愛は輝きの象徴
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「ゆきみさん、あがる?」
「うん。マイコも?」
「うん。お茶、どうかなー?って。」
「うん。行く!」
新人くん達が入ってきてから私達の身辺もざわついていたから、こうして二人で話すのはちょっとだけ久しぶりだった。
なるべく人に会いたくない!ってゆきみさんが言うから駅の反対側にある商店街を抜けた所にあるカフェで向かい合う。
「な、直人さんに!?」
「…うん。なんか頭ん中混乱してて。」
「そうですよね、そりゃ私でも混乱だよ!」
聞くと、直人さんに今夜誘われていて。藤原くんを意識してはいるものの、付き合っているわけではなくて、でもキスは毎日する約束で。
「でも本当に付き合ってないんですか?藤原くんと。」
「…正直分かんない。ヤバいよねわたし。いっちゃんムカつくの。そーいう雰囲気作り出すのがうまいというか、自然というか。…流されちゃってるんだよねわたし。」
「うん。ゆきみさん、押しに弱いしね。さっ、…、」
「え?」
カフェラテをゴクッと飲むと目が合った。
やば、さっきも押されてキスしてた!なんて危うく口を割りそうになって苦笑い。
「な、なんでもない。それより!直人さんどーするんですか?さすがに冗談じゃ済まされないですし、直人さんのゆきみさんに対する愛情は私、ホンモノだって思います。…決めるのはゆきみさんだよ。でも直人さんを選ぶのは大人の選択肢ですよね、きっと。」
やっぱりゆきみさんには幸せになって欲しい。そして直人さんならその幸せは約束できるんじゃないかって思える。
「でも、藤原くんを好きな気持ちも大事にして欲しいです。ゆきみさんのそんな顔、久々に見ました私。あ、直人さんなのかも?だけど、その顔させてるの。」
やっぱりいくつになっても人を愛する気持ちは素敵で、その人を輝かせるものなんじゃないかって思う。
膜の張ったカフェラテをスプーンでかき混ぜると私はそれをゴクリとひと口飲んだ。
「…ありがと、マイコ。じゃあ聞いてもいいかな?」
「え?」
目の前でゆきみさんの口角がニヤリとあがる。
一瞬で嫌な空気に変わった気がしてドキリと胸を鳴らした。
「まこっちゃんと、どーなってんの?」
やっぱりな質問が私に届いた。
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