと見の第一印象から長谷川くんがいいなって密かに思ってたの。なんていうか、あの穏やかな感じとか。あーいう人いいなぁって。」
「理想のタイプ?的な?」
「あ、そうかも!長谷川くんみたいな人が、そうなのかも。」
自分でいいながら照れるマイコにわたしまで嬉しくなった。
自分はどうなんだろ?って思った瞬間、テーブルに置いてあったLINEに直人さんからのメッセージが届く。
【今あがった。会える?】
ドキッと胸が高鳴ったんだ。
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