夜試写案内
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【said マイコ】
「隆二くんこれ夜試写できそうかな?」
新作のフィルムを編集していた隆二くんは、手を止めて私に身体ごと向けた。
「マイコ見たい?」
「うん、ちょっと見たいかも。」
「じゃあマイコの為に頑張っちゃう!試写の案内出しといて。」
ニッコリ微笑む健ちゃんとはまた別な癒し系。
「自分も見たいです。」
言ったのは山本くんで。ほとんどが隆二くんについてるせいか、ちゃんと話すのは初めてかも。
「案内の出し方教えてあげる。ここ座って。」
「あ、はい。失礼します。」
丁寧に頭を下げて座る山本くん。横に立ってパソコンを動かす。
「このファイルの中に元のデータが入ってるからそこ開いてみて。」
カチっとマウスを動かしてそのファイルを開く。
「そうそれ。そこに今日の日付とだいたいの時間とスクリーン、作品名を打ち込むだけなんだけどね。」
「時間は何時ごろ、ですか?」
「25時って書いといて。スクリーンは何番にするかな…。」
隆二くんが私を見る。
「ん〜9番辺りが無難?」
「だな。俺もそう思ってた。んじゃ9番で。後、こいつら見たいって希望だしてる奴に連絡もしてやって?」
デスクの壁に貼り付けてあるのはプロジェクションスタッフのハンコで。試写する時は声かけてください!って時の為に作品名の下に自分のハンコを押すのがルールだった。
「分かりました。」
「よし、印刷したら一緒に貼りに行こうか、私もタイムカード切りたいから。」
「はい!」
元気よく立ち上がった山本くんと一緒にオフィスに入る。
ちょうどコンセのレジ上げをしていたバイトくんが何人かいて。
「今日これ夜試写やるけど、見たい人いる〜?」
声をかけると、青山くんが「あ、僕見たいです!」大きく手を振る。
スタスタ歩いてきて私の横にたつ青山くんはガタイがいいせいか圧迫感があって思わずヨロっとしてしまう。
「あ、大丈夫ですか?」
だけどそんな私を片手で引き寄せた山本くんは小柄だけど言うなればソフトマッチョな感じで、ほんの一瞬ドキッとしたなんて。
「ごめんね、ありがとう。入口に貼っておくのでマネージャーに伝えてからハンコ推しておいてね。」
「はいっ!陣くんも一緒に見ない?」
奥でお金の計算が合わないのか、あたふたしている同じくコンセの陣くんに声をかけた青山くん。
「あー今それどころちゃうねん!後で、後で。あれ、どこが間違ってんのやろ、ちょー手伝ってや陸!」
「分かったよー!じゃあ中沢さんまた後で。」
まるで約束しているかのような青山くんにちょっとだけ笑った。
だけどその反対側、私と目が合ったゆきみさんにハッと藤原くんとのことを思い出して思いっきり赤面してしまうんだ。
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